過ぎ去るはエーデルワイス
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「ぐはぁ!」
全ての準備をやり終えた安堵から、つい笑いが漏れてしまった。やはりこの瞬間はいい。対戦者たちの覚悟が、緊張が、そして隠しきれぬ恐怖がピークを迎えるこの瞬間は。
「さて、御嬢さん方、カードを一枚引いて頂こうか」
私が彼女らにそう声をかければ、黒服が並んでガレットに繋がれた二人に近寄っていき、カードを選ばせる。恐怖で真っ青な昌美嬢が迷うのに対し、同じく真っ青な晴乃嬢は気丈に笑い、さっと右から二番目のカードを引いた。結果、前者は下女を、後者は哲学者を手にする。しかし、それで勝負は決まらない。悪くないじゃないか。ぐはぁ、と、また笑いが漏れてしまう。
「これで全ての役者は舞台に上がった。さあ、粛々と勝負を始めようじゃあないか」
私はそう言って、ぐるりと部屋を見回す。テーブルを挟み向かい合う弥鱈悠助と猫登。そのテーブルを横から眺める形でガレットに繋がれた伏龍晴乃と近藤昌美。弥鱈様側の壁にもたれ、悠々とキセルに火をつける鞍馬蘭子。そして、繋がれた少女たちとテーブルを挟んで正対する位置に立った私。実にいい。今日は鞍馬蘭子が高校生を蹂躙するだけのつまらない勝負だと思っていたが、儲けもの。見せてもらおう、勝つのは荒削りな才能か、老練さか。
「ルールの説明をさせて頂こう。プレイヤーである弥鱈様と猫様にはこれより王への請願者となり、王を説得して頂く。但し、7つのダイスの目を揃える事が出来る程の説得力が無ければ、王への謁見さえ叶わない。今の貴公らの説得力はダイス3つ分。謁見を可能たらしめるのは机上に並んだ19枚のカードたち。ここに描かれた様々な能力をもつ19種の家臣たちをダイスの目を揃えることで説得し、王への謁見、そして請願を果たして欲しい」
弥鱈様と猫様はじっくりとカードに書かれた説明を読む。「これ、被ったら全部貰えるんですか?」と、弥鱈様。いい質問だ、と私は笑う。
「例えば3のゾロ目を3つ出した場合、出目の合計が1以上で手に入る道化師、ゾロ目2つで手に入る農夫、ゾロ目3つで手に入る衛兵、全ての出目が奇数で手に入る下女の4つの選択肢が与えられる。しかし、その中で選ぶことが出来るのは一枚だけだ。また、同じ種類のカードは二枚以上持てない。同じ人材は二人といないからな。但し例外はこの道化師とペテン師だ。リバーシブルになっている。道化師は出目の合計がゼロ以上の時に、ペテン師は出目の合計がゼロ以上かつ道化師が既に手札にある時に獲得できるキャラクターだ。実質同じカードが二枚になるが、道化師がペテン師になっている状態でならまた道化師を迎え入れる事が可能だ。カードは何度でも使えるが、効果は1ターンにつき一度だけだ」
「それでも7つの目を揃えるというのなら、運任せになってしまいそうだがね」
「そう言うだろうと思ったよ。ダイスは振り直しが可能だ。しかし、一回につき最低1つはダイスの目を確定して頂く。つまり、ダイス3つの時点では一個ずつ確定していけば最大三回振り直せる事になるな」
「ふぅん。で、伏龍はなんで繋がれてるんですか~?」
「ああ、長考しようと思えばいつまでも長考できるゲームだからな。制限時間を設けさせて頂いた。貴公らの持ち時間はトータルでおよそ20分。時間経過につれ段々と首輪がしまっていき、その時間を過ぎれば彼女らは呼吸困難で絶命するだろう。彼女が死ぬということは、掛けのテーブルに乗っていたものが消失するということ。問答無用で貴公の負けとなる」
「なるほど」
「ちょっと、そこは抗議してよ」
「アンタ死ななさそうだし」
「そんな。死ぬ時は死ぬよ」
「まじか」
「まじだ」
「半死半生位が静かでいい」
「ひどい」
「そーでもない」
「アンタら…なんでそう緊張感がないんだい…」
呆れた様に鞍馬様が会話を遮り、二人は顔を見合わせる。全く、昌美嬢は今にも気絶しそうだというのに、とんだ高校生たちだ。
「勿論、二人の役割は時計だけではない。この二人もまたゲーム中は王の家臣となり、請願者を助けることとなる。しかし、どちらの請願者にどう手を出すかは完全に彼女らの自由。邪魔をするもよし、助けるもよし、だ。但し手出しは3回まで、プレイヤーとの会話は無しとする。私にサインを送る事により任意のダイスを操作し秘密裏に立ち回る」
「実質お邪魔虫だな」
「喧嘩なら買うよ、弥鱈君」
「百万で売ろう」
「出世払いで」
「アンタらは隙あらば…」
「ま…まあ、カードや御嬢さん方の助けを借りつつ7つのダイスを揃えたら、いよいよ謁見が叶い、王と王妃のカードを手にする事が出来る。そこからが最後の勝負。全員が王の説得の為ダイスを振り、出来るだけ多くの目を揃えることとなる。そこでの勝利者が王への請願を果たした者として、ゲームの勝者となる。ご理解頂けただろうか」
「問題ありません」
「ああ」
「大丈夫ですよう」
「…はい」
