過ぎ去るはエーデルワイス
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「この勝負、賭郎に委ねてはくれないだろうか?」と切間立会人が尋ねる。今までの軽薄なオーラをしまい込んだその男の姿を目の端に捉えつつ、俺は状況を整理する。
取り敢えず、時計の針を戻そう。伏龍が近藤さんを追って走って行った辺りまで。
「追わないんですかぁ~?」
俺は不満たらたら走って行く伏龍の後ろ姿を目で追いつつ、そう問いかけた。猫議員はオロオロと俺と切間立会人を交互に見つめる。こんな奴の為に俺たちの放課後は潰されてしまったと思うと情けなくて堪らない。蹴飛ばしてやりたいが、そうすると今までの時間がパァになってしまう。本当に権力とは厄介なものである。
「き、君は、何を考えているんだね。退学なんだぞ!もう何も残っていない、諦めるんだ!」
「まだ、決まったわけじゃない。必ずひっくり返す」
「無茶を言うんじゃない、君はこっ、高校生なんだぞ!大人に逆らうんじゃない!」
「ふぅ~ん…それで女子高生を連れていたんですかぁ~。俺が言えた立場じゃありませんが、随分と捻じ曲がってますねぇ~」
「なんだね、さっきから突っかかって。私と昌美君は付き合っている!昌美君はもう十八なんだ、なんら問題はないだろう!」
「なら、写真をばら撒かれても問題はありませんねぇ~」
「私にも肖像権があるんだ!控えたまえ!」
「国民には国会議員を監視する権利と責務があります。この場合肖像権は適用されません」
本来退学になるべきではない模範生ですので、勉強してますよ~。なんて嘯いてみる。真っ赤な嘘である。誰も突っ込んでくれる人がいないのが悔やまれる。
「珍しく怒っているんですよ、俺たちは。相手が議員でも、関係無いと思う程度には。アンタには一生分からないでしょうが」
「五月蝿い!こっちにだってな、立場があるんだ!」
「立場なら俺たちにもあります。それに纏わる居場所も、幸福も。それを理不尽に取り上げると仰るのなら、アンタは俺たちの敵だ」
俺は猫議員の鼻先まで歩み寄る。男は一歩後ずさった。
「肝に銘じろ。俺は、お前を、一生許さない」
男がまた一歩後ずさった。切間立会人が突然笑い出す。
「ぐはぁ!若さってのはいい。無謀で、真っ直ぐだ。どうだろう、この勝負、賭郎に委ねてはくれないだろうか?」
笑いをしまい込んだ彼は、さっきまでと別人の様な紳士的な笑顔を浮かべ、そう言った。あれ、既に委ねてなかったっけか。俺は首をかしげるが、直後の猫議員の「か、賭郎の立会人かアンタ!」という反応にいよいよ首をかしげる。
「そうとも。私たちこそ勝負を司る者。そして、私はこの勝負こそ賭郎が司るにふさわしいものだと思うのだが、どうだろう。弱き者が知暴を尽くしここまでたどり着いた。ここからの真剣勝負を、是非賭郎は見届けたい」
「俺はどちらでも構いません~。どちらにせよ、俺たちは目的を遂げますので~」
「いいや、私は反対だ!第一、賭郎ともあろうものが個人的な興味でどちらかにつくというのはどうかと思うがね!」
「どちらかについている訳ではないさ。我々は公平を司る。興味深い人間に惹かれている訳ではない。興味深い勝負に惹かれているだけさ」
「な、なんなんだねそれは、しかも、何を賭けるというんだ。その写真と一千万?!釣り合わないにも程がある!」
「ほう、でしたら何万なのですか、この写真は?」
「一銭の価値も無い!そうだろう、ただの交際中の男女の写真だ!」
「なら、ばら撒いても」
「それとこれとは話が違う!」
俺はできる限り冷めた目で猫議員を見つめる。果たしてこの男に無茶を言っている自覚はあるのだろうか。無いだろうなぁ。
「なら、何と釣り合う」
俺は尋ねる。猫議員は息を呑み、暫くの後にまりと笑い「あの女もつけてみたらどうだね」と言った。
「こっちだってこの事が知れればもう昌美君とは付き合えないんだ。私は昌美君と一千万を賭ける。君はあの女と写真を賭ける。これでどうだね」
「物好きですねぇ~。あ、今のは伏龍には言わないで下さい~。怒ると手がつけられないんで~」
激昂すると思っていたのだろう。猫議員は意外そうに目を見開いた。
