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小さい頃、私はとても身体が弱かった。
同年代の子達のように外を走り回る事なんて出来ない。一日中ベッドの上。
外から聞こえてくる子供達の楽しそうな声を耳にする度、羨ましい、私も外へ出て、思い切り身体を動かして遊びたい。そう思っていた。
窓の外の景色は、いつもどこか遠い世界のように感じていた。
そんなある日、両親が私に一匹のポケモンをプレゼントしてくれた。
渡されたモンスターボールの中から出てきたのは水色の体をした小さなポケモン、メッソンだった。
メッソンはどこか不安そうに私を見上げてくる。私は、初めての自分のポケモンを前に戸惑っていた。
触ってもいいのかな…?でも嫌だったらどうしよう。
そんな不安に駆られて、触れようと伸ばしかけた手を下ろす。
すると少しして、手の甲に柔らかくて冷たい感触を感じた。
視線を落とすと、メッソンが私の手にその小さな手を乗せてこちらを見上げていた。
『大丈夫?』と言っているような目に、思わずふっと口元が緩み、私は「大丈夫だよ」と言ってその頭に手を伸ばす。
今度はちゃんと触れることが出来た。メッソンも嫌がる素振りは見せず、私の手に身を委ねていた。
これが、私とこの子の出会いだった。
それからはずっとメッソンと一緒だった。
ベッドの上で退屈な時は、メッソンがシャボン玉のように口から泡を出して私を楽しませてくれた。
咳が出て身体が辛い時は、ずっと傍に寄り添って私を励ましてくれた。
食事の時も眠る時も、なにをするにも一緒。
外に出られなくても、同年代の子達と遊べなくても、私はもう寂しくはなかった。
それから時が経ち、私は外に出られる程に体調が改善した。
ずっとベッドの上だったから流石に走れる程の体力はないけれど、外に出て風をこの肌で感じられた時、どれだけ嬉しかったか。
私はメッソンを連れ、憧れだった水遊びをして楽しんだ。長くは遊べなかったけれど、私にとって最高に素敵な時間を過ごした。
そして更に時が経ち、私は大人になり、メッソンはインテレオンにまで成長した。
今では両親の元を離れ、インテレオンと二人で暮らしている。
まだ薬は飲んでいるけれど、体調は良好。でもあまり走れないのは今でも変わらない。
無理をすると直ぐにインテレオンに止められる。あの子は少し心配性なんだと思う。
今だって、私の傍で危険がないか周りを注意しながら歩いている。
いつもの事なのでもう気にしないけど。
私は小さく苦笑いをして、優しい太陽の光に手を翳して目を細めた。
「今日はとってもいい天気だね。散歩に出て正解だったでしょ?インテレオン」
私がそう言うと、インテレオンは少し不満そうに一つ鳴いた。
私の身体を気遣ってくれているのは有難いけれど、昔とは違うのだからそんなに心配しなくてもいいのに。
そんな事を思っていると、色んなきのみを実らせている樹木が目に入った。
その木の元へ行き、きのみを採ろうと手を伸ばすが、届きそうで届かない。
んー!んー!と必死に手を伸ばしていると、後ろからインテレオンの手が伸びてきて、簡単にきのみを採ってみせた。
「うぉれおん」
『これでいいのか』と言うように鳴き、採ったきのみを私に差し出す。
「わ、ありがとう」
差し出されたきのみを笑顔で受け取ると、インテレオンもフッと笑みを浮かべた。
子供の頃もこうやって、手の届かないきのみをメッソンがみずでっぽうで採ってくれたっけ。こういう優しい所は今でも変わらないな。
二人できのみを食べながら少し休憩をしたあと、散歩を再開。
草むら、木の上、空。どこを見ても野生のポケモン達が目に入った。
あの頃、部屋の中だけじゃわからなかった光景の中を自分の足で歩き、感じている。
ただこうして今インテレオンと二人で歩いているだけで、私はとても嬉しいんだ。
「あ、ねえ。あっちの海岸の方まで行ってみようよ」
きっと潮風が気持ちいいよ。
私がそう言うと、インテレオンは顎に手をあてて少し思案した後にこくりと頷く。
「よかった!行こ」
私はインテレオンと共に海岸まで歩いて行った。
そんなに距離がなかったおかげで、海岸まではすぐだった。
波打つ青い海に、思わず気持ちが高揚する。靴を脱いで波打ち際に行くと、冷たい海の水が足首まで押し寄せてきた。
「わっ、冷たい!ふふ、とっても気持ちいいよ!インテレオンもおいで」
浜辺にいるインテレオンを手を振って呼ぶ。
すると後ろからザバザバッと音が聞こえ、振り返って見てみると何かが水しぶきを上げながら物凄いスピードでこちらに迫っていた。
なんだろう?と見ていると、突然身体を浮遊感が襲った。インテレオンが私を抱き上げたのだ。
