公安に異動したらスパダリ彼氏が豹変した
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絞め技をかけてきた降谷零からなんとか逃げ出したところで、休憩、と一言告げられて、部屋の隅に腰を下ろす。
汗をタオルで拭きながら、タンクトップの裾をめくってさっき足蹴りが入った脇腹をのぞく。スパーリングを始めてから何度も打撲は受けているが、今回のはなかなかに痛い。防げないのは私だけど、彼も容赦ない。
対して降谷零をチラ見すれば、汗こそかいてるものの、斜め前2メートルくらいの場所でなんて事のない顔してスポドリを飲んでいる。…ほんと体力オバケなんだよなぁ…。
……こうやって見てる分には、かっこいいのに。
好きな人、なのに。
わざと冷たくされてる筈だけど、数々の毒発言からもはや本気で嫌われてるんじゃないかと思うほどの態度ゆえに、時々ハッとする。
もしかして本当に、ずっとこのままなんじゃないかと。
同じ職場じゃ付き合い続けることはできないと彼は言っていた。
私だって職場恋愛なんて面倒だと思うけど、何よりお互いの顔が見れて、仕事の中身も把握できるのはとても安心できることだと思う。
結局、降谷零の真意がどこにあるのかわからないのだ。
そんなあっさり別れを告げるなんて、実は大した関係じゃなかったのかなって思わなくもない。
「来栖、
意地になった私も悪いけど。言葉が足りてなさすぎるんだろうな。
毎日顔を合わせてたって、実際スパーリング中は目なんか合わせないし。
いやほんとこれ、修復可能なんだろうか?
誰か教えて。相談できるような人いないけど。
「おい来栖」
「ひゃぁ!?」
唐突に腕に当てられた何かに驚いて振り向けば、呆れたような、困ったような表情の降谷さんがいた。私の隣にしゃがんで、手には氷嚢。これか…。
「脇腹、だいぶ赤くなってるだろ。冷やした方がいい」
「……」
私のために、用意してくれたんだろうか。
目を見れない私。まっすぐに見てくる降谷さん。
なんてぎこちない空気…。
言葉の出ない私にぐいと氷嚢を渡して、それから、と降谷さんは続ける。
「もう少しやるつもりだったけど、やめとく。スパーリングも今日で終わり。明後日から捜査に組まれるそうだから、帰ってよく休めよ」
「……え、あ、うん…」
「結構厳しめにやったけど、考えてみたら来栖に拳銃持たせたら俺でも勝てない気がするな」
そう言って、綺麗に笑うものだから。
さっきまでとは別人みたいに。
周りの喧騒が、一瞬消えた。
くちびるを噛んで思わず氷嚢で顔を覆った。
絶対、顔が赤くなってる。もちろん暑さではなく、別の意味合いで。
冷たくするか、優しくするかどっちかにしてほしい。
そんな笑顔見せられたら、名前で呼んでよって思ってしまうのに。
「お、おい…そんなに痛かったか?」
全然空気読めない心配してくるし。ましてや首を曲げて覗き込まないでほしい。
ジェットコースターみたいな感情の上がり下がり。
私ってこんなに、降谷零の笑顔に弱かったっけ。
「っ大丈夫です。ありがとうございました」
口元を隠したまま礼を述べれば、彼は満足したように自分の荷物をまとめに行った。