2章 公園のポータル使い

次の日

みちる「とはいえ僕の家こっちのほうだから公園は通るんだよな。……わざわざ迂回するのもアレだし、気づかないフリしていこう。」

かるた「……。」

みちる「あ、今日はあそこのベンチでボーッとしてる。毎日ああして過ごす気なのかな……。いや、気にするな!みちる!見つからないようにこっちのほうに行って……」

かるた「あーお腹すいたナー、誰かご飯分けてくれないカナー。」

みちる「!?……さっきはあっちのほうにいたはずじゃ……」

かるたお姉さんはいつの間にか僕の通ろうとした道の先に立ってた。
怖。
超怖い。

かるた「お?おお?……みちるクンやないか!奇遇やなぁ!!……スマン!お金貸すかご飯買うてくれへんか?」

みちる「……。」

かるた「ちょっ、そんな嫌そうな顔せんでもええやん!もちろんお礼はするて!」

みちる「というかお姉さんお金持ってたって昨日言ってなかった?」

かるた「あー……それな。ちょっと勘違いやったわ。持ってる金なんやけど、微妙にデザイン違ったわ。弟のイタズラやらで誤魔化せたけど、あやうく警察にしょっぴかれるとこやったわ!」

みちる「え……偽札?犯罪者?」

かるた「ちがうて!……そーやな、本当のこと話してもええかもな。ウチな……別の世界から来たんや。」

みちる「……。」

かるた「デジャヴぅ!まぁ、信じられへんよな。でも、これ見てみぃ。」

かるたお姉さんが何もない空間を"叩く"と、長方形型のポータルが2つ現れた。
ヴン……ヴン……

みちる「なっ!?なにこれ!?」

かるた「次元ポータルや。こうするとな……」

かるたお姉さんが片方のポータルに手を入れると、もう片方から手が出てきた。

かるた「こんなふうに出口のポータルから出れるんや。このポータルな、多次元宇宙と接続してて全く座標の異なる世界と……って言ってもわからへんか。」

みちる「……。」

僕は興味深そうにポータルを見つめる。

かるた「そやな、体験したほうがわかるか!」

そう言うと、かるたお姉さんは人が通れるほどの大きなポータルを出す。

かるた「ほらほら!遠慮せんといて!多次元宇宙ツアーの開催や!」

みちる「ちょっと……お姉さん押さないでよ!っうわぁ!!!」

僕はポータルに入る。
中は幻想的で、何か光ごと引っ張られているような不思議なトンネルだった。
巨大なシャボン玉のようなものが連なっている。

みちる「綺麗……」

と思うのも束の間、すぐさま明るい場所に出る。



世界識別コード0541010930sweetycandyworld

みちる「え……?」

かるた「ようこそ!お菓子の世界へ!」

地面からはキャンディケインが生え、わたがしの木が生えている。
奇妙なことに空には包装済みの飴が浮いている。

みちる「な、なにここ!?どこなの?」

かるた「言ったやろ、メルヘンなお菓子の世界や。別の世界ってとこやな。物理法則も構成物も全く異なる場所や!見てみ、地面がビスケットやしアッチにはお菓子のウサギもおるんやで。」

みちる「あ、ホントだ。……お菓子で生きていけるの?」

かるた「別の世界に来たなら常識は捨てへんと。頭おかしなるで〜!」

かるたお姉さんがからかうように言う。
すると、地面が揺れる。

かるた「あ?この世界に地震ってあるんやっけ?」

バゴォオン!!!

突然地面を割り、巨大な……お菓子のドラゴン?が現れた。

みちる「ななな何?ドラゴン!?」

かるた「うせやろ?こんなん会ったことあらへん……みちる君、ちょい逃げたってや!」

みちる「う、うん!」

ドラゴン「グガァアア!!!」

僕は必死で逃げ出した。
ふと、かるたお姉さんのことが気になって後ろを振り返った。

かるた「可哀想やけど、ちょっとシバいたるか。」

かるお姉さんがニヤリ、と笑い空中を何度も"叩く"。
ヴン……ヴン……ヴン……
すると、長方形のポータルがいくつも飛んでいく。

ドラゴン「グァ!」

ドラゴンが巨大な手を振り下ろした。

みちる「お姉さん危ない!」

かるた「あん?みちる君、ウチのことは心配いらへんで!」 

バゴォン!

ドラゴン「グガァ!?」

次の瞬間、ドラゴンは自分自身を殴っていた。
どうやらポータルで攻撃を跳ね返したみたいだ。

かるた「次はウチの番やで!」

かるたお姉さんは人差し指を構え、縦になぞる。
ザンッ!!

ドラゴン「っ!??」

ドラゴンの羽が真っ二つになる。

ドラゴン「ゴガア!ガァ!」

ドラゴンは激昂してかるたお姉さんに噛みつこうとする。

かるた「なんや強情やなぁ。ほなら……ぶっ飛びぃ!!」

かるたお姉さんは空中をつよく弾いて、ポータルを出す。
ポータルから……ビームが飛び出す。
ビュッ...

