魔法科1

ベッドに腰掛けて手を開く。
握り込んでいた未開封のリップクリームは、ハンドクリームとお揃いの香り付きで。
「…もし、これを使っていたら。お兄様は」
脳裏を過ぎる眼差し。
耳元に落とされた声音と、触れた指先の温もりが甦る。
早鐘を打つ胸を抱え、火照る顔を枕へ埋めた。


初出・2017年4月24日
6/10ページ
スキ