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第四楽章


彼は俺が指定した時間通りに訪れた。注文していた二人分のコーヒーが届けられた後で目の前に座る彼は口を開いた。

「……で、何用かな」

熱々のコーヒーを口に含んで、飲み込む。
「お時間取らせてしまい申し訳ない。少しばかり、相談というかお伝えしたいことがありましてね。お互い対極の指揮官の立場を持つものとしては中々に重要な話かと思うので……ぜひこの時ばかりは耳を貸していただきたい、スタッガルド」

もちろん、この時のみは無礼講とでもいうのか…一時休戦だ。きっと物わかりの良い彼ならおそらくこの状況で争いを始める気などは無いのだろう。

「当方、自分の役割は別の奴に任せてきてあるから時間はあまり気にしないでくれていいぞ。…きっとこうしてこのタイミングで私を呼びつけることも予定の内なのだろうしな」
「それは助かるな。そして理解が速いようでこれまた助かる」
「そりゃあ、なんだかんだでお互い付き合いは長くなってるからな。いくら敵とはいえなんとなく判るものだよ。…あとは老人の勘ってところか、嫌なもんだ」

お互いにからからと笑いあう。

「……さて、談笑はこの程度にしてそろそろ本題に入らせてもらおう」

空気が軽く冷たく乾いたのを感じる。戦争なんてなければ、彼とはなかなかにいい友人になれたかもな、なんて思う。…まあ戦争がなければ関わる事すら無かったかもしれないけれど。ジレンマというやつか。かなしいものだ、全く。

「いや、こちら側が都合のよくなる話のようにも聞こえるから無理に信用してくれなくていい。なんていうか、忠告に近しいものだ。」
彼は頷く。

「…お宅の勢力で壊そうとしているこの国に存在する全ての教会について、少しばかり芳しくない情報を耳にしたもんでね」
彼は静かな表情でこちらを見る。


「この国の教会は、」

コーヒーはいつの間にか冷め切っていた。


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