第一部
夢小説設定
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件の狼は想像の三倍は大きかった。
流石のオーエンも「でかっ」と目を見開いている。「いけますか?」と聞いたら「はあ?僕を誰だと思ってるの?」と返された。通常営業ですね。
でも多分、やばいんじゃなかろうか。我々よりも遥かに大きい狼が、群れになっているのだ。
動物と会話ができて好かれやすいオーエンにも威嚇しまくってるし、さっきから魔法があんまり通っていない。
私を守りながらの戦闘というのも良くない気がする。どう見ても邪魔だし。
「ねえ賢者様、これ普通の狼じゃない」
「やっぱりそうですか?」
「うん。大昔に滅びた奴らだよ。ああムカつく」
銀髪を払ってオーエンが舌打ちした。トランクを開けてケルベロスをけしかけている。
「オズと手を繋いだら夜にも魔法が使えるとか、そういう賢者特典みたいなのないの?」
「わからないです……」
確かに賢者にはブースト効果があるが、確定じゃない。
オズと手を繋いで夜に力を解放するのは数度しかやったことがないし、ミスラの睡眠もまちまちだ。
試しにオーエンの手を握ってみた。特に何も起こらない。
「うーん……」
魔法使いの体や体液は、強い媒体になるという。賢者にもそういうシステムは適用されるのだろうか。
「体液の摂取とかやってみます?」
「ふうん。どうやって?」
「今軽く腕とか指先切ってもらえれば血液出ますよ」
私はオーエンに手を差し出した。さあ、どこでも切ってくれ。でもできればピアノ弾くのに支障が出ないところにしてほしいな。
白銀が揺れた。
差し出した手をグイッと引かれて、紅と黄金が目の前で瞬く。
ぼやけた視界でも白はやたらと目立つんだな、と私は思った。唇を奪った熱と、ぬるりと入り込む舌が苦しい。
目を白黒させる私とは打って変わって、彼は酷く冷静だった。背中に回された手が、つうっと背筋をなぞって腰を撫ぜた。
「……よし」
「……はい」
さらば、私のファーストキス。任務とはいえ、相手がキラキラのイケメンでよかったね。
体液の摂取の条件は満たしてるし、これでもいいのかあ。そんなことを考えて脳を落ち着けた。
「……あー」
オーエンはにい、と口角を上げた。
「賢者様、さっきの毎日やっていい?」
「え?!」
「今、凄くいい気分」
地面を駆けたのは、漆黒の光線だった。
ギャウ、と断末魔の悲鳴をあげて、狼たちが死んでいく。魔力強化は成功したのだ。
「ま、毎日はご遠慮いただきたいですね……」
「なんで?」
「これでも一応生娘なもので……」
「ふうん。まあ、やるけど」
「わーお」
容赦なし。でもこれがオーエンなので仕方がない。仕方ないのか?
そうしてオーエンは無事狼を倒し、今回の任務は達成されたのだった。
めでたしめでたし。
ぜんっぜんめでたくねえ!
魔法舎に帰ってきてからというもの、オーエンからの接触が凄まじいことになっているのだ。
今もピアノを弾いてカウチで休憩してたら急にキスされた。もう何なんだ、今魔力必要なんか。
体液の摂取という名目がまたよくない。だって舌入れが基本になるからだ。
今までされてたおでこへの軽いキスなら受け止められたけど、ちょっとだいぶディープキスはキツい。
これでもこの人私のことそういう意味で好きじゃないんだよな……と思うと思わず空を仰ぎたくなる。まあガチで好かれても応えられない身の上なんだけど。
しかも相手が絶世の美貌を誇っているのもタチが悪い。顔が良すぎて押し退けられない。まあ押し退けても多分力ずくでされるんでしょうけど。
にしてもこの人、かなり上手い方なんじゃないかな。唾液の分泌量を増やした方がいいせいか、いつもドロドロに甘やかしてくる。
「おまえ、いつもへにゃへにゃになるね」
「息継ぎとかまだ慣れてなくて……」
「生娘だから?」
「そうですね」
「生娘じゃなくしてあげようか」
「遠慮します」
オーエンはこんなことも言ってくる。セクハラです。訴えますよ。
「でもおまえ、生娘のわりには落ち着いてるね」
「そうですかね?」
仕事って割り切ってるからじゃないですかね。
「つまんないの。ね、また弾いて」
「はい」
最近は、意味を隠して恋愛の曲を弾くことも増えた。
「I miss the taste of a sweeter life
I miss the conversation
I'm searching for a song tonight
I'm changing all of the stations」
血のように濃厚で、叶うことの無い恋の歌。
