公安に異動したらスパダリ彼氏が豹変した
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降谷さんとの鬼の特訓を終えて。
7連勤は流石に堪えたので一日代休を取って再び登庁した私は、朝から自分のデスクで会員制高級クラブのHPを物色していた。
何を隠そう、今度の捜査で潜入する予定の店を調べているのである。
登庁して早々課長に別室に呼び出され、捜査詳細を伝えられて、降谷さんが言ってたのはこれかと思った。
今日はその降谷さんはいないようで、今のところ心の安寧は保たれている。
あんな風にいきなり優しくされて、昨日一日あの笑顔が頭を離れなかった。
家でゴロゴロしつつもちゃんと食事は取ろうと自炊するものの、昼ご飯ではめんつゆと醤油を間違え、夕飯ではみりんと酢を間違え。
我ながら動揺しすぎ・ぼーっとしすぎである。
今朝歯磨き粉と洗顔を間違えそうになったので、一度本気で自分の頰を叩いた。
泣きそうになる程痛かったし、自分の力の強さに引いたが、ようやく目が覚めた気がしている。
仕事に私情を持ち込むべきじゃない。
今は結果を出して認めてもらうことを第一に考えなければ。
実は、夜のお店への潜入はこれが初めてではない。
女手の少ない警察では、こういった仕事の需要がままあるのだ。
協力者を作るという手もあるが、シチュエーションによっては万一ということもあるし、今回は私が行うことになった。
捜査対象は、化学兵器密輸組織の幹部。
計画は、捜査対象となる人物がよく通う店にホステスとして潜入し、重要情報を得るというもの。
いたってシンプルである。
あまり人の入れ替わりが多くない組織のようで、組織自体に潜入することは不可能という判断ゆえ外堀から埋めていこうと今回クラブへの潜入が選ばれた。
HPを眺める。
会員制だけあって、各業界の大物も来ていたりするのかもしれない。
淡いオレンジを基調とした落ち着いた空間、天井から下がるはシャンデリア。
キャストの写真も化粧が濃すぎず、清潔感がある。
なお、ホステスとして潜入するなんて顔は大丈夫なの?と思う方もいるかもしれない。
隣で作業をしていた風見さんは、私のラップトップが写すキャスト一覧を興味深そうに覗き込むなり
「来栖さんなら、売り上げにも貢献しちゃいそうですね」
「うーん…奇跡の塩基配列のおかげですねっ!」
「え、塩基配列…」
両親はいたって普通の外見だが、その良いところだけを受け継いだ私は、まぁそこそこに美人と言われる部類なのだ。
遺伝子に感謝である。
謙遜して話が長引くのも面倒なので、大抵おどけて返答することにしている。
風見さんは若干引いていた。
公安の人って、というよりも警察官って、有事には怖いけど普段は本当穏やかだったりするよね。
キャストの写真を見ていて、ふと気づいた。
「私、髪染めた方がいいと思いますか?」
「そうですね…しばらく登庁されないのであれば…」
…ですよね。
風見さんは私の顔面を見てしんみりと答えた。
入庁年で言えば私の方が3つも下なのだが、風見さんは敬語で接してくれる。
私も降谷さんもキャリアで入っているがゆえに、準キャリの人より昇進が早いためである。
さて、設定を考えて履歴書を書いて、美容院の予約をしようかな。
腕をまくった私の元に、課長が現れる。
「来栖、こっちも頼む」
こっち?
「警備草案、細かいとこまでチェックされていると好評だったぞ。密輸の件と並行して承認まで進めてくれ」
一応褒め言葉を加えてくれていたが、有無を言わさず赤ペンの入った草案を返却し、自席に戻っていく。
元の担当者はまだまだ社会復帰できそうにないのか…。
昼間は警察庁、夜は高級クラブ。
完全なダブルワークですやん。
確かに昼間は時間あるけど。
ってことは
「茶髪まずくない…?」
「…まぁ金髪の人もいますし…」
「あっ、そうでしたね…」
風見さんと顔を見合わせて。
庁内で目立ちたくないし、せめて暗めの茶色にしようと誓った。