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第六楽章


この世界は、一体どんな終末を迎え入れるつもりなんだろうか。
眠れない頭で考える。考える?嘘だ、と思った。正確には考えていないし、どちらかというとこれは思考とかの高度な類ではなく、稚拙な幻想や想像に過ぎなかった。

私はきっと正義のヒーローなんかじゃないし、ましてや村人Aにすらなりえないんだろうなとさえ思う。とはいえ悪役というほどまで私の思考を黒が侵食しているような気もしないし、なんというかこれは、悪役の面を被ってただソファで眠っている傍観者…とかそんな感じだろうか。自分で想像してみて間抜けな絵面だ、とか思った。そもそも全員を役に当てはめようとする時点で発想が陳腐なのかもしれない。仕方ない、私の思考回路はとうの昔に眠ってしまっていたらしかった。

「セレナさん」

優しい声色に意識を呼び留められて、くるりと声のした方を振り返る。

「コーヒー、入りましたよ。…あ、イナゴの佃煮も作ってきたのでよかったらどうぞ」
「…ありがとうございます、ラルシェさん」
「お気になさらず。この佃煮、隠し味にメープルシロップをいれてみたら案外美味しくって自信作なんですよ」
「ほう…。イナゴと………メープル…………」
ごめんなさい、ちょっと背筋が氷河になりそうですラルシェさん…。
佃煮って甘めの味のものだったと思うし案外メープルシロップとの相性も良かったりするのだろうか、なんてぼんやりと考えてると副指揮官が口を開く。


「ヴィーゲンリート構成員、先日資料室で探すのを頼んでいた資料はどこだ」

「え?あぁ、今持ってます。……これで合ってますよね」
万が一別の資料と勘違いしていた時のことを思っておそるおそる差し出す。目の前の彼の表情を見る限り、不正解ではないらしかった。
「あぁ、これだ。ご苦労。………なるほどな」
「私もラルシェさんと二人で目は通しておいたんですけど、…やっぱり作戦の実行としてはそろそろ時期が近づいてるように思います」


時間は、きっともうそこまで残っていない。あと4つ。例外を除いても、あと3つ。

「おそらく、今の動向を探った感じだと長くても半年以内には残りの全部が…と言う感じです」
ラルシェさんは(あくまでイナゴの佃煮を食べながら)言う。
ツィスティアさんは考え込んでいる。雨音が静かな室内にこだました。


「…そうだな。あとはソプラノが使えるうちに出来ることをこなさなければならない。指揮官に頼めることも多いはずだ。……たとえば、今日のソプラノに席を外してもらうための会議とかな」

ラルシェさんは静かに頷く。私も、そうした。

副指揮官の表情はいたって真剣なものだった。
仮にドミナントが悪役だとして、悪役だってきっと悪役なりに真剣だ。





でも、私はどこにいる?
それだけは、どうにもまだ霧の中なような気がした。


少なくともアリア指揮官が悪役の立場なら、尚更私の立場はわからないような、そんな気がした。

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