沈丁花の約束
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
時は20日前、目蒲の最後の立会いの夜まで遡る。立会いとして明らかな規則違反の、とんでもない立会い報告書が提出されたのだ。目蒲からのものだった。
「棟耶、これを見てくれんか」
儂は直ぐに棟耶を呼び、書類を見せた。棟耶でさえ、読み進めるにつれて目を見開き、驚愕を露わにする。
「これは…正気か」
「じゃろう。この手の事をやる者は過去にもいたが、それを馬鹿正直に報告するとは…」
「しかし、目蒲がこんな事をするだろうか」
「儂も同じ事を考えておった」
何か裏がある。そう踏んだ儂らはまず資料室に向かい、目蒲の過去の立会い報告書に当たった。
「何という…」
「これは…」
儂らは更に驚愕する。佐田国の立会いは全て同じ場所同じ方法で行われており、そして、その全てに監視カメラを使ったトリックが使われたことが堂々と書いてあった。しかし、驚くべきはそこではない。その報告書には事務の、儂の、棟耶の、そしてお屋形様の判が押してあった。
「この方法を、儂らが認めたことになっておるではないか…!」
儂らはしかとこの目で読んでおったはずじゃ!取り乱す儂とは対照的に、棟耶は熟考し、考えを述べる。
「能輪、直ぐにお屋形様のご意見を伺おう」
「ああ……そうじゃな。厄介なことになった」
儂らは次はお屋形様の元に向かい、件の、そして過去の立会い報告書をお見せした。
「へえ。見事にしてやられたね」
お屋形様はいつもの飄々とした様子を崩さず、そう仰る。
「お屋形様、どう致しましょうか」
「話を聞くしかないよ。こっちを書いた人物にね」
お屋形様は過去の立会い報告書のみを儂にお返しになった。
「こちら、ですか」
「ああ。別にこっちを書いた方でも事情は分かるだろうけど、全てを話せるのはそっちだろうね」
お屋形様は件の、最新の報告書をひらひらやりながらそう仰った。しかし、いまいち事情を飲み込み切らない儂らの顔を見て、態とらしく溜息をついた。
「もー、二人共、頭が固すぎるのは考えものだよ。書き手が代わったんだよ。今までの、僕らの意識をすり抜けさせる文を書けた書き手が何らかの理由で交代したんだ」
降りたのか、降ろされたのかは分からないけどね。でもそれは調べればすぐにわかるよ。とにかく、幸運に思うしかないよね。目蒲がこの書き手と組んだままだったら一生発覚しなかっただろうから。
「はあ……」
「能輪、この書き手を必ず突き止めてよ。そうしたら後は僕がやる。君達の能力を疑う訳じゃないけど、少し持て余すかもしれない」
口の端に笑みを湛え、お屋形様は仰った。
「この僕を出し抜いた人物だからね」
「棟耶、これを見てくれんか」
儂は直ぐに棟耶を呼び、書類を見せた。棟耶でさえ、読み進めるにつれて目を見開き、驚愕を露わにする。
「これは…正気か」
「じゃろう。この手の事をやる者は過去にもいたが、それを馬鹿正直に報告するとは…」
「しかし、目蒲がこんな事をするだろうか」
「儂も同じ事を考えておった」
何か裏がある。そう踏んだ儂らはまず資料室に向かい、目蒲の過去の立会い報告書に当たった。
「何という…」
「これは…」
儂らは更に驚愕する。佐田国の立会いは全て同じ場所同じ方法で行われており、そして、その全てに監視カメラを使ったトリックが使われたことが堂々と書いてあった。しかし、驚くべきはそこではない。その報告書には事務の、儂の、棟耶の、そしてお屋形様の判が押してあった。
「この方法を、儂らが認めたことになっておるではないか…!」
儂らはしかとこの目で読んでおったはずじゃ!取り乱す儂とは対照的に、棟耶は熟考し、考えを述べる。
「能輪、直ぐにお屋形様のご意見を伺おう」
「ああ……そうじゃな。厄介なことになった」
儂らは次はお屋形様の元に向かい、件の、そして過去の立会い報告書をお見せした。
「へえ。見事にしてやられたね」
お屋形様はいつもの飄々とした様子を崩さず、そう仰る。
「お屋形様、どう致しましょうか」
「話を聞くしかないよ。こっちを書いた人物にね」
お屋形様は過去の立会い報告書のみを儂にお返しになった。
「こちら、ですか」
「ああ。別にこっちを書いた方でも事情は分かるだろうけど、全てを話せるのはそっちだろうね」
お屋形様は件の、最新の報告書をひらひらやりながらそう仰った。しかし、いまいち事情を飲み込み切らない儂らの顔を見て、態とらしく溜息をついた。
「もー、二人共、頭が固すぎるのは考えものだよ。書き手が代わったんだよ。今までの、僕らの意識をすり抜けさせる文を書けた書き手が何らかの理由で交代したんだ」
降りたのか、降ろされたのかは分からないけどね。でもそれは調べればすぐにわかるよ。とにかく、幸運に思うしかないよね。目蒲がこの書き手と組んだままだったら一生発覚しなかっただろうから。
「はあ……」
「能輪、この書き手を必ず突き止めてよ。そうしたら後は僕がやる。君達の能力を疑う訳じゃないけど、少し持て余すかもしれない」
口の端に笑みを湛え、お屋形様は仰った。
「この僕を出し抜いた人物だからね」