鬼滅
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⚠️【出逢い】の続きです
鬼「もう終わりか?つまらんのう」
貴「はぁ……はぁ……五月蝿いっ……」
鬼と遭遇し、小一時間程経ったが、憐は鬼を倒せずにいた。
貴(こいつ、一つ一つの動作が私よりも早い……!追いつけても当たるのは腕や脚だけで、頸まで届かない!)
一見なんてことは無い普通の鬼だと思っていた憐は、自身の想定よりも早いスピードで動き回る鬼に苦戦を強いられていた。泣いていた少年から離れる為に、態と遠くまで走り出し、縦横無尽に動き回る。その動きに順応した鬼は難なく憐の技を交わし、刃物ような長く鋭利な爪で、憐の身体に細かな傷をつける。引き裂かれた腕や脚からは血を流している状態。しかも最終日近い事もあり、続けての戦闘により、疲労が見え始めていた。
貴(一刻も早くこの鬼を殺さなければ……私の体がもたない!)
そう自覚すればするほど、刀を振るう腕や俊敏に動いていた脚も鈍い動きとなる。そして遂に疲労が限界を達し、膝や手を地面に着いてしまった憐。その様子に好機を狙っていた鬼は、ゆっくりと近づく。
鬼「もういい加減楽になれ!諦めて俺の血肉となるがいい!」
貴「はぁっ……はぁっ……だ、誰が!……貴様……なんかに……!」
強気な言葉とは裏腹に、動かない体。せめてものの抵抗として鬼を睨みつける。だけどもうこれ以上は動けそうもない。
鬼「口は達者だが、行動が伴っていないぞ。さぁ、これで終いだぁ!!」
貴「くっ……」
自分に向かって振り下ろす鬼の爪を見て、自身の最期を悟った憐は、覚悟を決めて痛みに身構えていた。
────── ズドーンッ!!
突如耳を劈くような轟音が背後から響いた。
「─── 雷の呼吸 壱ノ型……」
鼓膜を揺らす轟音の後に、微かに聞こえた独特な呼吸音と辺り一帯に広がっている地鳴り。
彼女は現状を理解出来ず瞬きをする……何故なら……
「──── 霹靂一閃」
蒲公英頭の少年が彼女を護るように立っていた。彼は腰をおとし、前傾姿勢となり、低く構えていた。自身の腰にささっている鞘に手がのびている。
貴(っ!?さっきの男の子?!いつから、どこから出てきたの……?!それに今のは……〝呼吸〟だった!しかも〝雷の呼吸〟って……)
─── 多くの流派の中でも基礎となっている五大流派の一つ、雷の呼吸……
数多ある呼吸の中でも、突出して素早い技が多い呼吸法。あまりの速さに、その呼吸を見た者は、まるで落雷にあったかのように思うらしい。彼女は過去に読んだ資料の中に、そのような記述があったことを思い出す。彼の周りにバチバチと稲光が見え、雷を纏っているように感じた。
その雷の呼吸を受けた鬼は、目を見開いていた。
鬼「そ、そんな……馬鹿な……脆弱な小僧に、この俺が……?!」
鬼の頸に赤い線が入る……そこから血が勢いよく溢れ出し、ボトッと頸が地面に落ちた。そして身体と共に消滅していった。
鬼の消滅を見届けた少年は振り返る。自らしゃがみ込み、膝を着いていた憐の頬へと手を伸ばした。伸ばされた手を素直に受け入れている憐。自分に泣いて助けを求めていた時と明らかに別人な様子に彼女は混乱し、されるがままだった。心拍数が上がっている、自分でも鼓動の音が聞こえていることに憐は気づいていた。そんな彼女の様子を他所に、瞳を閉じたまま眉間に皺を寄せる。
「ごめん……俺がもっと早く決断できていたら、君がここまで傷を負うことはなかった」
貴「っ!?貴方のせいではありません!これは未熟な自分のせい……なのでお気になさらず」
声色からも後悔しているように聞こえた憐は慌てて否定する。
貴(一体どういう原理なの?目を開けている訳では無いのに、見えているということ?それとも悲鳴嶼様のような盲目でありながら、感覚が鋭くはたらき、まるで見えているかのように動けるの?)
