公安に異動したらスパダリ彼氏が豹変した
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「受け答えもしっかりしてるし、何より美人さんだもの。来週から一緒に働きましょう。名前はどうする?私が考えてしまってもいいかしら?」
無理のない範囲でかつ怪しまれない程度にキャラ設定をして履歴書を書き、美容院に行って髪を染め、トントン拍子で取り付けた面接。
地方大学を出た後上京し、一度は会社勤めをしたものの学生の頃にガールズバーで働いていた経験と話好きの性格を活かしたくて…直近までキャバクラで働いていて……大嘘であるが、大学を出たことと会社勤めの経験があることは事実。真実の混じった嘘は気付かれにくいから。
初めてお会いしたママさんは、部屋の装飾すべてが霞んでしまうような、たいそう美人な方だった。
開店前の人のいない店内。
おおよそHP掲載の写真通りの内装である。
机を挟んで私と向かい合ってソファに座る彼女は、綺麗な姿勢を崩さない。
私の履歴書(偽)を机に置き、両手を膝の上で重ねる。
夜会巻きは似合っているし、着物だって一級品だろう。年齢は不詳だ。泣きぼくろがポイントの美魔女である。
ママの提案にうんうんと頷けば
「じゃあ…レイちゃん、かな」
「ぶっ」
「あら」
せっかくご好意で付けてもらった名前がまさかのレイ。いや、レイという名前が悪いわけじゃないんだけど。
男女どっちも使う名前だもんな…。
吹き出した私に、人差し指を口元にあて「嫌だった?」と色っぽく問うママ。何をされても素敵ですね。
「とんでもないです。綺麗なお名前をありがとうございます」
「それならよかったわ。レイちゃん、来週からよろしくね」
とびっきりの笑顔で個人ロッカーの鍵を渡されて。これは数多の男が落ちるわけである…。
*
ダブルワーク生活は、順調に進んでいた。
レイと名乗ることにもすぐに慣れた。
以前(潜入捜査で)キャバクラで働いていました、という私の経験から、ママはそれなりに信頼してくれているようで。
入ってまだ日は浅いのに、お話も上手なのよ、とお得意様にも私を紹介してくれていた。
東京の一等地にあるこのクラブには、お金と権力を持て余しているような客が多い。
一度本当に驚いたのは、現警視庁捜査一課長が客として現れた時である。
彼のテーブルを担当したわけではないのに、バックヤードへ戻ろうと通りかかった私に彼は声をかけた。
「あれ?君どこかで会ったことある?」
「…もう、口説き方がお上手ですね?」
ナンパの決まり文句として処理したけれど、正直心臓が飛び出そうだった。
なぜ面識があるのかと言えば、私が入庁後すぐの頃に配属された警察署に、彼も一時期勤務していたのである。
部署は違ったが、やはりお互いうろ覚えではあったようで。
人類の一度見た顔は忘れない本能がこんなところで厄介になるとは。
そのときは、「私猫アレルギーで…あのお客様のそばにいるとくしゃみが…ヘックショーン!」とかなんとか言って、距離を置かせてもらった。
優しいママは私の言葉を信じて、くしゃみで乱れた私の髪を直しながら「今後もレイちゃんは他のお客様を担当してもらうことにするわね」と言ってくれた。本当いい人だから、ちょろい私は真剣に売上貢献しようと決意した。
それ以外は特に問題なく。
昼間は登庁して事務を進め、スーツを着替えたらここに来てまた衣装に着替えて接客をする…
時々降谷さんが隣席に現れて、時々視線を感じるが、無視して気づかないふりをして早めに退庁している。
彼も彼で、密輸案件を別方面で探っているらしい。
本当は事務を家でできたら楽なのだけど、警備草案なんて機密情報の塊を庁外に持ち出せるわけがないので仕方ない。
以前のキャバクラは、お店の人間関係があまり好ましくなかった。
でも今は、衣装替えと化粧が大変なくらいで、夕方からお酒が飲めて、どやされることも暴力もないし(ここ重要)、ママのおかげでキャスト同士の仲も良好だし。なんて平和なんだろうと思う日々である。
お客様からは蝶よ花よと扱ってもらえるし、お給料もいい。
お話だって楽しい。毎日ドレスで着飾れる。
私って実は警察官よりホステスが向いてるのでは…?
もしかして:転職