未来へ繋ぐ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「リク、今日は病院で定期検査の日だよな」
「はい!行ってきます!」
「陸くん、やっぱり僕も一緒に行こうか?仕事までは走ればギリギリ間に合うと思うし。」
「大丈夫ですよ、壮五さん!それにみんなで行った方が騒ぎになるかもしれないけど、一人ならただの健康診断です、で通せるし!」
「陸、何かあったら絶対に連絡しろよ!」
「七瀬さん、無理は絶対に禁物ですよ。」
「はは、みんな心配してくれてありがとう!何かあったら絶対連絡します、約束します!」
「リク、気を付けてくださいね。」
「りっくん、帰ってきたら一緒に王様プリン食べようぜ!」
「うん!みんなも仕事頑張って!じゃあ行ってきます!」
過保護なメンバー達に見送られ、温かい気持ちになりながら家を出た。
病院は昔から好きではなかったけど、こうやってみんなから心配されるのは悪くないかもな、なんて思いながら行けば自然と足取りも軽くなる。
今日は本当にただの定期検査で、最近の体調はすこぶる良かった。
この分なら検査も特に問題無く終わるはずだ。
そんな予想通りに無事検査を終え、会計も終わり帰路につこうとしていた時だった。
入院患者であろうパジャマ姿の人影が、非常口の扉の向こうへと消えていくのが見えた。
その先は病棟には繋がっておらず、確か屋上へと続く外階段があったはずだ。
本能的に、ヤバいと思った。
かつて自分が入院していた時も、それはいつも隣り合わせにあった。
非常口の扉を開け、駆け上っていく。
勘違いであってくれと、自分の思い違いであってくれと。
嫌な予感に段々と呼吸が速くなる。
少し苦しくなったが、今はそれにかまっている場合ではなかった。
「待って!」
たどり着いた先、そこにいた人物に向かって咄嗟にそう声をかける。
その人は手すりに手をかけたまま、こちらを振り返った。
『…あなたは…』
「あ、えっと、初めまして!オレ、七瀬陸って言います!キミはここで、何をしてるのかなって」
『…七瀬、陸…?IDOLiSH7の?』
「え!そうだよ!もしかしてオレのこと知ってる?」
『…知ってます。歌も全部、聴いてて…。』
「わー嬉しいなー!あ、よかったらこっちで少し、お話しませんか?さっき検査が終わって、オレこのあと暇なんだ!」
『…検査?』
「そう!キミはここに入院してる人?」
『……………』
それとなく話を引き延ばし、こちらに来るよう促してみるが彼女はそこを動こうとしない。
背中を冷や汗が伝うが、彼女が自分のことを知っていたのは好都合だと思った。
「オレも昔、ここで入院してて。今日は定期検査で来たんだ!だから仕事は休み。まさかオレのことを知ってる人に会うとは思わなかったなー」
『…陸くんも、入院していたの?』
「子供の頃、ずっとね。今は体力もついてきたけど、たまに発作を起こすから、こうして定期検査や薬でいつも体調管理をしてるんだ」
『そんな…、まさか、陸くんが病気だったなんて…。』
「あ、これは家族と事務所の人しか知らないことだから、できれば誰にも言わないでほしいな」
『…分かりました。』
「ありがとう!キミとオレとの約束ね!」
『…やく、そく…』
約束は時に幸福で、時に残酷でもある。
言葉は人を縛るからだ。
彼女と交わした約束にも、色々な想いを込めたつもりだ。
「オレたちの歌、聴いてくれてるんだよね!何が好き?特別にキミのためだけに歌っちゃう!」
『…ナナツイロREALiZE』
「あ、オレも大好き!」
~~~♪
そして歌い始める。
心を込めて。届け、キミに。
…生きて!
曲が終わる頃には、彼女はしゃくり声をあげて大泣きしていた。
届いただろうか、オレの心が。
届いていたら、いいなと思った。
「聴いてくれてありがとう。これからも、ずっとずっと、歌い続けるよ、キミに届くように。この曲の歌詞にもある、世界中の涙を虹に変える日まで。だからどうか、いつまでも聴いていて」
彼女は泣きながら頷いた。
涙と一緒に、不安も絶望も、流してくれたらいい。
そして消えない虹へ____
fin.
2022/11/17
1/1ページ