守りたい笑顔
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「楽、天、お疲れ様!そろそろお腹空かない?」
「そうだね、切り上げてお昼にしようか」
今日は朝からスタジオに籠り、夜にある新曲初披露の生放送のため、三人で最終調整を行っていたところだった。
「お、それならうちのそば処にしないか?最近忙しかったから、全然顔を出せてないんだ。ご馳走するぜ」
「いいね、そば!」
「そうだね、さっぱりしたものが食べたいし」
「よし!決まりだな。新しく雇った若いやつが根性あって助かってるって言ってたから、挨拶もしておきたいしな」
「へー、今時の若者にしては珍しいね」
「はは、未成年の天がそれを言うとなんだか変な感じじゃないか?」
先ほどまでの仕事モードから一転、三人は和やかな雰囲気でそば処山村へと向かう。
今となってはその場所も、TRIGGERにとってホームのような場所であった。
「こんにちはー!」
『いらっしゃいませ!』
元気よく挨拶して入ったが、さらに明るく元気な声に迎えられた。
よく知る店であるはずだが、その声には誰も聞き覚えがない。
『三名様ですか?こちらのお席へどうぞ!』
「あ、あぁ」
『おしぼりとお水、失礼します。ご注文がお決まりになりましたらお呼びください!』
「おぉ、ありがとう」
「ちょっと、根性あるやつって、どう見ても女の子なんだけど。」
「いや、俺もてっきり男だと思ってたから!」
「すっごく元気な子だね、いい子そうだ」
三人でコソコソと話していると、噂の人物は奥にいる女将さんと話したのちに慌ててこちらにやってきた。
『すみません!息子さんだったとは知らず!ご挨拶が遅れました。最近からこちらでお世話になっています、みょうじなまえと申します!どうぞよろしくお願いいたします!』
「あぁいや、こちらこそ、お袋が助かってるって話してたんだ。これからもよろしく頼む。俺は八乙女楽だ」
「楽と同じメンバーの、九条天です」
「同じく十龍之介です、よろしくね」
『よろしくお願いします!…あの、メンバーって?』
その言葉にピキっと固まる三人。
今日までTRIGGERとして全力で駆けてきて、知名度としてもわりと高いと思っていたが、どうやら目の前の人物は自分達のことを知らないらしい。
「えーっと、俺達は三人でTRIGGERってアイドルグループをやってるんだ。楽がリーダーで、天がセンター。テレビにも一応出てたりするんだけど…」
『え!すみません!テレビとかほとんど見なくて…。母があまり体が丈夫じゃないので、病気がちな弟を支えるために私もバイトをいくつもやってたりして…』
「女将さん、ボクが出すので彼女のバイト代3倍にして」
「家族のために、なんていい子なんだ…。女将さん、俺も出すので5倍で…!」
「…っ、おまっ、今までよく頑張ってきたな…!今日からはもう無理しなくていい!ここで働くだけで、必要な金銭は稼げるようにしてやる!」
さっきまでの気まずい雰囲気はどこへやら。
家族のためという同じ心情を持つ彼らは、もうすっかり同類意識が芽生えて彼女の今後の人生までも支えていく心積もりである。
『あの、ありがとうございます!でももう女将さんのご厚意で、充分過ぎるほど頂いているんです。バイトの掛け持ちも今では必要なくなって!』
「そうか!良かった。他にも何か困ったことがあればなんでも言ってくれ!いつでも力になるから」
そう言って力強く彼女の肩を抱く。
いきなりの近すぎる距離感に赤面する彼女だが、楽はそんなことには気付いていない。
「ちょっと、近いよ楽」
「あ?何がだよ」
「ボクのなまえに気安く触らないで」
「誰がお前のなまえだ!」
「ちょ、二人とも喧嘩はやめて」
賑やかになった店内に、彼女の笑い声も響く。
この笑顔が曇ることがなければいいと、今はただそう願った。
fin.
2022/11/17
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