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第三楽章



「幼馴染なんすか!?」

目の前に座る彼女は驚いた勢いでグラスをがしゃん、と倒してしまう。氷やらジュースやらが横倒しになったグラスから零れた。

「わ、レヴィさん大丈夫ですか?とりあえず拭きましょうか」
「だーから、レヴィちゃんて呼んでほしいっすよぉ」
彼女は俺からあざっすと言い布巾を受け取ると、零れたジュースたちを拭く。

「てーかびっくりっすよ!メロディア先輩とアンタ、幼馴染だったんすね…」
なんか想像できないっす、と言って彼女は笑う。レヴィさ…ちゃんに先ほどなんでメロディア先輩のことメロちゃんて呼ぶんすかーなどと訊かれたものだから答えただけなのだけど、まさかそこまで驚かれるとは。
「はい…メロちゃんとはもうあまり話せていないんですけどね。性格も前より少し鋭くなった気がします。あぁ、あと正確にはシヴォルタのメトくんも幼馴染ですよ。昔は三人でよく遊びに出掛けたものです」
そう話すと彼女は先ほどよりも驚いたような顔をして、ええーっと素っ頓狂な声をあげる。
「メトくん…て、あのなんか黄緑のカマキリみたいな、なんかひ弱そうな奴っすか!?」

か、カマキリ…。メトくん、散々な言われようですね…。

「…カマキリではないですけどね。たしかに彼は見た目としては少しひ弱そうに見えなくもないかもしれませんが、結構鍛えたりしているそうなので実際は強いと思いますよ。ついこの間イナゴ料理を御裾分けに会いに行った時も、最近夜にランニングをしていると聞きました」

たしかあの時、メトくんは「ラルは料理が上手なんだね…」とどこか苦し紛れの笑みを浮かべていたような気がする。体調でも悪かったのだろうか。レヴィさんはさっき零したジュースの残りを飲みながらへえ、と呟く。

「ていうか、そっちのシヴォルタのとアンタは結構今でも仲良くしてるんすね?3人で仲間割れした~って訳じゃあないんすか?」
「はい。メロちゃんは俺らに冷たく当たるんですけど、俺とメトくんは今でも仲良くしてますよ。…俺は、二人にも仲良くしていてほしいと思ってますよ、ずっと」
そっすか…と言って頬杖をつきながら彼女は何かを考えるような素振りを見せた。

「まぁ、自分にも何か出来ることあったら協力するっすよ!こうしてアンタと話すのは楽しいし、末永く仲良くしたいっすしね!」
嬉しい上に心強い言葉だ。さすがはメロちゃんの後輩ですね。
「ありがとうございます。…では何かあったらレヴィさんにお願いすることにしますね。その時はぜひ、よろしくお願いします」
「だから、レヴィちゃんっすよ~!さんじゃないっす!」
しまった、またちゃん呼びするのを忘れてしまった。なかなか慣れないものだ。

「すみません…。ところで、彼との連絡はつきましたか?」
あぁ、と言って彼女は何かを思い出した様な表情をする。
「それなんすけどね、なんかちょうど先輩が居場所を突き止めたらしくて。今向かってるらしいっす。まあ自分はこれからアルフィーネ拠点に戻って待機~って動きになるんすけど…。」

それはよかった、と安堵する。どうやらレヴィさんたちの仲間が昨晩から一人行方不明になっているらしかった。今ここのカフェで彼女と世間話をしているのも、彼女が彼はドミナントの方に行ってないか、もしくは見かけてないか、と捜索をするにあたっての情報提供を求めてたまたま近くにいた俺に声を掛けたからである。生憎、俺は何の情報も持っていなかったのだけれど。

「よかったです。さすがはメロちゃんですね。…そろそろお開きにしますか?」
「そうっすね!アンタにも感謝してるっすよ~。時間さえあれば、たまにはまたこうやって話したいもんっすね~」

また少し他愛無い会話をしながら店の外に出て、俺たちは次の約束をした後でそれぞれの帰路に就いた。


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