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第七楽章



「泣いてないし。…ていうかあんた、誰だよ」

見たところ、背格好は私よりもかなり小さめの男の子。12、3歳くらいかな。

「え?あぁ、私。私はソプラノ、15歳。これでも政府組織にお勤めしてるのよ!すごいんだから」
ちょっと得意げにいってやると、少年はほんの一瞬びっくりしたような表情をしたものの、じとー、と効果音が付きそうなくらいのじとじと具合でこちらを見る。

「疑っとんの!?む~、本当なんよ!嘘やないの!」
「…田舎出身なの……?」
「いい、田舎やないし!」
「……ていうか、政府組織ともあろう輩が道に迷わないでしょ…」
さては少年、私のことを馬鹿にしているな…。もう、生意気なんだから!み、道に迷ったのは事実だし何も言い返せないんだけどさ…。

「…あんた、道に迷ったんだよね?この辺なら少しはわかるから、出来る範囲の道案内くらいはするけど」
「ほんと!?た、助かる~…。あ、ねぇ、ここってどこ…?」
少年はやれやれとでも言うように呆れた表情ではあるものの、なんとか道案内を承諾してくれた。多分だけど、悪い子ではないのかもしれない。

「デュエッタの街だよ。わかってると思うけど、北部地域。こないだは雪も降った」

なるほど、デュエッタ。…デュエッタ?

「えっ!?デュエッタって、だいぶ遠くじゃない!う、うそ…」
地図を広げて確認すると、そこは最初にいたクオラスからは結構離れた街らしかった。

「え、ちょっと。あんた地図あったのに迷ったわけ?」
「わ、悪かったわね…」

ばつが悪そうな返事をすると、それはまぁ蔑むような表情で少年は小さく「ありえない…」と呟いた。ちょっと、聞こえてんだからね!?

「っていうか、君の名前は?あと、あんたじゃなくてソプラノ、だからね!」
「…おれの名前なんてなんだっていいでしょ。それとあんたのこともあんたで十分」
「な、生意気~~!」
「………道、教えないけど」
「くっ…」
もう!道を教えてくれる(予定)恩があるから許すけど、本当に生意気すぎじゃない!?いつかのいつか、政府とかのすっごい人になってぎゃふんと言わせてやるんだから!

「ねぇ、ところであんたどこに行きたいの?それわかんないと案内も何も出来ないんだけど」
「え?あっ、そっか。そうだよね。私が行きたいのはこの街。本当は、クオラスから汽車に乗って向かうつもりだったんだけど、さすがに今からそこまで戻って乗るわけにもいかないし…。そうだな、一番近い駅までの道を教えてほしいな」

先ほどの地図を見せながら目的地を説明すると、少年は少し考えるような仕草を見せた。

「……いいよ、その駅までの道ならわかるし。ただ、その…最短ルートじゃなくてもいいかな」

「最短ルートだと、何かあるの?」
一応急いではいるのでできるなら最短ルートでお願いしたいところだが、少年にしては珍しく謙虚っぽく見えたのでなるべく優しい声色で訊ねる。


「…お祭りやってて道が混んでる」

しばらく考え込んだ後で、少年は少し怪訝そうな表情をしてそう答えた。

「お祭り!?」
勢いよく食いつくと、少年はしまった、とでも言いたげな顔をする。ふっふっふ、ソプラノはテンションがあがってきましたよ…!
「行こう、最短ルート!」

「おれ人多いのやなんだけど…」
「私がなんか美味しいの買ってあげるから!」
「あっそ…」

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