第八楽章
いい加減体力が底を尽いてしまいそうだった。
暴れて大声をあげる人(すなわち、先日のような裏切者さんである)をもう何人見送ってきたことだろうか。静かにすすり泣く人もいた。酷くこちらを睨みつけてきた人も何人か。
身体も精神も両方を操るのでは体力がすぐに切れてしまうだろうという理由から身体だけを操ることにしていたが、それもそれでなかなかにきついものがあった。…こう、気持ち的に。
「大丈夫です?ソプラノさん…」
「へ!?…いやいやいや、私は全然大丈夫ですよ!これくらいなんの!せっかく今日は沢山の仕事を私に任せていただいてるんですし!まだまだ頑張りますよ…!あと、何人でしたっけ…!?」
明らかに素っ頓狂な声を出してしまったことを恥じた。ちょっと台詞がつよがりさんみたくなってしまっただろうか。
「ええと…予定ではあと、10人ほど…」
申し訳なさそうに告げるセレナさんに「10人も!?」とこれまた間抜けな声をあげてしまう。
「やはりソプラノさん、そろそろきついのでは…?お休みになられてはどうでしょう」
「いやそんな!まだまだ!全然元気ありあまってますし!?こんな、こんなにげんっきぃっったい!?…い、今のはそこの小石につまづいただけ…ですので……お気になさらず…!」
「……何もありませんけど……」
うっかり足元をもつれさせる。しかもどうやら何もないところでつまづいたらしかった。……セレナさんからの視線が痛い。
「…まぁでも、疲労が溜まってしまうのも致し方ありません。午前からずっとあの作業を繰り返している訳ですし、…精神的にもきっと、おつらいことでしょう。あと少しです。私も出来る限りでお手伝いいたします、頑張りましょう」
「…うう、すみません…情けないですね、本当に。ソプラノ、頑張りますね…!」
「おいアホドジコンビ、早くしないと置いてくぞ!」
「な、副指揮官!アホドジとは失礼な!?」
「わわ、すみません!」
少し涙が出かけた所でツィスティアさんからの罵声ともとれる声が聞こえた。
…涙を出している暇なんてない。
これが、私が唯一ドミナントに大きな力として貢献出来ることなんだから。もっと…強く、しゃんとしていないと。