インテレオンは瞬時に私を抱き抱えて海から離れると、水しぶきを上げながら近付いてくる物体を睨み付けた。
その正体を知るべく私も見ていると、水しぶきの中にヒレが見えた。
そしてそれが岸まで来ると、ようやくその正体がわかった。
「…サメハダー?」
シャアッとその鋭利な牙を剥き出しにしてこちらを威嚇しているのは、凶暴ポケモンのサメハダーだった。
どうやらこの海はサメハダーの生息域だったようだ。この辺りがテリトリーだったのかもしれない。悪い事をしてまった。
「ごめんね、サメハダー。勝手に縄張りに入っちゃって。驚かせちゃったよね」
そう言うとサメハダーは少しずつ警戒を解き、牙を見せていた大きな口を閉じてくれた。
しかし、インテレオンは未だ臨戦態勢だった。サメハダーを睨み付けるその目は敵意に満ちていて、今にも攻撃してしまいそうだ。
「インテレオン、落ち着いて。サメハダーはもう大丈夫だから」
それに元はと言えば、サメハダーの縄張りだと知らずに入ってしまった私が悪いのだ。サメハダーにはなんの非もない。
「インテレオン」
宥めるようにもう一度名前を呼ぶと、インテレオンはサメハダーから目を離さないまま、長い尻尾から出た鋭利なナイフの様な突起をゆっくりと納めた。
よかった。きっともう大丈夫。
私は安堵の息を吐き、サメハダーにもう一度謝罪してインテレオンと共に海岸を離れた。
結局、家に着くまでずっとインテレオンに抱き抱えられたままだった。
重いし、もう大丈夫だよと言っても、インテレオンは頑なに私を下ろそうとはしなかった。
そして家に着いた今でも離してくれる様子がない。
「どうしたの?インテレオン」
ベッドの上で私を抱えたまま動こうとしないインテレオンの顔に手を伸ばすと、何故かムッとした視線を向けられた。
「さっきの事、まだ気にしてるの?私なら怪我はなかったし、大丈夫だよ」
昔のように「大丈夫」と頭を撫でると、インテレオンは呆れたように一つ溜息を吐き、ぎゅっと私を抱き締めた。
そんなインテレオンの頭をよしよしと撫でる。
この時インテレオンが何を思っていたのかはわからなかったけれど、きっと私の事を心配してくれたのだろうと思う。
少し心配性だけど、とっても優しい私の大切なパートナー。
「インテレオン、これからもずっと一緒にいようね」
私の言葉にインテレオンは短く鳴いて応えた。
「ああ、もちろんだ」と言うように。
─ 私のパートナー ─
《結局その日は一日離してもらえなかった》
END
同年代の子達のように外を走り回る事なんて出来ない。一日中ベッドの上。
外から聞こえてくる子供達の楽しそうな声を耳にする度、羨ましい、私も外へ出て、思い切り身体を動かして遊びたい。そう思っていた。
窓の外の景色は、いつもどこか遠い世界のように感じていた。
そんなある日、両親が私に一匹のポケモンをプレゼントしてくれた。
渡されたモンスターボールの中から出てきたのは水色の体をした小さなポケモン、メッソンだった。
メッソンはどこか不安そうに私を見上げてくる。私は、初めての自分のポケモンを前に戸惑っていた。
触ってもいいのかな…?でも嫌だったらどうしよう。
そんな不安に駆られて、触れようと伸ばしかけた手を下ろす。
すると少しして、手の甲に柔らかくて冷たい感触を感じた。
視線を落とすと、メッソンが私の手にその小さな手を乗せてこちらを見上げていた。
『大丈夫?』と言っているような目に、思わずふっと口元が緩み、私は「大丈夫だよ」と言ってその頭に手を伸ばす。
今度はちゃんと触れることが出来た。メッソンも嫌がる素振りは見せず、私の手に身を委ねていた。
これが、私とこの子の出会いだった。
それからはずっとメッソンと一緒だった。
ベッドの上で退屈な時は、メッソンがシャボン玉のように口から泡を出して私を楽しませてくれた。
咳が出て身体が辛い時は、ずっと傍に寄り添って私を励ましてくれた。
食事の時も眠る時も、なにをするにも一緒。
外に出られなくても、同年代の子達と遊べなくても、私はもう寂しくはなかった。
それから時が経ち、私は外に出られる程に体調が改善した。
ずっとベッドの上だったから流石に走れる程の体力はないけれど、外に出て風をこの肌で感じられた時、どれだけ嬉しかったか。
私はメッソンを連れ、憧れだった水遊びをして楽しんだ。長くは遊べなかったけれど、私にとって最高に素敵な時間を過ごした。
そして更に時が経ち、私は大人になり、メッソンはインテレオンにまで成長した。
今では両親の元を離れ、インテレオンと二人で暮らしている。
まだ薬は飲んでいるけれど、体調は良好。でもあまり走れないのは今でも変わらない。
無理をすると直ぐにインテレオンに止められる。あの子は少し心配性なんだと思う。
今だって、私の傍で危険がないか周りを注意しながら歩いている。
