「完璧の傍らと仰るのなら、その完璧とは一体何を指すんです？」

首を傾げる彼女。その目に灯る青い焔は、いつか昔を思い出させた。

「お前は、何だと思う」
「私はそもそも、立会人ではありません。だから聞いているんです」
「ならば、この問答自体が不要」

すっと目を細められる。見透かされている。

「わかってるくせに。ずるい人です」
「さて、何をだろうか」
「あの人の事ですよ。全ての中心にいることを余儀なくされた、あの人の事を」

何で誰もあの人の事を心配しないのか、不思議でならない。彼女は吐き捨てるように言った。全く、良くも悪くも素直な女だ。そう思えばそれを敏感に察し、私の話はしてません、と睨んでくる。いやはや、本当に全く。

「お前ごときに心配される必要はないだろう」
「残念ながら、私は私のしたいようにしかしません。そこに誰の思惑も介入しない」
「お前の？」
「私が心配したい人を心配して、愛したい人を愛して、守りたい人を守る。必要あるとかないとか関係ないです。その方針で前職も今も成果を上げてきたんだから、いいでしょう？」

まあいいや。彼女は啖呵を切るだけ切って、勝手に切り上げた。

「これで完璧ってなんなのか誰もよくわかってないってわかりました。後は勝手にやります」

失礼しました。彼女はするりと部屋を出て行く。それを見送り、椅子に深く掛け直す。短いやり取りだが、随分と気疲れした。普段その鱗片を見せない彼女もまた賭郎の一人。等しく厄介だ。

勝手にやるそうだが、彼女は次は誰の元へ向かうのだろうか？

しかし、栄羽よ。面白いことになってきたぞ。ぜひ見せてやりたいが、お前がここにいないのが残念でならない。