彼に対して疑問は尽きないが、先ずは言うべきことがあると思い直し、自ら立ち上がる。
貴「貴方が来てくれたおかげで、鬼を倒すことが出来ました。助けて頂きありがとうございました……!」
恐らく自分一人だけでは倒せなかった鬼、その鬼を雷の呼吸法で倒していた金髪の少年。今でも信じられないが、最初出会った時、鬼に対し怯え、大声で泣き叫んでいた。そこを助けた訳だが、もはやその助太刀も要らなかったのではと思うくらい、一瞬で鬼を葬り去っていた。……本人は凄く弱いと豪語していたが、とんでもない強さを秘めていたという事になる。……少なくともこの少年に助けられた憐は、彼への印象を見直していた。
一方彼女の言葉を受けて、膝を着いていた少年も立ち上がった。今迄の人生、数多の女の子に出会ってきたけれど、こんな情けない自分に優しくしてくれた、見放さず助けてくれた女の子は、彼女が初めてだ。
生まれつき耳が良い自分は、普通の人には聞こえない〝音〟が聞こえていた。その〝音〟を注意深く聞くと、その者の感情まで分かってしまう。……この事実を知られた者には気味悪がられ疎まれた。だけど自分は、信じたいものを信じた。例え騙されていると分かっていても、相手を信じ続けた。好いた女の為に借金までして、身を粉にして働いたものの、その思いは報われることなく、騙され続けた。そんな所を救ってくれたのが今の自分の師範だった。
幸い、その師範は、この特殊体質にも、自分の情けない部分も理解してくれている。……まぁ自分の事を疎ましく思っている兄弟子もいるが、ともかく……
─── 出逢って間もない俺を、君は助けてくれた……
─── 泣き喚いていた俺を見ても見放さなかった……俺の意志を尊重してくれていた……その時にはもう……完全に〝落ちていた〟
彼女が鬼と相対した時、激しい怒号のような音が聞こえていた。鬼に対して計り知れないほどの憎悪を抱いていることが自然と分かってしまった。
でもその音は次第に落ち着きを見せる……自分と話している時の彼女の音は、凛としていて川のせせらぎのような清らかな音を奏でていた。こんなにも優しく美しい音をしている人間に出会ったのは初めてだった。音からも彼女が嘘偽りなく本心で言っていた言葉だと分かる。前後の音の違いに、一瞬戸惑いを覚えた……しかし、どちらも彼女が発している音に変わりは無い。なら、どちらも真実である。故に戸惑う必要などないと、彼は判断した。
─── 金髪の少年、雷の呼吸継承者、我妻善逸は自分を迷いなく助けてくれた少女、如月憐に対して無意識に言葉を紡ぐ。
善「───君は……俺が守る……」
バタンッ!
貴「……えっ?」
その言葉と同時に前方に倒れた。とうに彼の体力は限界を超えていた。それでも尚立ち上がったのは、憐への感謝と、敬意と……密かに生まれた〝想い〟の為……しかし、そんな彼の想いを知らない憐は、いきなり倒れた善逸に対して、素っ頓狂な声をあげた。
貴「だ、大丈夫で…………寝てる?!」
心配して駆け寄ってみれば、意味深な事を呟いた彼は気持ち良さそうに眠っていた。その様子にどっと疲れが押し寄せる。張り詰めていた糸がプツリと切れたように座り込む。
貴「……貴方が守るべきものは他にあるのよ」
鼻提灯垂らして、今も気持ち良さそうに寝ている彼に僅かに眉間に皺を寄せる……そして長く息を吐いた。
貴「……全く、こんな無防備に寝ていて、鬼や悪人に襲われでもしたらどうするの?
でももうすぐ夜は明ける……しょうがない人ね」
憐は眠っている善逸を背負い、近くの樹木にもたれかけさせた。太陽が昇る迄の間、昏昏と眠る彼の傍を片時も離れず、守っていたという……───。
太陽が昇り、朝日が善逸を照らし始めた頃、彼は目を覚ます。
善「あれ?!俺生きてる?!なんで?!?!いつの間にか鬼もいない?!太陽が昇ったから?!それに……あ、あの子もいない?!?!」
忙しなく辺りを見回すが、それらしき人影はない。ほんの先刻まで聞こえていた心地良い音色はもう聞こえなくなっていた。
善「きっとあの子が鬼を倒してくれたんだ。また俺を助けてくれた……」
初めて出会った時、鬼に襲われていた自分を助けてくれた麗しい少女。月が弧を描くように彼女は空を舞いながら、見事な剣裁きで鬼を倒した。その姿に心奪われたのは事実……しかし、あの時よりも〝想い〟は強く、もう引き返せない程に膨れ上がっていた。
────── もう一度君に会いたい……俺を助けてくれた優しき音を持つ君に……
善「……あ〜〜っ!!俺あの子の名前聞いてない!!」
悲痛な大声が山の中に溶けていく。彼が行く道は早々に前途多難な始まりを見せていた。
鬼「もう終わりか?つまらんのう」
貴「はぁ……はぁ……五月蝿いっ……」
鬼と遭遇し、小一時間程経ったが、憐は鬼を倒せずにいた。
貴(こいつ、一つ一つの動作が私よりも早い……!追いつけても当たるのは腕や脚だけで、頸まで届かない!)