ドラゴン「ゴガ……!ガァ!!」

バビューン……
あの重そうなドラゴンが彼方遠くまで吹っ飛んで行った……

みちる「お、お姉さん……」

かるた「お、無事やったな。いやースマンスマン!危険生物がおるとは思わんかったわ!……みちる君?」

みちる「お姉さんすごく強いんだね!すごい!映画みたいだった!ビームとか……羽を切ったのはどうやって!?ポータル出す力だけじゃないの?」

かるた「そ、そうなんよ〜!ウチ、最強やから!……けどな、ウチはポータル出せるだけやで。ビームも斬撃も、"そういう"ので満たされてる世界と繋げただけや。」

みちる「なんかよくわかんないけど……すごいんだね!熟練のポータル使いってことだね!」

かるた「はっはー!それほどでも……ある!ウチは天才や!ほな、次は危なくない世界行ったろか!」

みちる「え?もういいよ別の世界……はっ!?」

突然地面にポータルが現れて落ちる。
ヴン……



世界識別コード0004384110weekspace
気がつくと、空にフワリと浮かんでいた。

みちる「う、宇宙!?……でも息苦しくない?宇宙って呼吸できないんじゃ。」

かるた「ここは酸素ある宇宙なんや!綺麗やろ?」

みちる「たしかに……わ!隕石がぶつかって……こっちに破片がくる!?」 

かるた「ははっ!安心せい!大丈夫や。」

僕とかるたお姉さんに隕石がぶつかるが、全然熱くも痛くも無かった。

みちる「あぇ……?」

かるた「ここは何もかも脆いんや。さ、堪能したら次行くで。」

ヴン……



世界識別コード0004384110lovelycuteLilliput

みちる「ここは……?」

太陽が4つ、月が6つある空だ。

小人「わーわー!ニンゲン!ニンゲンだ!」

近くの洞窟から小人たちがでてくる。

かるた「おっ久しぶりやな、元気やったか?」

小人「かるた!かるた!ひさびさ!これあげる!デカ肉!」

かるた「ほんま助かるで!みちる君もほら。」

みちる「あ、ありがとう?……ん、独特な味。これ本当にお肉?ていうか何の肉?」

かるた「ヴクロロロナンデスの肉や。」

みちる「なんて?」

かるた「ヴクロロロナンデスの肉や。ま、この世界の固有種やな。次行くで!」

ヴン……



世界識別コード410340200commonfantasy459
西洋ファンタジー風の町に出る。

みちる「うわぁすごい、ゲームの中の世界みたい!」

かるた「異世界転生系は知っとるか?」

みちる「え?うん、それがどうかしたの?」

かるた「ほなら、唱えてみ……ステータスオープン!」

シュン!シュン!
目の前にウィンドウのようなものが現れる。

みちる「ステータスオープン?……あ、なんかでてきた。なにこれ?」

かるた「文字通りステータスや。お、みちる君スキル"おねしょ癖"があるやないか!ププッ!」

みちる「は!?何で……っていうかおねしょ癖はスキルじゃないでしょ!」

かるた「まぁ気にせんといて。……おねしょ癖。ププッ!」

みちる「ちょっと!……おや、お姉さんはスキル"お腹の鳴る音(大)"があるじゃん!へ〜!お腹の音大きいんだ〜!へ〜!」

かるた「!!?……あー気分悪っ!おもんないわ!次もう帰るで!」

ヴン……



世界識別コード2104432513souichigo

みちる「あ、戻ってこれた……」

なんだかいつも見ている公園の景色が愛おしく感じた。

かるた「ま、これでわかったやろ。ウチには世界を渡る力があるって。」

みちる「それはわかったけど、結局偽札の話はどういうことさ。」

かるた「世界は無限大に広がっとんのや。ダブりや似通った世界もある。んで、みちる君の住んでる世界のお金に似てる世界のお金を出したら、微妙に細部が違ったってことや。」

みちる「なるほどね。……それならなんでそっちの世界で暮らさないの?」

かるた「あー……あっちは殺伐としてるというか……治安が終わっとんねん。この世界にはゆっくりしたくて来たんや。」

みちる「……。」

そっか。
さっきのお菓子のドラゴンみたいに危ない生物がいる世界もあるんだもんね。
僕たちの世界でさえ事故とか事件とか戦争とかあるんだから、安心できる世界ってのも珍しいのかも。
かるたお姉さんはそんなとこを旅して疲れちゃったのかも?
ならせめてこの世界では休ませてあげようかな。

みちる「……かるたお姉さん。この世界でゆっくりしていってね。」

かるた「お?なんや急に優しゅうなって。ほな、食べ物分けたってや♡」

みちる「……」

前言撤回。
こんな図々しい人、疲れるとかないんじゃないか?

みちる「……はぁ。ポンとランのご飯買ってくるついでに持ってくるよ。待ってて。」

かるた「おおきにー♡」
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