第一部
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馬鹿なんですか?と文句をつけたくなるほどに照りつけていた太陽も、そろそろ陰りを見せ始めた。
ようやく北勢の体調は回復し、オーエンも無事業務に復活。各種トレーニングも順調に進み、若い魔法使い達も安定してきている。
私もまた依頼に同行できるようになった。夏の間はいつ何が起きてもいいよう、責任者として魔法舎にステイしていたのだ。
そして今日も、私は外に出ている。場所は北の国最北端、同行者はオーエンただ一人。
これは、「強い魔法使いなら単独で依頼こなせる説」を立証するためのものだ。
もし今回成功すれば、オズを始めとする歴戦の力ある魔法使い達をお目付けの賢者付きとはいえ単独で動かせるようになる。
つまり、より多くの依頼を速やかにこなせるようになるのだ。
今回何故大切な立証実験にオーエンが来たかというと、他でもない彼がやる気だったから。「賢者様と二人きりなんでしょ。面白そう」と周りから見れば不吉でしかないような理由で、彼は手を挙げた。まあ二人きりなんでしょっちゅうですから慣れてますがね。
「ねえ賢者様、雪を甘くしたらどうなると思う?」
「最高ですね。飛び込んで食べます」
「やっぱり?」
今は寂れた集落の中に唯一あった宿屋に、二人で宿泊している。一部屋でいいでしょと押し切られ、無事オーエンと同室だ。ベッドはダブル一つ。
こちらの世界に来てすっかり男性との同衾にも慣れてしまった。主にミスラのせいである。
元の世界に帰ってから貞操観念がバグらないか心配だけど、致してはいないのでセーフにしたい。てかミスラの場合は賢者の仕事として一緒に寝ているわけだし、今回のは経費の節約だし。うんうん、セーフセーフ。
「ねえ賢者様、雪の結晶を掌と同じくらい大きくして食べたらどんな味がすると思う?」
「オーエンが甘くしたら甘くなるし、辛くしたら辛くなりますね」
「なら僕は甘くするよ」
「そうだろうと思ってました」
オーエンは今回終始めちゃくちゃ機嫌がいい。少なくとも私は嫌われてはいないらしいのでよかった。
今なんて彼は私の髪を指で梳きながら、クルクルと巻いて遊んでいる。こちらの世界に来てからすっかり伸びた髪の毛は、今は胸上ほどの長さになっていた。クロエが定期的に切り揃えてくれている。
「賢者様も女性なのですから」とカナリアさんがヘアオイルやら何やらを手配してくれるようになって久しい。
下着関連も彼女に見繕ってもらっている。そのおかげで私は今日、恥をかくことなくオーエンの前で着替えを敢行できた。
取り敢えず、元の世界に帰ってもベビードールとガーターベルトは手放せそうにない。服に下着のラインは出ないしタイツの不快なゴワゴワがないし最高である。
まあオーエンは魔法で自分の視界を塞いでいたようだけど。物騒だのなんだの言われてはいるけど、彼は本当に紳士だ。
ちなみにこの度クロエが任務のために仕立ててくれたのは、暖かさと圧倒的可愛さを誇るワンピース、ケープ、ブーツ、靴下、手袋、耳当てのセットだった。白ストライプに黒いリボンがあしらわれたそれらからは、西の国の彼らしい茶目っ気が感じられる。流石のオーエンも見た時には目を丸くしていた。
「……外、めちゃくちゃ寒そうですね」
「寒いよ。おまえなんて放り出されたらすぐに死んじゃうくらい」
オーエンはそう言って、私に自分の着ていたカーディガンを差し出した。
寒い北の雪の夜には、寝巻き一枚では寒すぎるということだろう。これまたクロエが仕立ててくれたかなり厚手の寝巻きではあるしオーエンが何重にも温度調節魔法をかけてくれてるから、寒さは全く感じないけど。
「……明日の任務は、狼狩りだそうです」
目の前で私の手を包んで結婚線をなぞる美貌の元狩狼官が眉を上げる。彼が今回の任務に抜擢されたのは、その過去のこともあった。
「厄災の影響で強化されてる可能性があるそうですから、気をつけてくださいね」
「僕を誰だと思ってるの」
オーエンは笑う。彼にとって、狼なんて敵ではないということだろう。
