鬼滅
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
⚠️【邂逅】の夢主、我妻善逸落ち
⚠️原作軸、出会い編
⚠️何でも良い方向け
私の目の前にその人は現れた。この時代には珍しい桜色と緑色を混ぜ合わせたような髪色を持つ女性で、しなやかに伸びている細い腕、豊満な体、異性同性関係なく魅了するような愛らしい顔……それなのに、その人はただただ……強かったのだ……。
「──── 今助けるからね!恋の呼吸、壱ノ型…」
私の家族を襲っていた化け物……後に〝鬼〟と呼ばれていた化け物を、変わった形をした刀で倒した女性、甘露寺蜜璃さんとの出会いから、私の人生は大きな変化をとげた。
────────────────────────
あれから少しして、私は窮地を救ってくれた女性、甘露寺蜜璃さんの元で一緒に生活するようになった。家族を殺されて天涯孤独の身となった私を受け入れてくれた蜜璃さん。凄く優しい人で、とても強く、綺麗な人で、鬼殺隊と呼ばれる鬼を狩る集団の隊士だった。現在メキメキと力をつけ、あっという間に〝柱〟という最上位の階級で活躍するようになった。そんな強くて優しい人に助けて貰えて、私は何と幸福なのだろう。
鬼殺隊に入る人達の多くは、鬼によって家族、友達、恋人等大切な人達を、無慈悲にも奪われた者達が殆どだ。例に盛らず私もその一人で、大切な家族を殺されて鬼への恨みが生まれた。あんな生物……この世に生かしていてはいけないと強く思った私は、蜜璃さんに自分も鬼殺隊に入りたいことを告げた。
すると蜜璃さん基師範は、私を継子にしてくれて鬼を狩るための稽古をしてくれた。その稽古は決して楽ではなく、辛く厳しくて、何度か心が折れそうになるもその度に、あの日家族を奪われた事を思い出しては復讐心を奮い立たせて稽古に励んでいた。
師範と過ごして2年が過ぎた頃、鬼殺隊の入隊試験、〝最終選別〟が行われる時期がやってきた。師範の元でひたすらに稽古を続けていた私は、師範の許可でようやく参加することが出来た。
貴「それでは師範、行ってまいります」
甘「うん、行ってらっしゃい!憐ちゃんならきっと鬼殺隊に入れるわよ!」
貴「はい、ありがとうございます!必ずや生き残り、師範の元へ帰ってきます……!」
最終選別は、7日間藤襲山で生き残ればいいというもの。しかし、この藤襲山には何体か鬼が潜んでおり、その鬼を掻い潜って生き残らなければならない過酷な試験だったのだ。
でも私はその最終選別に心が踊っていた。
過酷だろうと、何だろうと……何だってやってみせる。何の罪もない優しい人達だった私の大切な家族を殺した化け物……〝鬼〟という生物を、私は絶対に許さない……
そんな思いでここまでやってきたのだから……
山の中に入り、待っていたのは数々の鬼達。鬼を見たのは、あの日以来……再度相見えた時、僅かに腕が震えた。脚も竦み、恐怖に苛まれたが、すぐに頭を振りかぶり刀に手をかける。
私は何のためにここまで来たのか……それは鬼という化け物を残らずこの世から排除する為でありそして、もうこれ以上鬼のせいで悲しむ人を失くす為に、私は鬼殺隊に入ると決めたのだから……やれ、如月憐……ここで立ち止まるな!
