第一部
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
戦いの足音が、着々と近づいている。
受験の前よりも、コンテストの前よりも、ずっとずっとそれらは重々しい。
これを年一でやっているというのだから魔法使い達は凄い。もう何度もこなしている彼らにとっては、軽いものなのだろうか。
でも前回があまりに被害が大きかったということで、今回はみんな気を引き締めているようだ。
特に厄災と初めて戦うルチルやミチルやアーサー、「誰も死なせない」ということに重きを置くカインは凄かった。日々鍛錬をし、依頼にも積極的に参加して実戦経験を積んでいた。
懸念事項はオズ、スノウとホワイト、ヒースの厄災の傷。特にヒースは戦闘中に無意識に起こる可能性が大きい上に、敵味方見境なく攻撃してしまう。なるべくオーエンに近いところに配置したかったけど、さすがに最前線に置くわけにもいかなかった。この世はそんなに上手くいかないということだ。
オーエンは、あの日からすっかり大人しくなっている。毎日ピアノとキスをせがんではくるものの、もう首を絞めてくることはない。
どうやら、彼は毎日賢者の魔力ブーストを受けている影響で、基礎魔力が上がったらしい。
最近は調子がいいとご機嫌だし、「何があった」とその他の魔法使いは少し気にしている。
ひょっとしてこれを全員にすれば総合力が上がるんじゃ……とは思ったけど、私がオーエン以外にしたくないという理由でこっそり却下した。ダメな賢者でごめんな……。
戦いの前夜。
「明日に備えて早く寝よう」というリケの素晴らしい提案により、21時に魔法舎の灯りは消された。
私は例のピアノ部屋にいた。空に浮かぶ厄災は、今までで一番大きい。こんなに大きいと見られちゃうな。
「……素敵な夜だね、賢者様」
「オーエン」
いつも通りの格好のオーエンが微笑む。凄絶なまでに美しい彼は、私を抱くためにここにいる。
私の方の服装は指定されていた。血のように赤いドレスワンピース。オーエンがクロエに作らせたという、華やかな洋服だ。
「やっぱり、似合うよ。それ」
「ありがとうございます」
「うん。まるで人形みたい」
「おいで」と言って広げられた腕に近づく。するりと絡めとられて、気づいた時にはもう膝の上にいた。
「……綺麗ですね、オーエンは」
「おまえも綺麗だよ。明日死地に行くからかな」
「あはは」
髪を梳かれる。伸びて整えられた髪は、すっかり癖でうねってしまっていた。
「……勘違いして。僕が、寂しがってるって」
「……はい」
淡い唇が、そっと額に落とされる。
「見せてなんかやらないよ」
彼はそう言って、魔法でカーテンを閉めた。
あの熱と最後の最後、小さく呟かれた「好きだよ」は、月すら知らない。
受験の前よりも、コンテストの前よりも、ずっとずっとそれらは重々しい。
これを年一でやっているというのだから魔法使い達は凄い。もう何度もこなしている彼らにとっては、軽いものなのだろうか。
でも前回があまりに被害が大きかったということで、今回はみんな気を引き締めているようだ。
特に厄災と初めて戦うルチルやミチルやアーサー、「誰も死なせない」ということに重きを置くカインは凄かった。日々鍛錬をし、依頼にも積極的に参加して実戦経験を積んでいた。
懸念事項はオズ、スノウとホワイト、ヒースの厄災の傷。特にヒースは戦闘中に無意識に起こる可能性が大きい上に、敵味方見境なく攻撃してしまう。なるべくオーエンに近いところに配置したかったけど、さすがに最前線に置くわけにもいかなかった。この世はそんなに上手くいかないということだ。
オーエンは、あの日からすっかり大人しくなっている。毎日ピアノとキスをせがんではくるものの、もう首を絞めてくることはない。
どうやら、彼は毎日賢者の魔力ブーストを受けている影響で、基礎魔力が上がったらしい。
最近は調子がいいとご機嫌だし、「何があった」とその他の魔法使いは少し気にしている。
ひょっとしてこれを全員にすれば総合力が上がるんじゃ……とは思ったけど、私がオーエン以外にしたくないという理由でこっそり却下した。ダメな賢者でごめんな……。
戦いの前夜。
「明日に備えて早く寝よう」というリケの素晴らしい提案により、21時に魔法舎の灯りは消された。
私は例のピアノ部屋にいた。空に浮かぶ厄災は、今までで一番大きい。こんなに大きいと見られちゃうな。
「……素敵な夜だね、賢者様」
「オーエン」
いつも通りの格好のオーエンが微笑む。凄絶なまでに美しい彼は、私を抱くためにここにいる。
私の方の服装は指定されていた。血のように赤いドレスワンピース。オーエンがクロエに作らせたという、華やかな洋服だ。
「やっぱり、似合うよ。それ」
「ありがとうございます」
「うん。まるで人形みたい」
「おいで」と言って広げられた腕に近づく。するりと絡めとられて、気づいた時にはもう膝の上にいた。
「……綺麗ですね、オーエンは」
「おまえも綺麗だよ。明日死地に行くからかな」
「あはは」
髪を梳かれる。伸びて整えられた髪は、すっかり癖でうねってしまっていた。
「……勘違いして。僕が、寂しがってるって」
「……はい」
淡い唇が、そっと額に落とされる。
「見せてなんかやらないよ」
彼はそう言って、魔法でカーテンを閉めた。
あの熱と最後の最後、小さく呟かれた「好きだよ」は、月すら知らない。