一見なんてことは無い普通の鬼だと思っていた憐は、自身の想定よりも早いスピードで動き回る鬼に苦戦を強いられていた。泣いていた少年から離れる為に、態と遠くまで走り出し、縦横無尽に動き回る。その動きに順応した鬼は難なく憐の技を交わし、刃物ような長く鋭利な爪で、憐の身体に細かな傷をつける。引き裂かれた腕や脚からは血を流している状態。しかも最終日近い事もあり、続けての戦闘により、疲労が見え始めていた。
貴(一刻も早くこの鬼を殺さなければ……私の体がもたない!)
そう自覚すればするほど、刀を振るう腕や俊敏に動いていた脚も鈍い動きとなる。そして遂に疲労が限界を達し、膝や手を地面に着いてしまった憐。その様子に好機を狙っていた鬼は、ゆっくりと近づく。
鬼「もういい加減楽になれ!諦めて俺の血肉となるがいい!」
貴「はぁっ……はぁっ……だ、誰が!……貴様……なんかに……!」
強気な言葉とは裏腹に、動かない体。せめてものの抵抗として鬼を睨みつける。だけどもうこれ以上は動けそうもない。
鬼「口は達者だが、行動が伴っていないぞ。さぁ、これで終いだぁ!!」
貴「くっ……」
自分に向かって振り下ろす鬼の爪を見て、自身の最期を悟った憐は、覚悟を決めて痛みに身構えていた。
────── ズドーンッ!!
突如耳を劈くような轟音が背後から響いた。
「─── 雷の呼吸 壱ノ型……」
鼓膜を揺らす轟音の後に、微かに聞こえた独特な呼吸音と辺り一帯に広がっている地鳴り。
彼女は現状を理解出来ず瞬きをする……何故なら……
「──── 霹靂一閃」
蒲公英頭の少年が彼女を護るように立っていた。彼は腰をおとし、前傾姿勢となり、低く構えていた。自身の腰にささっている鞘に手がのびている。
貴(っ!?さっきの男の子?!いつから、どこから出てきたの……?!それに今のは……〝呼吸〟だった!しかも〝雷の呼吸〟って……)
─── 多くの流派の中でも基礎となっている五大流派の一つ、雷の呼吸……
数多ある呼吸の中でも、突出して素早い技が多い呼吸法。あまりの速さに、その呼吸を見た者は、まるで落雷にあったかのように思うらしい。彼女は過去に読んだ資料の中に、そのような記述があったことを思い出す。彼の周りにバチバチと稲光が見え、雷を纏っているように感じた。
その雷の呼吸を受けた鬼は、目を見開いていた。
鬼「そ、そんな……馬鹿な……脆弱な小僧に、この俺が……?!」
鬼の頸に赤い線が入る……そこから血が勢いよく溢れ出し、ボトッと頸が地面に落ちた。そして身体と共に消滅していった。
鬼の消滅を見届けた少年は振り返る。自らしゃがみ込み、膝を着いていた憐の頬へと手を伸ばした。伸ばされた手を素直に受け入れている憐。自分に泣いて助けを求めていた時と明らかに別人な様子に彼女は混乱し、されるがままだった。心拍数が上がっている、自分でも鼓動の音が聞こえていることに憐は気づいていた。そんな彼女の様子を他所に、瞳を閉じたまま眉間に皺を寄せる。
「ごめん……俺がもっと早く決断できていたら、君がここまで傷を負うことはなかった」
貴「っ!?貴方のせいではありません!これは未熟な自分のせい……なのでお気になさらず」
声色からも後悔しているように聞こえた憐は慌てて否定する。
貴(一体どういう原理なの?目を開けている訳では無いのに、見えているということ?それとも悲鳴嶼様のような盲目でありながら、感覚が鋭くはたらき、まるで見えているかのように動けるの?)
