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アウフタクト

かの演目はそろそろだろうか。


思考し、夢想の中に揺蕩いながら一縷の光さえ閉ざしてしまうように下を向く。何もない。虚無、虚無、虚無。


しかしその虚無は所詮、イミテーションでしかない。望んで創り上げた虚無なのだ。もちろんイミテーションではあるが、綺麗で明るいそれを創りだすことだって無理ではない。「明るい」を好まないから創ろうと思わないというだけの話だ。




明るいのは、嫌いだ。




まあ「普通」という理論においてそれは本来好まれるものらしいが、生憎「普通」は私が理解しがたいものの一つであった。



しかし、「普通」など事実的虚無でしかないのではないだろうか。


事実的虚無である「普通」に殺される筋合いなどどこにだって存在しない。
普通ではないという理由だけであてられる文句に興味はない。


どうやら明るいそれを好む「普通」信者らは例外を排除することに躊躇などないらしかった。

しかし私からしたら「普通」信者こそ例外でしかない。

これはあくまで例外たちの真似であるが、実行してみようと思う。






ここでパッ、とライトがステージを照らし出す。



拍手喝采、満員御礼のこの音楽会!
ああなんて、なんて素晴らしい旋律なのだろうか。


本日の最終演目は、かの有名な「トロイメライ」。

さあ皆様、ここからが本番で御座います!
途中退席及び退場は厳禁で御座います、ご容赦ください。


優秀な貴方は、残された時間にはおそらくお気づきなのでしょう。


貴方が否定したこの旋律で貴方の首を絞める、終わらせる。
愛し子たちよ、反撃の狼煙をあげろ。

演目はまだ終わらない。




さあ、終末を始めようか。


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