一血卍傑
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マジで頭は働き過ぎだ。最近常々そう思う。
今日も朝から執務があるとかで、部屋から出て来ない。
もう夜だぞ?ちゃんと休んでんのか?
「…ちょっと様子でも見てくるか」
考え出したら居てもたってもいられず、おれは頭のいる部屋へと向かった。
本殿の長い廊下を早足で歩くと、頭のいる部屋が見えてきた。
灯りはまだついている。
まさかまだ仕事してんのか?
部屋の前まで来ると、襖越しに紙の擦れる音が聞こえてくる。
おれは一呼吸置いてから、中にいる頭に声を掛けた。
「頭、ちょっといいか」
「…シュテンドウジ?どうぞ」
すぐに奥から返事が返ってきた。
声だけでおれだとわかるとは、流石は頭。
口元が緩みそうになるのを抑えて、静かに襖を開けた。
「なんですかシュテン殿」
「うおおッ!?」
突然至近距離で現れた白い物体に視界が覆われ、思わず変な声が出た。
鋭い、と言うかジトッとした視線でおれを見るそいつの後ろで、頭の小さく笑う声が聞こえる。
「こんな夜更けに主様の部屋に訪れるとは、なんの御用でございましょう?
ハッ!まさか破廉恥な事を!?」
「ンなわけあるか!!」
全くなくもないが。
今は本当に違う。今は。
「頭の様子を見に来たんだよ。ずっと部屋からでて来ねェから」
そう言うと、カラスは訝しげにおれを見た。
「…ホントですかぁ?」
「てめ、マジで焼き鳥にすんぞコラ」
頭の前じゃなきゃ、問答無用で酒のつまみにしてやるのに。
未だにおれを疑うカラスを、後ろから頭がひょいと抱き抱えた。
「カァくん、その辺にしなさい」
「し、しかし主様…!」
頭がまだ言い募ろうとするカラスを宥めるように撫でると、渋々といった様子でようやくそいつは口を閉じた。
頭の腕の中で、未だ不満げにおれを見るカラスを無視して頭に向き直る。
「あー…っと、まだ仕事終わんねェのか?」
「ん、そうだね。もう少し掛かるかな。
悪霊達の勢いがまた増してるみたいで、被害が多発しているの。
なんとか勢力を抑えないと、被害者が増えてしまう」
悲しげに眉尻を下げて、さっきまで向き合っていた紙上を見詰める。
頭のそんな顔を見てるだけで、こっちまで胸が締め付けられるように傷んだ。
カラスも心配そうに頭を見上げている。
「私はここで指示を出すだけ。
直接赴いて戦えればいいのに…。貴方達だけが戦って傷付くなんて…」
「バーカ。何言ってんだよ、頭」
頭の額を軽く指で弾くと、頭は驚いた顔でおれを見た。カラスが何か言いたげな顔をしているがそんなもんは知らねェ。
「おまえはおれ達と一緒に戦ってんだろうが。
なんでもかんでも一人で背負い込もうとしてんじゃねェよ」
仲間だろうが。
そう言っておれが笑うと、頭は数回瞬きをしてふっと笑を零した。
「そうだね。ありがとう、シュテンドウジ」
ああ、やっぱ頭の笑った顔はいいな。
こいつに悲しい顔は似合わねェ。
「よし、んじゃ酒でも飲もうぜ!」
「ちょ、なにがよし、ですか!主様にはまだやるべき事が…!」
「ああ?こんな紙っぺらと一日中睨めっこなんかしてっから辛気臭ェ顔になるんだよ。今日はもう止めだ、止め!なァ頭!」
「……そうだね。息抜きも必要だし、久しぶりに飲もうか」
「う、主様がそう仰るなら…」
縁側に出て、夜闇に浮かぶ月を肴に酒を酌み交わす。
頭はおれの話に耳を傾けて笑っている。
今日くらい、おれが頭を独占したってバチは当たらねェよな。
今だけ、おまえの一番側で。
─end─
今日も朝から執務があるとかで、部屋から出て来ない。
もう夜だぞ?ちゃんと休んでんのか?