「おまえを守りながら戦うのはめんどくさいけどね」
「ご迷惑をおかけします」
「本当にね」
お目付け役として同行してはいるが、彼らにとっては魔法が使えない賢者は邪魔だろう。
私だったら邪魔なので、そう思われることに傷つきもしない。当然のことだ。
オズやミスラなど賢者の存在がプラスに働く人ならまだしも、オーエンはそういうことは無いし。
確定ブースト効果とかあれば、私も肩身が狭い思いをすることはないんだけど。
「私もう寝ますね」
「そう」
窓際に座るオーエンに声をかけると、彼は外を見ながら返事をした。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
日本のものよりも大きなダブルベッドは、魔法舎のそれよりも硬い。
あまりにも冷えたシーツに身震いすると、静かに魔法が飛んできた。
寝起きいきなりイケメンへの心臓の耐久度は、こちらに来てから得たものだ。
薄く唇を開けてすやすやと眠るオーエンを起こさないように、ゆっくりと起き上がる。
外は一面の銀世界。通常営業なんだろうけど。
恐る恐る寝巻きを脱ぐと、刺すような寒さが私を襲った。魔法はもう解けているから。
急いで服を着て今日の流れを確認する。ご飯食べて宿出て狼討伐……作戦はオーエン任せになる。
「……魔法無しに服を着替えるなんて、馬鹿じゃないの」
「あ、オーエン」
布団から起き上がった彼は、静かな顔でこちらを見ていた。
「着替え見ました?」
「見たって言ったら?」
「特に何も」
特別スタイルがいいわけでもないし、見られて減るものもない。現に彼は見ても私に指一本触れていないのだからオールオッケーだ。
「……おまえ、随分と派手な下着を着るんだね」
「ああ、ベビードールとガーターベルトですか?」
「うん」
「便利なんですよ。服に下着のライン出ないしごわつかないし」
「へえ」
男性からしてみれば、やはりベビードールもガーターベルトもセクシーなイメージが強いのだろう。オーエンは少し戸惑っているようだ。
「……すみません、見苦しかったですね」
「あ、いや……」
彼はふい、とそっぽを向く。
それが可愛くて笑ったら、枕が飛んできた。
ようやく北勢の体調は回復し、オーエンも無事業務に復活。各種トレーニングも順調に進み、若い魔法使い達も安定してきている。
私もまた依頼に同行できるようになった。夏の間はいつ何が起きてもいいよう、責任者として魔法舎にステイしていたのだ。
そして今日も、私は外に出ている。場所は北の国最北端、同行者はオーエンただ一人。
これは、「強い魔法使いなら単独で依頼こなせる説」を立証するためのものだ。
もし今回成功すれば、オズを始めとする歴戦の力ある魔法使い達をお目付けの賢者付きとはいえ単独で動かせるようになる。
つまり、より多くの依頼を速やかにこなせるようになるのだ。
今回何故大切な立証実験にオーエンが来たかというと、他でもない彼がやる気だったから。「賢者様と二人きりなんでしょ。面白そう」と周りから見れば不吉でしかないような理由で、彼は手を挙げた。まあ二人きりなんでしょっちゅうですから慣れてますがね。
「ねえ賢者様、雪を甘くしたらどうなると思う?」
「最高ですね。飛び込んで食べます」
「やっぱり?」
今は寂れた集落の中に唯一あった宿屋に、二人で宿泊している。一部屋でいいでしょと押し切られ、無事オーエンと同室だ。ベッドはダブル一つ。
こちらの世界に来てすっかり男性との同衾にも慣れてしまった。主にミスラのせいである。
元の世界に帰ってから貞操観念がバグらないか心配だけど、致してはいないのでセーフにしたい。てかミスラの場合は賢者の仕事として一緒に寝ているわけだし、今回のは経費の節約だし。うんうん、セーフセーフ。
「ねえ賢者様、雪の結晶を掌と同じくらい大きくして食べたらどんな味がすると思う?」
「オーエンが甘くしたら甘くなるし、辛くしたら辛くなりますね」
「なら僕は甘くするよ」
「そうだろうと思ってました」
オーエンは今回終始めちゃくちゃ機嫌がいい。少なくとも私は嫌われてはいないらしいのでよかった。
