公安に異動したらスパダリ彼氏が豹変した
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課長とともにフロアに戻ってきた降谷さんは、平然と、かつ恐ろしいほど静かに自席についた。
まだ警備局に来て数日だが、流石にわかる。
今この空間、ものすごくピリピリしている。
主に降谷さんの放つオーラのせいで。
一体どんなことを言ったんだ、課長。
そんな中、(天然とも言えるほどおおらかな)課長がニコニコと私と降谷さんの後ろに立ち。
課のメンバー全体に聞こえるように言う。
「降谷も来たことだし、どうだ、今日来栖の歓迎会やるか?来栖さえ都合が良ければ」
新参者としては嬉しいお誘いだ。
飲み会のような場でのコミュニケーションは、社会人として生き抜くために実はすっごく大事なのだ。
もちろん空いていますと答え、風見さんをはじめとする皆さんもぜひと言ってくれた。
だがしかし。
「申し訳ありませんが、私は所用がありますので」
たった一言。
この降谷零という人は、どうしても私と距離を置きたいらしい。
もういっそ潔すぎて。
嘘かほんとか知らないが、普通に傷つきますよ…。
「そうかそうか、まあ降谷は何かと忙しいからな!
その代わり今度来栖に酒でも奢ってやれよ〜」
この課長…いつか降谷さんから刺されないか心配だ…。
*
結局、降谷さんはすぐにまた警察庁を出て行った。
その後開いてもらった歓迎会は、降谷さんがいる時のオフィスからは想像できないほど和やかに進んでいた。
自分がこれまで担当した事件を話せば、皆さんとても関心を持って聞いてくれた。
ヤ○○さんの車にわざとぶつけたり、陣地をめぐる抗争にちゃっかり参加したり、そんな普通に考えたらヤバイ話ばかりだからか。
「来栖さん、実はレディースですか…?」と恐々聞かれたのはいまいち納得いかないけれど。
たしかに、愛車はごりごりのハーレーです。
宴もたけなわになった頃。
ずっと聞き役に徹していた課長がボソリと呟く。
「降谷がこういう場に参加しないの、結構珍しいんだよなぁ…」
そういうの、主賓の前で言わない方がいいはずですよ、と思ったのは心にしまって。
ふぅん…やっぱり私が相手だからか。
「彼女さんと大事な約束でもあったのかもしれませんよ。ここのところ働きづめでしたでしょうし」
…なに?
「そうだよなぁ。降谷も人の子だもんなぁ」
いやいやいやいや。待て待て。
動揺を抑えて、
「降谷さんってやっぱり彼女いるんですか?学生の頃も相当モテてたみたいなんですよねー」
ミーハー精神を表に出して、話に食いつく。
お酒もたくさん飲んでるし、無礼講と受け止めてくれるだろう。
「けどな、降谷はもうずっと一途だからな」
「、そうなんですか?」
一途、とは。
「変わらないんだよ全然。車も、服も、髪型も。身につけてるものだって、ものは変わっても好みは変わらない。ずっと彼女からもらったもの使ってるんだろうって、な」
あれ、こんなこと俺が話して大丈夫だった?なんて付け加えてたけど、私の脳内、それどころじゃない。
ほんの一瞬、どきりとした。
彼女からもらったもの、って。
彼女、って。
私…だっけか…。
「ま、俺の気のせいかもしれないけどなあ〜」
さすがに彼女=私なんて答えには辿り着いていないだろうが……この課長、のんびりしてるように見せて、実は人の10倍は人間観察が得意なのかもしれない。
むしろ、それでこそ公安の課長なのだろう。
でも…、降谷さん、そんな風に見えてたんだ。
「…意外、ですね」
そんな陳腐な感想しか出てこなくて、少しまずかったかなと思う。
何が意外なんだって感じだし。
正直、職場のメンバーが交際関係を知っていたのにも驚いた。
降谷さんがどんな風に彼女の存在を匂わせたのかはわからないけど。
いや。今はそれよりも。
もしかしたら私の視線一つで、この課長には色々筒抜けなのか…?
そうだとしたら、ますます降谷さんにはあまり登庁しないでいただきたい。
頼みます。
心の中で、今は地球一周分くらい距離感のある降谷さんに念じておいた。
神様もどうかよろしく。アーメン。