彼に対して疑問は尽きないが、先ずは言うべきことがあると思い直し、自ら立ち上がる。
貴「貴方が来てくれたおかげで、鬼を倒すことが出来ました。助けて頂きありがとうございました……!」
恐らく自分一人だけでは倒せなかった鬼、その鬼を雷の呼吸法で倒していた金髪の少年。今でも信じられないが、最初出会った時、鬼に対し怯え、大声で泣き叫んでいた。そこを助けた訳だが、もはやその助太刀も要らなかったのではと思うくらい、一瞬で鬼を葬り去っていた。……本人は凄く弱いと豪語していたが、とんでもない強さを秘めていたという事になる。……少なくともこの少年に助けられた憐は、彼への印象を見直していた。
一方彼女の言葉を受けて、膝を着いていた少年も立ち上がった。今迄の人生、数多の女の子に出会ってきたけれど、こんな情けない自分に優しくしてくれた、見放さず助けてくれた女の子は、彼女が初めてだ。
生まれつき耳が良い自分は、普通の人には聞こえない〝音〟が聞こえていた。その〝音〟を注意深く聞くと、その者の感情まで分かってしまう。……この事実を知られた者には気味悪がられ疎まれた。だけど自分は、信じたいものを信じた。例え騙されていると分かっていても、相手を信じ続けた。好いた女の為に借金までして、身を粉にして働いたものの、その思いは報われることなく、騙され続けた。そんな所を救ってくれたのが今の自分の師範だった。
幸い、その師範は、この特殊体質にも、自分の情けない部分も理解してくれている。……まぁ自分の事を疎ましく思っている兄弟子もいるが、ともかく……
─── 出逢って間もない俺を、君は助けてくれた……
─── 泣き喚いていた俺を見ても見放さなかった……俺の意志を尊重してくれていた……その時にはもう……完全に〝落ちていた〟
彼女が鬼と相対した時、激しい怒号のような音が聞こえていた。鬼に対して計り知れないほどの憎悪を抱いていることが自然と分かってしまった。
でもその音は次第に落ち着きを見せる……自分と話している時の彼女の音は、凛としていて川のせせらぎのような清らかな音を奏でていた。こんなにも優しく美しい音をしている人間に出会ったのは初めてだった。音からも彼女が嘘偽りなく本心で言っていた言葉だと分かる。前後の音の違いに、一瞬戸惑いを覚えた……しかし、どちらも彼女が発している音に変わりは無い。なら、どちらも真実である。故に戸惑う必要などないと、彼は判断した。
─── 金髪の少年、雷の呼吸継承者、我妻善逸は自分を迷いなく助けてくれた少女、如月憐に対して無意識に言葉を紡ぐ。
善「───君は……俺が守る……」
バタンッ!
貴「……えっ?」
その言葉と同時に前方に倒れた。とうに彼の体力は限界を超えていた。それでも尚立ち上がったのは、憐への感謝と、敬意と……密かに生まれた〝想い〟の為……しかし、そんな彼の想いを知らない憐は、いきなり倒れた善逸に対して、素っ頓狂な声をあげた。
貴「だ、大丈夫で…………寝てる?!」
心配して駆け寄ってみれば、意味深な事を呟いた彼は気持ち良さそうに眠っていた。その様子にどっと疲れが押し寄せる。張り詰めていた糸がプツリと切れたように座り込む。
貴「……貴方が守るべきものは他にあるのよ」
鼻提灯垂らして、今も気持ち良さそうに寝ている彼に僅かに眉間に皺を寄せる……そして長く息を吐いた。
貴「……全く、こんな無防備に寝ていて、鬼や悪人に襲われでもしたらどうするの?
でももうすぐ夜は明ける……しょうがない人ね」
憐は眠っている善逸を背負い、近くの樹木にもたれかけさせた。太陽が昇る迄の間、昏昏と眠る彼の傍を片時も離れず、守っていたという……───。
太陽が昇り、朝日が善逸を照らし始めた頃、彼は目を覚ます。
善「あれ?!俺生きてる?!なんで?!?!いつの間にか鬼もいない?!太陽が昇ったから?!それに……あ、あの子もいない?!?!」
忙しなく辺りを見回すが、それらしき人影はない。ほんの先刻まで聞こえていた心地良い音色はもう聞こえなくなっていた。
善「きっとあの子が鬼を倒してくれたんだ。また俺を助けてくれた……」
初めて出会った時、鬼に襲われていた自分を助けてくれた麗しい少女。月が弧を描くように彼女は空を舞いながら、見事な剣裁きで鬼を倒した。その姿に心奪われたのは事実……しかし、あの時よりも〝想い〟は強く、もう引き返せない程に膨れ上がっていた。
────── もう一度君に会いたい……俺を助けてくれた優しき音を持つ君に……
善「……あ〜〜っ!!俺あの子の名前聞いてない!!」
悲痛な大声が山の中に溶けていく。彼が行く道は早々に前途多難な始まりを見せていた。
