公安に異動したらスパダリ彼氏が豹変した
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来栖さんは、ギギギ、と音がつきそうな動きで声のした方…降谷さんの顔を見た。
降谷さんは書類を見つめたまま微動だにしない。さっきの発言、ちょっと笑いながら言っていたのは気のせいだったのだろうか。
今度は僕の方を見る来栖さん。
幻聴?って顔に書いてあるけど、僕にも聞こえていましたよ。
降谷さんの電話が鳴ったのをいいことに、僕は来栖さんに聞く。
「…そういう映画があるんですか?」
「え、あ、はい。女性が超クールに強盗するんです。衣装も派手で…」
その映画が好きなのか、降谷さんのことは忘れたのか、嬉しそうに強盗方法を教えてくれた来栖さん。あなた警察官では。
でも、来栖さんの例えが映画の話だと降谷さんは知っていたのか。
普段の態度からは腑に落ちないが、ついつい会話に入ってしまったというところだろうか。
降谷さんの電話が終われば、紙をめくる音とタイピングの音だけが響くオフィス内。
今度は、不意に誰かの携帯が震え、着信を告げた。
マウスを動かす手を止めて携帯をポケットから取り出した来栖さん。
音の発信元は彼女だったらしい。
立ち上がって、廊下まで足早に向かいながら応答をするのだが
「社長〜、もしかして今日いらっしゃるんですかっ?」
「!?」
聞いたことのないような高めの声に、課員全員が顔を上げて来栖さんの方へ振り返る。
「えっほんとですか?じゃあ気合い入れてお化粧しちゃおうかなぁ〜」
衝撃だ。
これまでホステスとしての彼女を見たことはなかったが。
これはもう絶対、語尾にハートマークがついている。
目の前の後輩は何が起きたかわからない顔をして瞬きを繰り返し。
隣の降谷さんは、来栖さんの背中を見つめたまま驚きの表情で固まっている。
警察官の中でも優秀な者が集まっているはずのこのオフィスも、来栖さんの変わりように壊滅状態である。
職場を戦慄させた来栖さんが、完全にフロアから出ていくと。
「い、今の…」
「…ああいう…感じなんですね…」
まともな言葉が出てこない後輩達。
それもそのはず。
セールストークだと誰しもがわかっている。
分かってはいるのだが…
正直言って…
「可愛いですね…」
ぽつり呟いたのは課の最年少。
そうだな。今全員が同意したよ。
あ、いや、降谷さんを除いて。彼は机に肘をついて眉間を指で押していた。
演技ってすごいなと謎の感動に包まれた中。来栖さんが慌てて戻ってきた。
あたかも何事もなかったかのように作業し始めた男たちに気付くことはなく、来栖さんはラップトップの電源を切り、書類をキャビネにしまい施錠。ジャケットと荷物を手にし帰り支度をあっという間に済ませ。
「お先に失礼します!」
僕たちのよく知る、聞きなれたトーンでそう言いフロアを出て行った。
全員でぽかんと彼女の退庁を見送った後。
「来栖さんが接客してくれるなら、通っちゃう男の気持ちわかる気がする…」
「それな」
「余計なこと考えてないで仕事をしろ」
来栖さんのホステス姿を想像して、降谷さんに怒られる後輩数名。
フロアの温度が3度ほど下がったのは気のせいではないはず。
結局僕まで必要以上に仕事を振られた。
職権乱用ですよと言いたいところだが、鬼の警視・降谷零を目の前にしてそんな愚かな真似をできるものは一人もいない。
来栖さんのことが絡むと何かと不機嫌になるの、降谷さん気づいてますか。