公安に異動したらスパダリ彼氏が豹変した
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降谷さんの家を出たあの日から、じっくり考えた。
公安に来るなら別れるとまで言われたけれど。
やはり異動の話を受けることにして、上にもその旨を伝えた。
私には務まらないだなんて言われて、プライド傷つけられてムキになった面もある。
でも、好きな人が身を挺して国のために働いているのに、自分だけ安全なところで後方事務をするのも、なんだか納得いかないのだ。
あれから2週間。一度も連絡は取ってない。
私の足はいま、喫茶ポアロに向かっている。
今日、上が私の内示を出した。
これで完全に私の警備局入りが決まったのだ。
ついでに言うならば、警備局の次長に対面した際、ご丁寧にも「警備企画課に配属だ。エース降谷と同じラインだぞ」と(サムズアップとともに)歓迎のお言葉を受けてしまった。ちょっと頰が引きつったのは秘密だ。
憂鬱だ。なんだか右腹がちょっと痛い。
気のせいにしておく。
そんんこんな考えていたら、ポアロにたどり着いてしまった。
一体どんな顔をされるか分かったもんじゃないが、直属のラインになる以上、挨拶をするしかない。
憂鬱な気持ちを押し込んで、ポアロのドアを開ける。
出迎えた降谷さんは、私の顔を見るなりーー
「……お一人様ですか」
ちょっ…。ものすごい嫌そうな顔をされた。
いらっしゃいませも忘れるほど来てほしくなかったんですか。
いや、歓迎できないから言えなかったのかな…。どちらでも同じようなものか。
カウンターに近い奥の席に通されれば、ほかに客は見当たらないようだった。初めて来たけど、この時間は空いてるのかしら。
「オススメのメニューがこちらです。お決まりになりましたらお呼びください」
「じゃぁアイスコーヒーでお願いします」
「かしこまりました」
私の顔などこれっぽっちも見ない徹底ぶりである。
この前相当な態度を取られたから、一応予想はできていたけど…。
(元)になりかけているとはいえ、彼氏がこの感じとは、堪えるものがある。
はぁ…。
コーヒーマシンが動く音と氷とグラスがぶつかる音。もういっそこの音だけ聞いていたい…。
家ではいつもココアを作ってくれてたのに…。
もしかしてスパダリって、スパルタダーリンの略だった?
現実逃避むなしく、降谷さんーー…安室さんが感情の読めない顔でアイスコーヒーを持ってきた。
やばいやばい、負けたらいけない。
「お待たせいたしました」
「内示が出ました。明後日から正式に着任します」
「…あれほど言ったのに、断らなかったんですね」
ひどく冷めた目線と声色に怖気付きそうになる。普通にビビる。
いくら私に降谷さん程の実力がないからって、ここまでマイナス評価されるのもどうなんだろう…。
言ってはいないが、出世ルートを断ったくらいなのに。
きっと彼は、現場が向いてないのだから総務課に行けばよかったのに、と本気で思ってるんだろう。
安室さんとやらはそれきり何も言わず、伝票を置いてさっさとカウンターに下がっていった。
ていうか、なんでそんなに私の評価低いんだ?
…好きな人とはいえ、こんな態度を取られるとさすがに腹が立ってくる。
実はあまり得意じゃないアイスコーヒーを一気飲みして、ぴったりのお代を机に置いて。何も言わずに店を出た。
結局、安室透としてしか接してくれなかった。一応、栄転なんだけどな。
本庁に戻ろう。
誰も褒めてくれないなんて、そんなこと気にしてられない。
デスクの引越し準備をしなければ。