いつもの事なのでもう気にしないけど。
私は小さく苦笑いをして、優しい太陽の光に手を翳して目を細めた。
「今日はとってもいい天気だね。散歩に出て正解だったでしょ?インテレオン」
私がそう言うと、インテレオンは少し不満そうに一つ鳴いた。
私の身体を気遣ってくれているのは有難いけれど、昔とは違うのだからそんなに心配しなくてもいいのに。
そんな事を思っていると、色んなきのみを実らせている樹木が目に入った。
その木の元へ行き、きのみを採ろうと手を伸ばすが、届きそうで届かない。
んー!んー!と必死に手を伸ばしていると、後ろからインテレオンの手が伸びてきて、簡単にきのみを採ってみせた。
「うぉれおん」
『これでいいのか』と言うように鳴き、採ったきのみを私に差し出す。
「わ、ありがとう」
差し出されたきのみを笑顔で受け取ると、インテレオンもフッと笑みを浮かべた。
子供の頃もこうやって、手の届かないきのみをメッソンがみずでっぽうで採ってくれたっけ。こういう優しい所は今でも変わらないな。
二人できのみを食べながら少し休憩をしたあと、散歩を再開。
草むら、木の上、空。どこを見ても野生のポケモン達が目に入った。
あの頃、部屋の中だけじゃわからなかった光景の中を自分の足で歩き、感じている。
ただこうして今インテレオンと二人で歩いているだけで、私はとても嬉しいんだ。
「あ、ねえ。あっちの海岸の方まで行ってみようよ」
きっと潮風が気持ちいいよ。
私がそう言うと、インテレオンは顎に手をあてて少し思案した後にこくりと頷く。
「よかった!行こ」
私はインテレオンと共に海岸まで歩いて行った。
そんなに距離がなかったおかげで、海岸まではすぐだった。
波打つ青い海に、思わず気持ちが高揚する。靴を脱いで波打ち際に行くと、冷たい海の水が足首まで押し寄せてきた。
「わっ、冷たい!ふふ、とっても気持ちいいよ!インテレオンもおいで」
浜辺にいるインテレオンを手を振って呼ぶ。
すると後ろからザバザバッと音が聞こえ、振り返って見てみると何かが水しぶきを上げながら物凄いスピードでこちらに迫っていた。
なんだろう?と見ていると、突然身体を浮遊感が襲った。インテレオンが私を抱き上げたのだ。
インテレオンは瞬時に私を抱き抱えて海から離れると、水しぶきを上げながら近付いてくる物体を睨み付けた。
その正体を知るべく私も見ていると、水しぶきの中にヒレが見えた。
そしてそれが岸まで来ると、ようやくその正体がわかった。
「…サメハダー?」
シャアッとその鋭利な牙を剥き出しにしてこちらを威嚇しているのは、凶暴ポケモンのサメハダーだった。
どうやらこの海はサメハダーの生息域だったようだ。この辺りがテリトリーだったのかもしれない。悪い事をしてまった。
「ごめんね、サメハダー。勝手に縄張りに入っちゃって。驚かせちゃったよね」
そう言うとサメハダーは少しずつ警戒を解き、牙を見せていた大きな口を閉じてくれた。
しかし、インテレオンは未だ臨戦態勢だった。サメハダーを睨み付けるその目は敵意に満ちていて、今にも攻撃してしまいそうだ。
「インテレオン、落ち着いて。サメハダーはもう大丈夫だから」
それに元はと言えば、サメハダーの縄張りだと知らずに入ってしまった私が悪いのだ。サメハダーにはなんの非もない。
「インテレオン」
宥めるようにもう一度名前を呼ぶと、インテレオンはサメハダーから目を離さないまま、長い尻尾から出た鋭利なナイフの様な突起をゆっくりと納めた。
よかった。きっともう大丈夫。
私は安堵の息を吐き、サメハダーにもう一度謝罪してインテレオンと共に海岸を離れた。
結局、家に着くまでずっとインテレオンに抱き抱えられたままだった。
重いし、もう大丈夫だよと言っても、インテレオンは頑なに私を下ろそうとはしなかった。
そして家に着いた今でも離してくれる様子がない。
「どうしたの?インテレオン」
ベッドの上で私を抱えたまま動こうとしないインテレオンの顔に手を伸ばすと、何故かムッとした視線を向けられた。
「さっきの事、まだ気にしてるの?私なら怪我はなかったし、大丈夫だよ」
昔のように「大丈夫」と頭を撫でると、インテレオンは呆れたように一つ溜息を吐き、ぎゅっと私を抱き締めた。
そんなインテレオンの頭をよしよしと撫でる。
この時インテレオンが何を思っていたのかはわからなかったけれど、きっと私の事を心配してくれたのだろうと思う。
少し心配性だけど、とっても優しい私の大切なパートナー。
「インテレオン、これからもずっと一緒にいようね」
私の言葉にインテレオンは短く鳴いて応えた。
「ああ、もちろんだ」と言うように。
─ 私のパートナー ─
《結局その日は一日離してもらえなかった》
END