「良いでしょう。俺に勝ったら持って行けばいい。良い女です。保証しますよ」
視界の端で切間立会人が目を丸くしたが、まあ放っておこう。後は勝つだけなのだから。
取り敢えず、時計の針を戻そう。伏龍が近藤さんを追って走って行った辺りまで。
「追わないんですかぁ~?」
俺は不満たらたら走って行く伏龍の後ろ姿を目で追いつつ、そう問いかけた。猫議員はオロオロと俺と切間立会人を交互に見つめる。こんな奴の為に俺たちの放課後は潰されてしまったと思うと情けなくて堪らない。蹴飛ばしてやりたいが、そうすると今までの時間がパァになってしまう。本当に権力とは厄介なものである。
「き、君は、何を考えているんだね。退学なんだぞ!もう何も残っていない、諦めるんだ!」
「まだ、決まったわけじゃない。必ずひっくり返す」
「無茶を言うんじゃない、君はこっ、高校生なんだぞ!大人に逆らうんじゃない!」
「ふぅ~ん…それで女子高生を連れていたんですかぁ~。俺が言えた立場じゃありませんが、随分と捻じ曲がってますねぇ~」
「なんだね、さっきから突っかかって。私と昌美君は付き合っている!昌美君はもう十八なんだ、なんら問題はないだろう!」
「なら、写真をばら撒かれても問題はありませんねぇ~」
「私にも肖像権があるんだ!控えたまえ!」
「国民には国会議員を監視する権利と責務があります。この場合肖像権は適用されません」
本来退学になるべきではない模範生ですので、勉強してますよ~。なんて嘯いてみる。真っ赤な嘘である。誰も突っ込んでくれる人がいないのが悔やまれる。
「珍しく怒っているんですよ、俺たちは。相手が議員でも、関係無いと思う程度には。アンタには一生分からないでしょうが」
「五月蝿い!こっちにだってな、立場があるんだ!」
「立場なら俺たちにもあります。それに纏わる居場所も、幸福も。それを理不尽に取り上げると仰るのなら、アンタは俺たちの敵だ」
俺は猫議員の鼻先まで歩み寄る。男は一歩後ずさった。
「肝に銘じろ。俺は、お前を、一生許さない」
男がまた一歩後ずさった。切間立会人が突然笑い出す。
「ぐはぁ!若さってのはいい。無謀で、真っ直ぐだ。どうだろう、この勝負、賭郎に委ねてはくれないだろうか?」
笑いをしまい込んだ彼は、さっきまでと別人の様な紳士的な笑顔を浮かべ、そう言った。あれ、既に委ねてなかったっけか。俺は首をかしげるが、直後の猫議員の「か、賭郎の立会人かアンタ!」という反応にいよいよ首をかしげる。
「そうとも。私たちこそ勝負を司る者。そして、私はこの勝負こそ賭郎が司るにふさわしいものだと思うのだが、どうだろう。弱き者が知暴を尽くしここまでたどり着いた。ここからの真剣勝負を、是非賭郎は見届けたい」
「俺はどちらでも構いません~。どちらにせよ、俺たちは目的を遂げますので~」
「いいや、私は反対だ!第一、賭郎ともあろうものが個人的な興味でどちらかにつくというのはどうかと思うがね!」
「どちらかについている訳ではないさ。我々は公平を司る。興味深い人間に惹かれている訳ではない。興味深い勝負に惹かれているだけさ」
「な、なんなんだねそれは、しかも、何を賭けるというんだ。その写真と一千万?!釣り合わないにも程がある!」
「ほう、でしたら何万なのですか、この写真は?」
「一銭の価値も無い!そうだろう、ただの交際中の男女の写真だ!」
「なら、ばら撒いても」
「それとこれとは話が違う!」
俺はできる限り冷めた目で猫議員を見つめる。果たしてこの男に無茶を言っている自覚はあるのだろうか。無いだろうなぁ。
「なら、何と釣り合う」
俺は尋ねる。猫議員は息を呑み、暫くの後にまりと笑い「あの女もつけてみたらどうだね」と言った。
「こっちだってこの事が知れればもう昌美君とは付き合えないんだ。私は昌美君と一千万を賭ける。君はあの女と写真を賭ける。これでどうだね」
「物好きですねぇ~。あ、今のは伏龍には言わないで下さい~。怒ると手がつけられないんで~」
激昂すると思っていたのだろう。猫議員は意外そうに目を見開いた。
「良いでしょう。俺に勝ったら持って行けばいい。良い女です。保証しますよ」
視界の端で切間立会人が目を丸くしたが、まあ放っておこう。後は勝つだけなのだから。