魔法科1

荷物を纏めてソファに腰掛け、室内を見回す。
胸を占めるのは、課題だった魔法を修得出来た安堵感と…一筋の、名残惜しさ。
この部屋で兄と過ごすのは今日が最後。短い期間ではあったけれど、兄の事を知る機会も得た。
二人の距離がまた少し、縮まったと感じるのは自分だけではない筈で。
目を閉じると、眠れずに羊を数えた夜や、差し出したお茶を笑顔で受け取って貰えた夕暮れが眼裏に甦り、そこはかとなく擽ったさを覚える。
「…そろそろ時間だ」
耳に滑り込む苦笑混じりの声。
いつの間にか隣に座っていた兄の肩へ、頭を預けて微睡んでいた自分に気付き…顔を真っ赤に染めて硬直した。

2017年8月15日-16日
9/10ページ
スキ