第六楽章
沈黙、というよりかは停滞に近いかもしれない。
なんだ?なぜこんなにも空気が重い。ここに俺らを集めた当の本人はというと、考え込むようなしぐさで黙りこくっている。何か言え、何か。このまま時間を浪費しているくらいなら俺だって拠点戻ってカステラ食べたい。いやまあ今朝拠点を出た時にもフローラは(健康面としては心配しかないのだが)朝ごはんって言ってカステラ食ってたし、俺が帰るころにはもう全部なくなってるんだろうけど。この会議が終わったら帰りに買って行ってやろうかな。もちろん、組織の資金で。
つかいつまで続くんだ、この沈黙状態は。まあ仕方もないのだろうか、いくら能力が高いとはいえこの会議を仕切ると息巻いてた指揮官の少女はまだ十八歳。幼気な少女に国の平和を担わせることが可能だとは経験上とても思えない。そんな理由もあって、別段この会議を発案したアリアについて責めたりするつもりもない。腹は減ってきたけどな。
事の発端はつい一昨日。その日は、よく晴れた日だったと記憶している。
「は?……えっなんて?」
「会議です。敵対二組織のリーダーたちで」
「正気?」
「馬鹿にしてるんですか?」
「ごめん…」
憤慨したらしい彼女は整った顔をゆがめてこちらを睨みつける。条件反射的に謝ってしまう。
「実は、前々から一度くらい出来ないかと思っていたんです!ほら、お互い間接的もしくは個人的に言葉を交わすことはあっても、しっかりと対面して公式の場での会議…とかはしたことがありませんでしたでしょ?それって、ちょっと良くないなあって。もちろん、話し合いのみで事が解決するだなんて思ってませんよ、そこまでお花畑な人間じゃないですから。」
少々早口気味で話すアリアに対して、自分が多少はお花畑なことは自覚していたのか、などと水を差すようなセリフはまた彼女を憤慨させそうだったので静かに飲み下しておく。
アリアは、でも、と続けた。
「でも、一度よく話し合ってみることで何か平和への糸口が見つかるんじゃないか、って。ちょっとだけど、そんなことを思ってるんです」
後ろを向いていたアリアはこちらに向き直り、「お願いできませんか」と消え入りそうな声で呟く。まったく、困った少女だ。