一緒に
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新曲ができたから聴いてくれと言われ、岡崎事務所にやってきた。
まだどこにも発表されていないそれを初めて聴くことができる喜びを噛みしめ、余韻に浸りながら、感動の涙を止められないでいた。
「いいよ、ユキぃ…!最高だよ!」
『やばいぃ…!もう最高過ぎてむりぃ…』
まさに骨抜きとはこのことで、まともに座っていることすらできずに崩れ落ちたが、隣にいた百くんも同じ様子だった。
「はは、さすがいとこ同士だな。二人して泣くほどよかった?」
『ひぃ…!イケメンの不敵な笑みの破壊力…!』
「ユキ、やめて…!今はもうなまえもオレも瀕死状態だから…!」
百くんと私はいとこ同士で、Re:valeが千さんと万さんの時代からのファン同士でもある。
もちろん私は今のRe:valeの大ファンでもあるが、昔からずっと千さん推しであるのは周知の事実だ。
「今回も自信作だったけど、やっぱり二人のそういう反応を見ると間違ってなかったと思えるな」
『もう最っ高で最っ強の神曲です!発売前に聴けちゃうなんて、おこがましすぎる~~~…』
「分かるよ!その気持ち…!オレも未だに夢じゃないかと思っちゃう…!」
「何言ってるんだ。モモは僕の相方だろ?」
「ユキ、イケメン…!」
『生夫婦漫才でたーーー!』
百くんのよしみでこうして仲良くさせてもらっているが、本来であればただの一ファンである自分がこうして推しと同じ空気を吸っているだなんて許されないことだ。
私は認知されずとも陰ながらに応援できればそれでよかったのに、どうしてかそれはことごとく叶わずにいた。
「ふふ。なまえ、僕に惚れ直した?」
『あばばばばば……』
「ユキってば!なまえのライフは0だって!」
「っははは!本当になまえの反応は見ていて飽きないな」
「もうっ!からかわないであげてって言ってるのに!」
千さんはこうしてよく私にファンサしては、その反応を面白がってる節がある。
心臓に悪いのでやめてほしいのだが、百くんがそうであるように、恐らく妹のような存在として認識されているようだ。
(本当に畏れ多い)
「曲もできたことだし、少し時間ができたんだ。よかったら気晴らしにドライブでも付き合ってよ」
『あ、そしたら百くんがこの前言ってた…』
「いや、それはまた今度。今日は二人で少し遠出してカフェにでも行こうか?」
『…ふたっ?!ふた、ふた…?!二人?!って?!』
「そうだよ。君と僕の、二人だけ」
むりむりむりむりむり!
推しと車内で二人きりなんて、そんなの絶対に無理!
「オッケー!楽しんできてね、二人とも!」
…どうしてこうなる。
───────────────
「ふう、風が気持ちいいね。ていうか窓そんな全開で大丈夫か?」
『はい、そうですね』
「いい天気だし、まさにドライブ日和だな」
『はい、そうですね』
先ほどからこの調子である。
推しが運転する車の助手席に座り、平然となんてしていられない私は窓をフルオープンにし、ただひたすらに前だけを見ていた。
とてもじゃないけど横顔なんて見られない。
だって見たら絶対に格好良すぎて失神する自信がある。
話しかけられた内容もほとんど入ってこずに、ロボットのように受け答えするだけで精一杯だった。
「今回の曲は、モモとなまえのことを思って作ったんだ」
『………え?!』
ビックリしすぎて、思わず千さんの方を向いてしまった。
「万がいなくなった時、音楽なんてもうやめようと思った。だけど百となまえの存在が、僕の背中を押してくれたからね。一人じゃないと思えたから。僕らを繋いでくれた奇跡を、曲にしてみんなに届けたいと思ったんだ」
なんて優しい顔をして笑うんだ────。
そんな想いを聞いてしまったら、もう涙が止まらなくて。
さっき聴いたあの曲が、また脳裏によみがえってくる。
「ずっとついてきてよ、なまえ」
あぁ、もう一生この人が好きだ。
それは確信となって、私の胸に深く刻まれた。
fin.
2022/12/7
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