ふたりで恋する
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
初めて会った時の印象は、王子様みたいな人だなと思った。
「今日から新しくスタッフが1名加わりますので、MEZZO"のお二人ともよろしくお願いします。」
『みょうじなまえです!よろしくお願いいたします!』
「逢坂壮五です。よろしくお願いします。」
「うす、お願いします」
話に聞いていた通りMEZZO"の二人はなんとも正反対な感じだが、話してみるとそれぞれに違った魅力があり、一緒に仕事をしていくなかで沢山の顔を知った。
特に、四葉さんの印象は最初とほぼ変わらないものの、逢坂さんの印象は大きく変わっていった。
普段は真面目で柔らかい物腰ながら、音楽の話をしている時は表情が生き生きとしている。
まさにマシンガンのごとくトークを繰り広げ、少々過激な思考になるところも面白い。
そしてなんと言っても驚くほどに音楽の趣味が自分と酷似していて、仕事のスタッフとアイドルという枠を飛び越えて趣味仲間として仲良くなるのにそう時間はかからなかった。
しかしいつからだろうか、仕事仲間でもなく趣味仲間でもなく、異性として彼を意識するようになったのは。
「こんな失敗、もう困るぞ。次からは気を付けてくれ。」
『はい、申し訳ありませんでした…。』
仕事で大きなミスをしてしまい、みなさんに迷惑をかけてしまった。
段々と仕事も覚えて楽しくなり、もっと頑張ろうと意気込んでいた矢先のことだったのですっかり自信をなくしてしまった。
『…向いてないのかも』
「なまえさん。」
そして落ち込んでいたところ、逢坂さんが声をかけてくれた。
『すみません、MEZZO"のお二人にも迷惑をかけてしまいました…。』
「気にしないで。失敗してしまったとしても、次また同じ失敗を繰り返さないよう気を付けていけばいいんだから。」
『…でも。』
「人は失敗から学ぶものだから、このあと君がどう動くかでまた周りからの信頼を取り戻していけばいい。僕は君と一緒に仕事をしていて頼もしいと思うことばかりだよ。」
彼の言葉は私の中にスッと入ってきて、その優しさに触れて救われた。
それがきっかけだったかもしれないし、もっと前からだったかもしれない。
私の中で彼の存在はどんどん大きくなり、想いは溢れていくばかりだった。
しかし、それは許されないことだ。
だって彼はアイドルで、私は仕事の一スタッフに過ぎないのだから。
自分の気持ちを自覚してからは、この想いは絶対に誰にも知られてはいけないものだと思った。
せっかくやり直すチャンスが貰えたのに、また信頼を失ってはここにいられなくなってしまう。
彼と一緒にいればいるほど気持ちは膨らんでいくが、それが逆に私を苦しめることになっていた。
「みょうじさんさ、そーちゃんのこと好き?」
『…っ、な、何をおっしゃっているのでしょう』
ある時、四葉さんから唐突にそんなことを言われて私は動揺を隠せなかった。
「なんか見ててそんな感じしたから」
『まさか!…あり得ないです、そんなこと…。』
「ふーん」
どうして気付かれてしまったんだろう?
もしかして周囲にも悟られているのだろうか。
駄目だ、この気持ちはもっと奥深くに閉じ込めていないと…。
「なまえさん、この前話してたアルバムが発売されたんだ!もう最高だったよ!聴きたいって言っていたし、君にも貸すよ。」
『あ、ありがとう!でも大丈夫、自分で買って聴くので!すみません、やらなきゃいけない仕事があるので失礼します。』
「あぁ、うん。ごめんね仕事中に。」
気持ちを押し殺すにはどうしても関わらないようにするしかなくて、彼を避けるような態度をとってしまった。
でも仕方がないんだ。
これは許されない恋だから…。
そんな日々が数日続いたが、私の心は早くも限界を迎えそうだった。
「なまえさん、大事な話があるからこのあと話せないかな?」
仕事もそろそろ終わろうかという時、少し強ばった表情の逢坂さんにそう切り出された。
誰かに聞かれてはまずいと言うので、職場から離れた人気のない公園にやってきた。
ここならばまず誰も通ることはないだろう。
「あの…。」
緊張した面持ちの逢坂さんに、こちらまで緊張が伝染してくる。
大事な話とはなんだろう。
胸が早鐘をうつなか、続く言葉を待っていた。
「僕は、なまえさんのことが好きです。どうかお付き合いをしてください。」
『…え、お付き合い…。好きって?…でも、逢坂さんはアイドルで、えっと…。』
「メンバーのみんなにも、事務所のスタッフさんにも許可は貰いました。僕がアイドルだってことで、色々と制約ができてしまって君には辛い思いもさせてしまうかもしれない。でも、それでも君の隣にいるのは僕がいいと、その場所を誰にも譲りたくないと思ってしまったんだ。大切にすると誓うので、僕と一緒にいる未来を選んでくれませんか?」
彼の表情から、沢山の想いが伝わってくる。
気付けばもう胸がいっぱいで涙が止まらなかった。
でも、私もちゃんと彼の想いに答えたい。
『…はい、喜んで。私も、世界で一番あなたのことが大好きです』
言い終わる前にはもう彼の胸の中に包まれていた。
強く抱きしめられているのだと気付くのに時間がかかったが、彼の心臓の音がトクトクと速いリズムを刻んでいるのが分かって不思議と安心できた。
「…嬉しいよ。僕を選んでくれてありがとう。」
そしてそっと離れると、優しく涙を拭ってくれる。
顔を上げると魔法にかかったように彼から目が逸らせなくなって、二人の距離は自然と近づいていった───。
To be continued.
2023/2/3