魔法科1

「お兄様」
鏡へ向けて呼び掛ける。
「た、たつやさ、ん」
瞬く間に頬が赤くなった。
深く息を吸い込み、鼓動を鎮めて顔を上げる。
「…達也、さま」
熱を帯びた吐息に声が乗る。
心を、想いを、祈りを込めて。唇に馴染むまで何度も繰り返す。
自然に名を呼べる様になる日が来ると信じて、掌を胸へ押し当てた。


初出· 2017年2月26日
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