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転校生がやってきた。
それもあの、今話題であるŹOOĻのボーカル、亥清悠だ。
初めのうちこそ周囲はざわめき、人が集まっていたが、ここは芸能人が多く通う学校である。
すぐに波は去っていき、亥清の人柄もあり、彼はいつも独りでいるようになった。
そして私はというと、そういう人を放っておけない人種だった。
『いーすーみー、お弁当食べよ』
「はあ?またおまえかよ。一緒になんか食べないって言ってるだろ」
『まあまあ、いいじゃん。本当はぼっち飯じゃ寂しいんでしょ?』
「全っ然寂しくないし!」
『そんなこと言っちゃってー。あ、早く食べないと時間なくなるよ』
「聞けよオレの話!」
『聞いてる聞いてるー』
まだぶつくさと言っているが、知らんぷりだ。
そして諦めたようで、渋々食べ始める姿に内心でこっそりとガッツポーズをする。
『今日も勝った』
「…なんの話?」
『いや~?こっちの話。あ、玉子焼き食べる?甘いやつ』
「…食べてやってもいいけど」
『うんうん、じゃあお食べ』
そしてまた渋々といった様子でひとつ玉子焼きを取っていったが、食べたあとにその口元が笑顔になったのを見逃さない。
多分彼は甘いものが好きなのは観察していてなんとなく分かったことだ。
『美味しい?』
「…まあ、悪くないんじゃない」
『よかった!それ私が作ったんだ』
「へえ、料理するんだ。意外」
『まあ多少ね』
「ふーん」
実は彼に甘い玉子焼きを食べてもらいたくて、猛特訓したことは絶対に秘密だ。
だってバレたら絶対笑われる。
『午後の授業面倒くさいよねー、サボっちゃう?』
「はあ?いいのかよ、あんた今日あてられる日だろ、出席番号」
『そうだけど、なんで私の番号知ってるの?』
「クラスメイトなんだから、それくらい知ってるし!」
『ほーーん?』
「…なんだよ!」
やば、ニヤけそう…。
だって普段から人には全く興味ありませんみたいな態度とっておいて、ちゃんと私のこと知ってくれてるじゃん。
言ったら怒りそうだから何も言わないでおこう。
『食べたあとって眠くなってきちゃうよねー』
「ここで寝るなよ、自分の席戻ってからにして」
『えーそしたら絶対起こしてくれないじゃん』
「なんでオレが起こさなくちゃいけないの!」
あーもうダメだ。
さっきから笑いを堪えるのに必死で腹筋が痛い。
なんていうか…
『亥清ってほんと、いちいち突っ込んでくれるからおもしろい』
「あんたが変なことばっかり言うからだろ!」
『…っあっはっは!』
はー苦しい。
結局我慢できずに笑っちゃったから、亥清はご機嫌ナナメになっちゃった。
だってなんかツンツンしてるのに可愛げがあるっていうか、構い倒したくなるタイプっていうか、あれだ。
尊いってやつだ。
『もうさ、好きなんだけど!私たち付き合わない?』
「…っは?!おまっ?!急に何言ってんの…?!」
『だってなんかもう好きって気持ちが止まらなくて!亥清が可愛くて仕方ないっていうか』
「…女に可愛いとか言われても全然嬉しくないんだけど」
『えーじゃあダメ…?』
「っいや、ダメっていうか…」
『…っふは』
「なんでそこで笑うんだよ!」
素直じゃない彼を振り向かせるのはなかなか骨が折れそうだ。
けどこの恋が実る日は、そう遠くないかもしれない。
fin.
2022/12/7
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