このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

rit.



……あぁ、こいつも、か。




そう言った彼は確かに冷たく、痛く、鋭い刃物のような、目をしていた。



眼差しで、彼女を、刺し殺した。滅多刺しなんかではなく、もっと酷いやつ。たとえるなら…通り魔のもつ、サバイバルナイフのような。

「…おいなんだ、セレナータ?」
私の視線に気が付いたのか、彼が鋭くこちらを睨みつける。不満があるのか、とでもいうみたいに。有無を言わせないようなその表情に、私は諦めたような顔つきをして(いるつもりで)応える。

「少し手酷すぎやしないかな、と思ったまでです。もっとも、別にそれが間違いだとも思っていません。」
「……そうか」
「そうですよ」

特に訳もなく彼をあしらい、なんとなく目を逸らす。
私たち二人はソプラノさんのことをひとまずラルシェさんに任せ、その後をゆっくりと追いかけるように屋上から降りている最中だった。彼女は気絶しているみたいだったから一旦医務室まで運ぶことになったのだ。今後のことは置いておくにしても、彼女が今現在ドミナント構成員のひとりであることに変わりはない。


「…ツィスティアさん。」

ドミナント拠点、いつもの場所。そこのドアを開けると同時に私は問うことにした。

「なんだ」
こちらのことなど見もしないまま、彼はかんたんに返す。
「………私たちは、全ての終わりを迎えたらどうするつもりなんでしょうか」


黒いソファーに彼が沈む。いつもと同じかたちに皺を作る。彼は、随分と他人行儀なんだな、と呆れたような視線を空中に放り投げる。私はその視線を受け取らないまま、次の言葉を待った。

でもその言葉がツィスティアさん自身の口から紡がれることはなく。代わりに、部屋に入ってきたのは医務室から戻ってきたラルシェさんだった。

「ただいま戻りました。…ソプラノさん、今はまだ意識が戻りませんがとりあえず医務室に寝かせてあります」

「すまないな、わざわざ。三人揃ったし今日のことについて色々話したいことがあるんだが……その前に、アリア指揮官はどこにいる、まだ不在か。あの人にも話すべきことが多いんだが」
「そういえば、確かに見当たりませんね。医務室から戻る際にも見かけませんでした。指揮官室にならいらっしゃるかもしれませんね。…行ってみますか?」
彼の問いに、私とツィスティアさんはそろって頷く。

「行ってみるか。三人で行った方が話がはやい、行くぞ」
「えぇ、そうですね」


私も彼らに続いてはい、とだけ返して後を着いていった。




私たちが弱らせてしまったあの子が起きる気配はまだ、ない。



1/2ページ
スキ