甘さ控えめ
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「四葉さん、今日は私このまま仕事があるので先に帰りますよ。」
「おー」
「音楽のノート提出、今日までですからね。」
「えー何それ?」
「あなた、まさかやってないんですか?昨日言いましたよね、明日提出だから忘れずにやってくださいって!」
「そうだっけー?」
「先生に言われたじゃないですか!ノート提出しないと容赦なく単位落とすって。留年なんてしたらマネージャーと社長に怒られますよ。」
「うわー、やば。いおりん、ノート写させてよ」
「音楽を聴いた感想なんだから、写せるわけないじゃないですか。」
「えー、じゃあどーしたらいー?」
「知りませんよ!」
ホームルームが終わり生徒達が散っていくなか、揉めている二人を遠目に見ていた。
まさにそのノートを回収して先生に届けるのが私の役目だからだ。
「とにかく私は行かないといけないので。絶対にノートなんとかしてくださいよ。」
「うおー、まじかー」
そうして慌ただしく帰宅していく和泉くん。
残された四葉くんはノートをパラパラとめくっているが、書き始める様子はない。
『あのー、そのノート、回収するように言われてるんだけど…』
「あ、いんちょー?だっけ?あんた」
『そうだけど、やってないんだよね?それ』
「おー、どーしたらいー?」
『絶対に提出してって和泉くんに言われてたよね』
「ていうか、どんな音楽聴いたかなんて覚えてねーし」
ですよね。
一連の流れからそうだと思った。
本当だったらこのまま我関せずでさっさと帰りたいが、話を聞いていたために放置して帰るのはさすがに気が引ける…。
『スマホで検索したら音楽聴けるから、それ聴いて感想書いてくれる?終わるまで待ってるから』
「おー、サンキューな!」
誰もいなくなった教室で二人きり、クラシックが流れ始める。
四葉くんとはほとんど話したことがないので、なんだか不思議な感じだ。
「なー、感想って、ねむくなるーとかじゃだめだよな」
『当たり前だよ、そんなの書いたらそれこそ留年になるよ』
「だよなー、けどそれ以外になんとも思わねーし」
『…IDOLiSH7の曲にもさ、一曲ずつ、伝えたいメッセージとかがきっとあるよね』
「おーあるぜ。この曲はこんな風にーとか、歌う前にみんなで話したりする」
『今聴いてる曲からも、そういうのを感じとったらいいと思うよ』
「あー、なるほどなー」
そう言うと、さっきまでくるくる回して遊んでいただけのペンがスラスラと字を書き連ねていく。
さすが音楽を仕事にしているだけあって、感受性は豊かなようで一度書き始めてしまえば次から次へと言葉が出てくるみたいだ。
ぐわーっとくる感じ、とかドカーンと盛り上がる!って書いてあるけど…。
「よっしゃー、書けたー」
『うん、じゃあこれ貰っていくね』
「まじでありがとなー、助かったわ」
『どういたしまして。じゃあ、「待って」』
「俺もそれ、一緒に持ってくし」
そして先に立ち上がった彼に積まれたノートを全て持っていかれてポカンとする。
「早く行こーぜー」ってドアの前で急かされるけど、どうしてこうなった?
『あの、私持っていくよ?』
「俺のせいで遅くなったし。送ってくから一緒に帰ろーぜ」
『え?』
少し先をゆっくり歩く背中を見つめながら、ドキドキと高鳴り始めた胸に手を当てる。
帰る方向、どっちだろう。
同じだったらいいなって考えながら、その背中を追いかけた__。
fin.
2022/11/15
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