ふたりで恋する
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最近、そーちゃんがすげー楽しそうだ。
それは冠ラジオに新しく入ってきたスタッフと喋っているとき。
なんでも音楽の趣味がドンピシャに一致していて、解釈違いってやつがないらしい。
こんなに気の合う人と出逢えるのは奇跡に近いって、興奮しながら言われたのを覚えている。
そいつとそーちゃんが楽しそうに話してると、なんだか胸のあたりがモヤモヤする。
だって俺は二人が好きな音楽のこととか全然分かんねーし、仲間に入れないからいつも蚊帳の外だ。
「なあ、そーちゃん。そろそろラジオ始まるぜ」
「あ、そうだね。ごめんね環くん。」
それから最終の打ち合わせをして、今日はこの音楽を流そうか、これのいいところを語り尽くしたい、なーんてまた盛り上がっているのをただただぼーっと見つめる。
俺とそーちゃんのラジオなんだから、俺のこと、無視すんなよ…。
『四葉さん、今日もMEZZO"の素敵な掛け合い、楽しみにしてます!』
「…別に、掛け合いとか意識してやってねーし」
『だからいいんですよ!四葉さんも逢坂さんも、そのままがいいんです。それでこのラジオは最高です!』
「…うす」
ちょっと悪い気はしなかった。
ある時部屋にいると、相談があるとそーちゃんが訪ねてきた。
けど俺は、なんとなく内容は分かる気がした。
「あのね、環くん…。僕、なまえさんのことが好きなんだ。」
ほらな。
言われなくても、なんとなく分かってた。
そしてそれはそーちゃんの一方通行ではなく、恐らく二人はお互い想いあってると思う。
「急にこんなことを言われても困るよね…。でも、彼女に想いを伝えたくて。だけど僕はアイドルだから、そしてMEZZO"の一人だから。まずはメンバーに話してけじめをつけなければと思ったんだ。」
「けじめって何?アイドリッシュセブンもMEZZO"もやめますって、そういうこと?」
「違うよ…!これは僕のワガママだけれど、できればアイドリッシュセブンもMEZZO"も、続けさせてもらいたいと思ってる。それから、彼女に告白はするけど、お付き合いはしないつもりなんだ。」
…なんだよそれ。
言うだけ言って、付き合いませんって。
そんなの二人が苦しいだけじゃねーの?
「俺は認めねー」
「…環くん!」
「そんな中途半端なことするくらいなら、好きとか言うなよ!諦めちまえよ!自分の夢か、好きな人かを天秤にかけてる時点で、もうそんなん上手くいきっこねーよ!」
「…っ」
「出てって」
「…分かった。こんな相談しちゃってごめんね…。」
そうしてそーちゃんが出てったあと、むしゃくしゃしながらベッドに伏せる。
あんな言い方したいわけじゃなかったのに。
ただ俺は、そーちゃんにもみょうじさんにも幸せになってもらいたい。
けど、どこかでそれを寂しいと思ってる自分がいる。
「あ゛ーー!」
自分の気持ちもごちゃごちゃでよく分からなくて、今はもう何も考えたくなかった。
「なぁ、環。おまえ最近、壮五と何かあったのか?」
「…別に」
数日後、すぐに俺たちの異変に気付いたみっきーが声をかけてきた。
そーちゃんとはあれ以来ギクシャクしていて、仕事以外では会話もなかった。
「別にってことはないだろ?メンバーもみんな心配してる。壮五には大和さんが話を聞きに行ってるから、おまえもなんかあるなら話せよ」
「俺から話すことなんかねーよ」
「もう、おまえらMEZZO"はすぐそーやって自分たちで問題を抱える!オレらメンバーだろ?一緒に考えて解決してこーぜ!」
「…だって、俺の問題じゃねーし」
そーちゃんは結局他のメンバーにはみょうじさんのこと話してないと思う。
だったらこのことは俺の口から言ったらいけないことだろ。
「はーい、ちょっとみんな集合」
そしてリビングにやってきたヤマさんと、思い詰めた顔をしたそーちゃん、他のメンバーも声かけにぞろぞろと集まってきて、みんなで話し合いが始まった。
「で、結局今回の問題はなんなんだ?」
「あーソウ、お前さんから話せるか?俺からみんなに話をしようか?」
「…いえ、これは僕の口からみなさんに話さなければいけないと思うので。」
「ソウゴ、ゆっくり深呼吸して。ワタシはどんなことを聞いても、アナタの味方ですよ。」
「…ありがとう。僕、重大な契約違反を犯してしまったんだ。」
「っえ?!壮五さんやめなきゃいけないとか、そういう話ですか?!」
「七瀬さん、先走って話をややこしくしないで。まずは逢坂さんの話を最後まで聞きましょう。」
「僕はできるならやめたくないと思ってる!…でも、これは許されないことだから…。みんながやめろと言うなら、僕はやめるべきだと思う。」
「いやいや、お兄さんは…「っだー!もう!」
うじうじしてるそーちゃんを見てたら、もう黙って聞いてられなかった。
ソファーから立ち上がって、ビシッと指差してやる。
「っだからー、なんでやめるとか、そーやって極端なんだよそーちゃんは!アイドルが人を好きになっちゃいけないとか、そんな法律があんのかよ!」
「いや、法律ではなく、アイドルとしてそういう契約が…。」
「契約ってなんだよ!してねーよそんなもん!俺はそーちゃんに幸せになってもらいたいの!辛い思いして諦めたりとかしてほしくねーんだよ。好きなら好きって言えよ!そんで付き合えよ!自分の気持ち無視してまでやらなきゃいけないのがアイドルなら、それこそやめちまえ!」
「…環くん。」
言ってることはめちゃくちゃだし、自分でも何を言ってるか分からない。
でも言いたいことはなんとなく伝わったのか、他のメンバーも同意するように頷いた。
「タマの言う通りだ。俺たちはアイドルだから、誰かと付き合ったりするのはファンにとっては悲しいことだと思う。でもそれで自分の気持ちを押し殺して俺たち自身が不幸になることを、きっと望んではいないはずだろ?」
「そうだぜ壮五。ファンに内緒にするって言うと聞こえは悪いかもしれないけど、オレたちは夢を届けるのが仕事だろ?プライベートと仕事をきっちり分けて考えれば、それは契約違反にはならないと思う」
「そうですね。絶対にゴシップに狙われないよう配慮すれば、お付き合いは可能だと思います。」
「…みんな。」
泣きそうな顔してるそーちゃんに、慰めるように寄り添うみんな。
この居場所を簡単に手放そうとするそーちゃんには腹が立つけど、きっとそーちゃんも悩みに悩んだ結果だと思うから許す。
「ありがとう、みんな。環くんも、僕のことを思って叱咤激励してくれたんだよね。凄く嬉しかったよ。」
「しったかぶり?よく分かんねーけど、まあ頑張れよ」
「うん、ありがとう!」
「言っとくけど、俺もみょうじさんのこと好きだから」
「へーそうなんだ。「「「…えっ?!」」」」
「ええぇーーー?!どういうことだよ?!」
「だから、俺もみょうじさんのこと好きだし」
「ちょっと待て、じゃあMEZZO"で恋のライバルってこと?!」
「っはは!」
混乱してるみんなと、あわあわしてるそーちゃんの顔が面白くて笑える。
そして俺は、モヤモヤの正体がようやく分かってスッキリしたのだった。
To be continued.
2023/1/31
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