第八楽章
「うああーーーーーーんメロディアちゃん~~~!!!!!!」
電話に出るなり、僕の親愛なるソープは赤ん坊のような大声をあげた。
「うわソープうるさ……」
「ひ、ひどい!……今日な、仕事でな、めっちゃたくさんの仕事任してもらったんよ私。でもな、でも私、すぐ消耗しちゃって。ヘトヘトになってん。…筋トレだってしたんけどなぁ……もう本当…情けない、うう…」
受話器から聞こえる声はなんとも不甲斐なく、弱々しくて。すっかり意気消沈、という感じだった。
「でもソープのことだから、ちゃんと最後までやったんでしょ?えらいよ。お疲れ様。体壊したりとか、してない?」
「うん…大丈夫よ、ありがとなぁメロディアちゃん。……あ、ねぇ、私のことばっか話しちゃったね。メロディアちゃんの方の話もきかせて?」
「ん?うーん…あ、そうだ!明日ね、アルフィーネでどっか出掛けることになったんだ。場所は…多分今話し合ってる!へへ、こういうの久しぶりですごい楽しみなんだよね~…お土産良さそうなのあったら買っとくね!」
「やった!よかったなぁ、楽しんでね。私はあしたあさって、なんか重要な仕事が多いみたいでなぁ…」
「そっか。体調だけは気を付けなよ?……あとこないださ、結局忘れ物…ブローチ、直接渡しに行けなくてごめんね」
「あぁ、いいんよ!メロディアちゃんだって忙しいのやろ?」
僕とソープは、時々こうして電話で話す。ソープはあくまで政府組織の所属なので忙しいらしく、あまり長話もできないのだが。
ソープ、やっぱり声がどことなく疲れて聞こえる。大丈夫、…ではなさそうだな。
「ねぇソープ?あのさ……えっ?あ、ごめんちょっと待ってて!」
肩をとんとんと叩かれ、一旦会話を切って振り向いたところでため息を吐く。楽しい会話の邪魔をされたため、当然気分はよくなかった。
「………なんだお父さんかよ…、何?なんかあった?」
「なんだ、とはなんだ…。いや、ソプラノさんに少々訊ねたいことがあってな。少しでいい、替わってくれないか」
「はいはい…。…もしもしソープ?ごめん、ちょっとうちの指揮官が話したいーって。替わるね?今日はよーーく休むんだよ!じゃ!」
簡単な挨拶をしてから、僕はお父さんに受話器を渡した。