まだ恋とは呼べないけれど
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『やっぱ好きだなー』
「…は?」
放課後の教室。
偶然にも一緒になった日直で、最後の仕事である日誌を一織くんの丁寧な字が埋め尽くしていく。
彼は私が届かないであろう黒板消しも率先してやってくれたし、重たい教材も運んでくれた。
お礼を言ってもなんてことないように返されたけど、さりげなくフォローしてくれた彼のおかげで今日一日の仕事は難なく終了しそうだ。
『日誌くらい、私がやっておくから先に帰ってもいいのに。お仕事とかあるんじゃないの?』
「…いえ、これも日直の仕事ですから。今日は急いで帰らなければいけない用事もないので。」
『そうなんだ』
スラスラと書かれていく字を一文字ずつ目で追っていく。
この字にも彼の性格が表れているようで、とても綺麗だと思った。
「あの…さっきの言葉、どういう意味ですか?」
ふと顔をあげた一織くんと目が合う。
『やばい、ばか綺麗なんだが』
「…はい?」
『顔面の破壊力。え、なに。アイドルの上目遣いって人を殺める力があるの?もう息苦しいんですけど』
「ちょ、何訳の分からないこと言ってるんですか!」
『待って、好きが止まらない』
「…っ!」
そこで顔面が真っ赤になった一織くん。
いつもクールな彼のこんな表情はかなりレアだ。
『…写真撮ってもオーケー?』
「馬鹿ですか!やめてください!」
普段テレビでも学校でも見ないようなあたふたした姿に、「あ、彼もちゃんと高校生なんだな」って安心した。
いつもどこか遠い存在のような気がしていたけど、こうして話していると歴とした同級生だ。
『私、一織くんが好きだよ』
「っ、…それって、ファンとしてって意味ですか。」
『うーん、今はそうかな』
「…そうですか。」
『でも、アイドルやってる和泉一織くんも好きだけど、同級生の和泉一織くんもいいなって今日ちょっと思ったんだ』
「え?」
『周りがよく見えてて、優しくて、クールに見えて本当はちょっと可愛いところがあったりして!そんな一織くんのこと、もっと知りたいって思った!』
今の私の素直な気持ちを伝えたら、彼は手で顔を隠してしまった。
アイドルだから賛辞なんていつも聞いているだろうに、慣れてないのかなって思ったらそんなところもまた可愛いって思ってしまう自分はもう手遅れかもしれない。
「私も…あなたのこと、もっと知りたいと思ったので。なまえさんって、呼んでもいいですか。」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
二人の関係は、まだ始まったばかり。
fin.
2022/11/14
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