第五楽章
「はあ、ほんっと、アルフィーネって横暴だよね…ッ!まじ修理費とかっ、どうしてくれんの!?」
ただでさえカステラで金カツカツなのに、と走りながらフォルテは愚痴る。
「まあ、そこは仕方ないんじゃないかな…。とりあえずフローラが危ないかもしれないんだ、急ごう」
「……そうだね」
もちろんこの状況においてアルフィーネがここを訪れないはずがなかったのは解っていたのだけれど、ここまで酷く壊されての侵入とは考えても見なかった。まあでも、よくよく考えれば仲間思いの多いアルフィーネのことだ、多少の対策くらい練っておけばよかったかな…。さすがに、フォルテも言う通り修理だけでかなりの資金を消費しそうだ。
そしてようやくフローラとアルフィーネの子のいる地下への階段に続く扉だったであろうものの前まで来た。…というのも、ここの扉も彼らによって破壊されているらしかった。ここまでの破壊技を用いるとなると、恐らくこの階段の下にいる相手はおおよそ想像がついた。
「…もう来たんだ」
「あれー、もうバレちゃった感じ?まだここに来たばっかりなんだけど。行動が速いねえ、感心感心」
落ち着いた声と、どこか気怠そうな明るい声とがうるさいくらい地下に反響した。
「やっぱりお前らだったんだね。派手にぶち壊しやがって…感心だよ、アルフィーネ副指揮官さん?」
そう皮肉気味に返したフォルテに対して彼女はにこやかな顔色を変えずに、どうもと言わんばかりの会釈をする。温暖なこの地域には不似合いな赤のマフラーが揺れる。
階段を下りると、俺はアルフィーネの二人の奥に怯えてうずくまるフローラの姿を見つけた。どう考えても戦闘向きではない彼女をここに置いておくのは危険だ。
「メトロ、ここのアルフィーネのことは僕に任せて。今から一瞬だけ時間を止めるから、その隙にフローラを別室に。……頼んだよ」
フォルテがそう言うと、空気が変わったのを感じた。
「フローラ、こっちに!!」
小走りでこっちに来たフローラの腕をしかと掴み、階段を駆け上がる。階段を全て上り切った所で再び空気が変わったのを感じた。
時が、動き出す。