意味を問われても、笑って隠すだけだ。
あなたには、一生わからなくていい。
流石のオーエンも「でかっ」と目を見開いている。「いけますか?」と聞いたら「はあ?僕を誰だと思ってるの?」と返された。通常営業ですね。
でも多分、やばいんじゃなかろうか。我々よりも遥かに大きい狼が、群れになっているのだ。
動物と会話ができて好かれやすいオーエンにも威嚇しまくってるし、さっきから魔法があんまり通っていない。
私を守りながらの戦闘というのも良くない気がする。どう見ても邪魔だし。
「ねえ賢者様、これ普通の狼じゃない」
「やっぱりそうですか?」
「うん。大昔に滅びた奴らだよ。ああムカつく」
銀髪を払ってオーエンが舌打ちした。トランクを開けてケルベロスをけしかけている。
「オズと手を繋いだら夜にも魔法が使えるとか、そういう賢者特典みたいなのないの?」
「わからないです……」
確かに賢者にはブースト効果があるが、確定じゃない。
オズと手を繋いで夜に力を解放するのは数度しかやったことがないし、ミスラの睡眠もまちまちだ。
試しにオーエンの手を握ってみた。特に何も起こらない。
「うーん……」
魔法使いの体や体液は、強い媒体になるという。賢者にもそういうシステムは適用されるのだろうか。
「体液の摂取とかやってみます?」
「ふうん。どうやって?」
「今軽く腕とか指先切ってもらえれば血液出ますよ」
私はオーエンに手を差し出した。さあ、どこでも切ってくれ。でもできればピアノ弾くのに支障が出ないところにしてほしいな。
白銀が揺れた。
差し出した手をグイッと引かれて、紅と黄金が目の前で瞬く。
ぼやけた視界でも白はやたらと目立つんだな、と私は思った。唇を奪った熱と、ぬるりと入り込む舌が苦しい。
目を白黒させる私とは打って変わって、彼は酷く冷静だった。背中に回された手が、つうっと背筋をなぞって腰を撫ぜた。
「……よし」
「……はい」
さらば、私のファーストキス。任務とはいえ、相手がキラキラのイケメンでよかったね。
体液の摂取の条件は満たしてるし、これでもいいのかあ。そんなことを考えて脳を落ち着けた。
「……あー」
オーエンはにい、と口角を上げた。
「賢者様、さっきの毎日やっていい?」
「え?!」
「今、凄くいい気分」
地面を駆けたのは、漆黒の光線だった。
ギャウ、と断末魔の悲鳴をあげて、狼たちが死んでいく。魔力強化は成功したのだ。
「ま、毎日はご遠慮いただきたいですね……」
「なんで?」
「これでも一応生娘なもので……」
「ふうん。まあ、やるけど」
「わーお」
容赦なし。でもこれがオーエンなので仕方がない。仕方ないのか?
そうしてオーエンは無事狼を倒し、今回の任務は達成されたのだった。
めでたしめでたし。
ぜんっぜんめでたくねえ!
魔法舎に帰ってきてからというもの、オーエンからの接触が凄まじいことになっているのだ。
今もピアノを弾いてカウチで休憩してたら急にキスされた。もう何なんだ、今魔力必要なんか。
体液の摂取という名目がまたよくない。だって舌入れが基本になるからだ。
今までされてたおでこへの軽いキスなら受け止められたけど、ちょっとだいぶディープキスはキツい。
これでもこの人私のことそういう意味で好きじゃないんだよな……と思うと思わず空を仰ぎたくなる。まあガチで好かれても応えられない身の上なんだけど。
しかも相手が絶世の美貌を誇っているのもタチが悪い。顔が良すぎて押し退けられない。まあ押し退けても多分力ずくでされるんでしょうけど。
にしてもこの人、かなり上手い方なんじゃないかな。唾液の分泌量を増やした方がいいせいか、いつもドロドロに甘やかしてくる。
「おまえ、いつもへにゃへにゃになるね」
「息継ぎとかまだ慣れてなくて……」
「生娘だから?」
「そうですね」
「生娘じゃなくしてあげようか」
「遠慮します」
オーエンはこんなことも言ってくる。セクハラです。訴えますよ。
「でもおまえ、生娘のわりには落ち着いてるね」
「そうですかね?」
仕事って割り切ってるからじゃないですかね。
「つまんないの。ね、また弾いて」
「はい」
最近は、意味を隠して恋愛の曲を弾くことも増えた。
「I miss the taste of a sweeter life
I miss the conversation
I'm searching for a song tonight
I'm changing all of the stations」
血のように濃厚で、叶うことの無い恋の歌。
意味を問われても、笑って隠すだけだ。
あなたには、一生わからなくていい。