今なんて彼は私の髪を指で梳きながら、クルクルと巻いて遊んでいる。こちらの世界に来てからすっかり伸びた髪の毛は、今は胸上ほどの長さになっていた。クロエが定期的に切り揃えてくれている。
「賢者様も女性なのですから」とカナリアさんがヘアオイルやら何やらを手配してくれるようになって久しい。
下着関連も彼女に見繕ってもらっている。そのおかげで私は今日、恥をかくことなくオーエンの前で着替えを敢行できた。
取り敢えず、元の世界に帰ってもベビードールとガーターベルトは手放せそうにない。服に下着のラインは出ないしタイツの不快なゴワゴワがないし最高である。
まあオーエンは魔法で自分の視界を塞いでいたようだけど。物騒だのなんだの言われてはいるけど、彼は本当に紳士だ。
ちなみにこの度クロエが任務のために仕立ててくれたのは、暖かさと圧倒的可愛さを誇るワンピース、ケープ、ブーツ、靴下、手袋、耳当てのセットだった。白ストライプに黒いリボンがあしらわれたそれらからは、西の国の彼らしい茶目っ気が感じられる。流石のオーエンも見た時には目を丸くしていた。
「……外、めちゃくちゃ寒そうですね」
「寒いよ。おまえなんて放り出されたらすぐに死んじゃうくらい」
オーエンはそう言って、私に自分の着ていたカーディガンを差し出した。
寒い北の雪の夜には、寝巻き一枚では寒すぎるということだろう。これまたクロエが仕立ててくれたかなり厚手の寝巻きではあるしオーエンが何重にも温度調節魔法をかけてくれてるから、寒さは全く感じないけど。
「……明日の任務は、狼狩りだそうです」
目の前で私の手を包んで結婚線をなぞる美貌の元狩狼官が眉を上げる。彼が今回の任務に抜擢されたのは、その過去のこともあった。
「厄災の影響で強化されてる可能性があるそうですから、気をつけてくださいね」
「僕を誰だと思ってるの」
オーエンは笑う。彼にとって、狼なんて敵ではないということだろう。
「おまえを守りながら戦うのはめんどくさいけどね」
「ご迷惑をおかけします」
「本当にね」
お目付け役として同行してはいるが、彼らにとっては魔法が使えない賢者は邪魔だろう。
私だったら邪魔なので、そう思われることに傷つきもしない。当然のことだ。
オズやミスラなど賢者の存在がプラスに働く人ならまだしも、オーエンはそういうことは無いし。
確定ブースト効果とかあれば、私も肩身が狭い思いをすることはないんだけど。
「私もう寝ますね」
「そう」
窓際に座るオーエンに声をかけると、彼は外を見ながら返事をした。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
日本のものよりも大きなダブルベッドは、魔法舎のそれよりも硬い。
あまりにも冷えたシーツに身震いすると、静かに魔法が飛んできた。
寝起きいきなりイケメンへの心臓の耐久度は、こちらに来てから得たものだ。
薄く唇を開けてすやすやと眠るオーエンを起こさないように、ゆっくりと起き上がる。
外は一面の銀世界。通常営業なんだろうけど。
恐る恐る寝巻きを脱ぐと、刺すような寒さが私を襲った。魔法はもう解けているから。
急いで服を着て今日の流れを確認する。ご飯食べて宿出て狼討伐……作戦はオーエン任せになる。
「……魔法無しに服を着替えるなんて、馬鹿じゃないの」
「あ、オーエン」
布団から起き上がった彼は、静かな顔でこちらを見ていた。
「着替え見ました?」
「見たって言ったら?」
「特に何も」
特別スタイルがいいわけでもないし、見られて減るものもない。現に彼は見ても私に指一本触れていないのだからオールオッケーだ。
「……おまえ、随分と派手な下着を着るんだね」
「ああ、ベビードールとガーターベルトですか?」
「うん」
「便利なんですよ。服に下着のライン出ないしごわつかないし」
「へえ」
男性からしてみれば、やはりベビードールもガーターベルトもセクシーなイメージが強いのだろう。オーエンは少し戸惑っているようだ。
「……すみません、見苦しかったですね」
「あ、いや……」
彼はふい、とそっぽを向く。
それが可愛くて笑ったら、枕が飛んできた。