「何処まで予測しておられたのですか？」
「ぐはぁ！私を何だと思っている。預言者じゃないんだぞ」
「いえ…」

数奇な運命だと思った。今回の騒動を知り、彼女は元々賭郎に入る運命だったのだと思ってしまった。そうでなければ。これが神の悪戯ではないというのなら、この方こそがそのレールを敷いたのでは。そう思っての問い掛けは、一笑に付される。

「でなければ、何故彼女はここに」
「分からん。私も不思議に思うよ」

ただ…と、切間立会人は窓の外を眺める。儂は珍しく言葉を濁す切間立会人が、続きを切り出すのを待つ。

「弥鱈が初めて出会った時の不気味さを取り戻した」

お前は今の弥鱈をどう見る。目蒲は、泉江は。彼が出した３つの名前をゆっくりと咀嚼する。

「印象が、変わりましたな」

彼はこちらを振り返り、頷く。爛々と輝く目に当てられた。

「そうだろう。あの女だ。あの女は、人を変える。それが賭郎にとってどのような意味をもつかは分からんが、あの女は変化をもたらすぞ、能輪。初めて会った時はまだ開花していなかったんだ。ただの読心女子だ。それが、今や立会人をも狂わす毒花だ」

世の中っていうのは人を退屈させないな、能輪。お前はあの女をどう見る。見つめる眼を、じっと見返す。

「未だ、値がつきません」
「そうか。そうか」

切間立会人は楽しそうに頷いた。儂もまた、想いを馳せる。若手たちのげらげら笑う姿に。そして、立会に出た時のあの迷いのなさに。

人は変わる。変わっていく。ならば、あの小娘はどうなっていくというのだろうか。

→ディレクターズカット:優しくしてくれる人