「…ちょっと様子でも見てくるか」
考え出したら居てもたってもいられず、おれは頭のいる部屋へと向かった。
本殿の長い廊下を早足で歩くと、頭のいる部屋が見えてきた。
灯りはまだついている。
まさかまだ仕事してんのか?
部屋の前まで来ると、襖越しに紙の擦れる音が聞こえてくる。
おれは一呼吸置いてから、中にいる頭に声を掛けた。
「頭、ちょっといいか」
「…シュテンドウジ?どうぞ」
すぐに奥から返事が返ってきた。
声だけでおれだとわかるとは、流石は頭。
口元が緩みそうになるのを抑えて、静かに襖を開けた。
「なんですかシュテン殿」
「うおおッ!?」
突然至近距離で現れた白い物体に視界が覆われ、思わず変な声が出た。
鋭い、と言うかジトッとした視線でおれを見るそいつの後ろで、頭の小さく笑う声が聞こえる。
「こんな夜更けに主様の部屋に訪れるとは、なんの御用でございましょう?
ハッ!まさか破廉恥な事を!?」
「ンなわけあるか!!」
全くなくもないが。
今は本当に違う。今は。
「頭の様子を見に来たんだよ。ずっと部屋からでて来ねェから」
そう言うと、カラスは訝しげにおれを見た。
「…ホントですかぁ?」
「てめ、マジで焼き鳥にすんぞコラ」
頭の前じゃなきゃ、問答無用で酒のつまみにしてやるのに。
未だにおれを疑うカラスを、後ろから頭がひょいと抱き抱えた。
「カァくん、その辺にしなさい」
「し、しかし主様…!」
頭がまだ言い募ろうとするカラスを宥めるように撫でると、渋々といった様子でようやくそいつは口を閉じた。
頭の腕の中で、未だ不満げにおれを見るカラスを無視して頭に向き直る。
「あー…っと、まだ仕事終わんねェのか?」
「ん、そうだね。もう少し掛かるかな。
悪霊達の勢いがまた増してるみたいで、被害が多発しているの。
なんとか勢力を抑えないと、被害者が増えてしまう」
悲しげに眉尻を下げて、さっきまで向き合っていた紙上を見詰める。
頭のそんな顔を見てるだけで、こっちまで胸が締め付けられるように傷んだ。
カラスも心配そうに頭を見上げている。
「私はここで指示を出すだけ。
直接赴いて戦えればいいのに…。貴方達だけが戦って傷付くなんて…」
「バーカ。何言ってんだよ、頭」
頭の額を軽く指で弾くと、頭は驚いた顔でおれを見た。カラスが何か言いたげな顔をしているがそんなもんは知らねェ。
「おまえはおれ達と一緒に戦ってんだろうが。
なんでもかんでも一人で背負い込もうとしてんじゃねェよ」
仲間だろうが。
そう言っておれが笑うと、頭は数回瞬きをしてふっと笑を零した。
「そうだね。ありがとう、シュテンドウジ」
ああ、やっぱ頭の笑った顔はいいな。
こいつに悲しい顔は似合わねェ。
「よし、んじゃ酒でも飲もうぜ!」
「ちょ、なにがよし、ですか!主様にはまだやるべき事が…!」
「ああ?こんな紙っぺらと一日中睨めっこなんかしてっから辛気臭ェ顔になるんだよ。今日はもう止めだ、止め!なァ頭!」
「……そうだね。息抜きも必要だし、久しぶりに飲もうか」
「う、主様がそう仰るなら…」
縁側に出て、夜闇に浮かぶ月を肴に酒を酌み交わす。
頭はおれの話に耳を傾けて笑っている。
今日くらい、おれが頭を独占したってバチは当たらねェよな。
今だけ、おまえの一番側で。
─end─