ビーストの片鱗
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その日は百さん主催の運動部でフットサルがあった。
気の合う仲間達と共に汗を流したあとは、こちらもまたお楽しみの食事会へ。
芸能関係者が多いため抜かりなく個室を押さえてあり、周囲を気にせず楽しめるので少しばかり浮かれている自覚はあった。
まずは乾杯ということでお酒を注文したあと、沢山のグラスを手に店員がやってきた。
途端に視線を奪われたのは、その顔がわりと自分のタイプであったからだ。
「ははーん、さては龍ちゃん、今の店員さんのこと可愛いって思ったでしょ!」
「えぇ?!いやいや、そんなことは」
「百ちゃんの目は誤魔化せないよ!しっかり龍がロックオン!してるとこ、見ちゃったもんね!」
「まじっすか?いいじゃないっすか!連絡先とか聞いちゃいましょうよ!」
「無理だよ!そんなことしたら楽と天に怒られる」
「言うて八乙女もうちのマネージャーにちょっかい出してるし!」
「そうそう!お友達になるくらい問題ないって!」
そう言われると確かにそうかと思えてくる。
せっかくの出会いだし、連絡先くらい聞いてみようか。
ほどよくお酒が回ってきた頭では、普段よりも判断能力が鈍っているようだ。
「俺、次来たら連絡先渡してみます!」
「ヒューヒュー!龍ちゃん男前ー!」
そして勢いで渡してしまった連絡先を書いたメモ。
相手はビックリしていたけど受け取ってくれ、その日はいつもより上機嫌に食事を楽しんだのだった。
【初めまして、なまえです。昨日は連絡先を教えてくれてありがとうございました(*^^*)】
次の日にそんなラビチャが届いて、一気に昨日のことが思い出された。
やってしまった…。
いつもなら絶対にしないようなことを、酔った勢いでしてしまった。
この連絡に返していいんだろうか…。
しかしながら自分で連絡先を渡しておいて、シカトするなんてことは絶対にできない。
ここは腹を括るしかなさそうだ。
[初めまして、連絡ありがとうございます!十龍之介と言います、よろしくお願いします。]
【TRIGGERの、ですよね。お店で見てすぐに気付きました!実物もイケメンだったので。】
うん、悪い気がしない。
気になる子からイケメンと言われて嬉しくない男はいない。
自身の顔が今だらしなくニヤけているのは充分承知だ。
[ありがとう!知っていてくれたんだね。昨日は急に連絡先を渡してしまってすみません。迷惑じゃなかったですか?]
【迷惑だなんてそんな!十さんのファンだったので、凄く嬉しかったです!】
[本当?嬉しいな。よかったら名前で呼んで。俺もなまえちゃんって呼んでいい?]
【もちろんです!私も龍さんって呼びますね。】
彼女とはそれからもラビチャで頻繁に連絡をとっていた。
歌番組の俺が格好よかっただとか、ドラマの感想を送ってくれるたびに嬉しくて、もちろんファンの子達からの声も嬉しいけど、特別なものを感じていたのは事実だった。
そうして浮かれていて、つい楽屋で彼女に返信していたのが悪かった。
「龍、そんなにニヤついてスマホを見てるけど何かあったの?」
「えぇ?!」
「そういや最近、よくスマホいじってるよな。誰かと連絡とってんのか?…まさか女か?!」
「いや~?えーっと、」
「龍、嘘つかないで、白状して」
天の迫力にたじろぐ。
誤魔化しきれないと思って全てを打ち明けることにした。
「ナンパかよ!やるじゃねえか!」
「楽、馬鹿なこと言ってないで。アイドルに恋愛スキャンダルは御法度でしょ」
「分かってる!だから会ってはいないんだ!ラビチャでやり取りしているだけで…」
「はぁ?男ならビシっと決めて、デートのひとつふたつかましてこいよ!」
「本当に馬鹿なの?抱かれたい男ランキング1位だからって、調子に乗らないで」
「まっ、お子様はランク外だから仕方ないよな!」
「…潰す」
「天?!まあまあ、落ち着いて!」
「誰のせいだと思ってるの」
「俺です!すみません!」
その後も言い争う二人の仲裁をしたけれど、結局矛先は自分に戻ってきて。
最終的にはゴシップにだけは気を付けろってところで丸く収まった。
彼女への思いは大きくなるばかりだが、進展があるのはまだまだ先になりそうだ。
fin.
2022/11/18
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