四人の返事が揃ったところで、私は大きく頷いた。さて、勝利の女神はどちらに微笑むのだろうか。
全ての準備をやり終えた安堵から、つい笑いが漏れてしまった。やはりこの瞬間はいい。対戦者たちの覚悟が、緊張が、そして隠しきれぬ恐怖がピークを迎えるこの瞬間は。
「さて、御嬢さん方、カードを一枚引いて頂こうか」
私が彼女らにそう声をかければ、黒服が並んでガレットに繋がれた二人に近寄っていき、カードを選ばせる。恐怖で真っ青な昌美嬢が迷うのに対し、同じく真っ青な晴乃嬢は気丈に笑い、さっと右から二番目のカードを引いた。結果、前者は下女を、後者は哲学者を手にする。しかし、それで勝負は決まらない。悪くないじゃないか。ぐはぁ、と、また笑いが漏れてしまう。
「これで全ての役者は舞台に上がった。さあ、粛々と勝負を始めようじゃあないか」
私はそう言って、ぐるりと部屋を見回す。テーブルを挟み向かい合う弥鱈悠助と猫登。そのテーブルを横から眺める形でガレットに繋がれた伏龍晴乃と近藤昌美。弥鱈様側の壁にもたれ、悠々とキセルに火をつける鞍馬蘭子。そして、繋がれた少女たちとテーブルを挟んで正対する位置に立った私。実にいい。今日は鞍馬蘭子が高校生を蹂躙するだけのつまらない勝負だと思っていたが、儲けもの。見せてもらおう、勝つのは荒削りな才能か、老練さか。
「ルールの説明をさせて頂こう。プレイヤーである弥鱈様と猫様にはこれより王への請願者となり、王を説得して頂く。但し、7つのダイスの目を揃える事が出来る程の説得力が無ければ、王への謁見さえ叶わない。今の貴公らの説得力はダイス3つ分。謁見を可能たらしめるのは机上に並んだ19枚のカードたち。ここに描かれた様々な能力をもつ19種の家臣たちをダイスの目を揃えることで説得し、王への謁見、そして請願を果たして欲しい」
弥鱈様と猫様はじっくりとカードに書かれた説明を読む。「これ、被ったら全部貰えるんですか?」と、弥鱈様。いい質問だ、と私は笑う。
「例えば3のゾロ目を3つ出した場合、出目の合計が1以上で手に入る道化師、ゾロ目2つで手に入る農夫、ゾロ目3つで手に入る衛兵、全ての出目が奇数で手に入る下女の4つの選択肢が与えられる。しかし、その中で選ぶことが出来るのは一枚だけだ。また、同じ種類のカードは二枚以上持てない。同じ人材は二人といないからな。但し例外はこの道化師とペテン師だ。リバーシブルになっている。道化師は出目の合計がゼロ以上の時に、ペテン師は出目の合計がゼロ以上かつ道化師が既に手札にある時に獲得できるキャラクターだ。実質同じカードが二枚になるが、道化師がペテン師になっている状態でならまた道化師を迎え入れる事が可能だ。カードは何度でも使えるが、効果は1ターンにつき一度だけだ」
「それでも7つの目を揃えるというのなら、運任せになってしまいそうだがね」
「そう言うだろうと思ったよ。ダイスは振り直しが可能だ。しかし、一回につき最低1つはダイスの目を確定して頂く。つまり、ダイス3つの時点では一個ずつ確定していけば最大三回振り直せる事になるな」
「ふぅん。で、伏龍はなんで繋がれてるんですか~?」
「ああ、長考しようと思えばいつまでも長考できるゲームだからな。制限時間を設けさせて頂いた。貴公らの持ち時間はトータルでおよそ20分。時間経過につれ段々と首輪がしまっていき、その時間を過ぎれば彼女らは呼吸困難で絶命するだろう。彼女が死ぬということは、掛けのテーブルに乗っていたものが消失するということ。問答無用で貴公の負けとなる」
「なるほど」
「ちょっと、そこは抗議してよ」
「アンタ死ななさそうだし」
「そんな。死ぬ時は死ぬよ」
「まじか」
「まじだ」
「半死半生位が静かでいい」
「ひどい」
「そーでもない」
「アンタら…なんでそう緊張感がないんだい…」
呆れた様に鞍馬様が会話を遮り、二人は顔を見合わせる。全く、昌美嬢は今にも気絶しそうだというのに、とんだ高校生たちだ。
「勿論、二人の役割は時計だけではない。この二人もまたゲーム中は王の家臣となり、請願者を助けることとなる。しかし、どちらの請願者にどう手を出すかは完全に彼女らの自由。邪魔をするもよし、助けるもよし、だ。但し手出しは3回まで、プレイヤーとの会話は無しとする。私にサインを送る事により任意のダイスを操作し秘密裏に立ち回る」
「実質お邪魔虫だな」
「喧嘩なら買うよ、弥鱈君」
「百万で売ろう」
「出世払いで」
「アンタらは隙あらば…」
「ま…まあ、カードや御嬢さん方の助けを借りつつ7つのダイスを揃えたら、いよいよ謁見が叶い、王と王妃のカードを手にする事が出来る。そこからが最後の勝負。全員が王の説得の為ダイスを振り、出来るだけ多くの目を揃えることとなる。そこでの勝利者が王への請願を果たした者として、ゲームの勝者となる。ご理解頂けただろうか」
「問題ありません」
「ああ」
「大丈夫ですよう」
「…はい」
四人の返事が揃ったところで、私は大きく頷いた。さて、勝利の女神はどちらに微笑むのだろうか。