貴「─── 恋の呼吸 壱ノ型 初恋のわななき!」
恋柱の師範から教えて貰った呼吸法、恋の呼吸で鬼を仕留めていく。最初師範から教わった時、私に扱えるのかと心配したが、師範からは「体が柔らかい憐ちゃんなら大丈夫よ!それに、そのうち〝恋〟についても分かるようになるわ!」と言われて、実際にやってみたらそこまで時間がかからずに習得出来た。生まれつき体が柔らかかった事に初めて感謝したものだった。
貴「いける……私でも鬼を殺せる!」
今までの努力は無駄ではなかったと、より一層自信がついた。師範のようにうねる刀ではない為、恋の呼吸を行うには工夫が必要だが、私自身柔軟の体で、縦横無尽に飛び回れる体躯に恵まれたおかげで、この呼吸を使いこなせている。ただ何となく……違和感はずっとあったけれど、気にせず遭遇する鬼は容赦なく頸を撥ねた。
最終選別に挑んでから6日が経った。遭遇する鬼を1匹残らず葬っているせいか、疲労が流石に溜まってきていた。自分の弱点をあげるなら、体力の無さだろう。この手の必勝法としては、余計な体力は消費せず温存して生き残る事だと思う。
何か秀でている訳でもないのに、自分を襲ってくる鬼だけではなく、襲われている隊士候補の人達を救う為にも刀を振るった。助けた人達にお礼を言われたけれど、私としては当然の事をしたまでである。鬼によって悲しむ人を減らす為に私は鬼殺隊に入りたいのだ。この世から鬼を排除する為なのだから、鬼に襲われている他者を助けるのは必然である。
その助けた人の中に、師範と同じようにこの時代には珍しい髪色を持つ人がいた。この暗闇には目立つ明るい髪色、野に咲く蒲公英のような鮮やかな金色の男の子だった。
「ひゃぁあああっ!!お、お、鬼だぁあああ!!怖い怖い怖い怖い!!助けてぇえええ!!だ、誰か〜〜!!お、俺を助けてぇええええ!!」
大声を上げて、泣き叫んでいた。ジリジリと後ずさっていたけど、背中に樹木が当たり、いよいよこの世の終わりみたいな顔をしていた。
鬼「ギャハハハ!!コイツは良い……お前みたいな雑魚でも、ご馳走だからな!早速食ってやるぜ!!」
「いぃいいいいやぁああああ!!」
鬼は容赦なく、迫ってくる。彼は鬼に背中を向けて、木にしがみついて大泣きしていた。このままだとこの少年は鬼に殺されてしまう!そうなる前に助けなければ……。
────── 柄に手をかけ、一気に刀を抜きながら走る
迷いは無い……何のためにこの場にいるのか思い出せ。泣いている彼の横をすり抜け、一気に飛び上がる。くるりと回り、走ってくる鬼の頸目掛けて、高速で刃を動かし、細かく斬撃を打ち込む。
貴「─── 恋の呼吸 弐ノ型 懊悩巡る恋!」
刻まれた鬼の体は細かくなり頸も落ちた。
鬼「ぐわぁあああ!!こ、こんな女に……」
頸を斬られた鬼は負け惜しみのような言葉を吐いている。女という生物を舐め腐っているのだろう……その鬼の態度に顔を顰める。
貴「私如きに頸を斬られてしまう貴様のような雑魚は死んで当然だ。地獄の業火に焼かれ、犯した罪を償え」
消滅しかけている鬼に吐き捨てる。鬼は私の言葉を聞いてより苦しみながら消えていった。それを見て、刀を鞘にしまう。今回の最終選別にて判明した事がある。
……どうやら私は鬼を見ると、通常よりも気分が高揚し、我を忘れて行動してしまうらしい。今まであの頃以外に本物の鬼と対峙したことはなかった。師範に教えて貰った呼吸法、〝恋〟……〝恋愛〟というものすらよく分からず、無縁だった自分に扱えるのかと思ったが、鬼を見た時心の底からフツフツと湧き上がるこの思い……
────── やっと鬼 を、この手で殺せる……
思わず口角をあげていたのだ。
(……これが〝胸の高鳴り〟というものですね、師範!)
師範がよく感じているという胸の高鳴り、所謂〝キュン〟というもの……同一のものとは思えないが近いものだろうと結論付けて、師範の呼吸の真髄を理解していた時に、突然体が傾いた。
ドサッ!
貴「?!な、何……?」
気づいた時には地面に倒れていた。体が重い……自分の体に何かのっているみたいだ。少し視線を下に向けると、黄色い頭が私の胸元に顔を埋めていた。
貴「っ!?……誰だ貴様は!?」
「ぐぉっへぇ?!?!?!?」
先程木にしがみついて、泣き喚いていた少年が今度は私の体にしがみついていたのだ。理解が追いつかなくて暫く固まってしまったが、我に返って力いっぱい脚を蹴り上げた。
「痛ったぁああああい!!酷いよぉおおお!!お、お腹蹴られた〜っ!!」
貴「当たり前だ!いきなり女の体に抱き着く男がいるか!」
蹴りをくらった黄色い少年は、私に抱きついていた体を起こし、瞳を輝かせ、喜色満面な笑みを浮かべて話し始めた。
「めちゃくちゃ美人なのに、おっかない所も良い!!あ、ありがとう!君は命の恩人だよぉおおお!!」
……何なのこの人。蹴られたのに嬉しそうにしてて、少し不気味だった。
「爺ちゃんに最終選別に行ってこいなんて言われた時は、無理だ!!絶対死ぬわと思ったけどこんなに綺麗で優しい子に出逢えるなんて!!これは運命だよね?!爺ちゃんの厳しい稽古もこの為にあったんだ!!俺達は何れ出逢う運命だったんだよ!!しかもこんな弱い俺を君は助けてくれた!!もうこれは結婚するしかないよね?!?!良いよね!!でへへへぇ〜幸せだぁああああ!!」
……話が通じなさすぎる。どうしてそんな考え方に到れるのか甚だ疑問だった。もう最終日に近い日にちまで生き残っている意味を考えると、このように誰かに助けられながら生き残っている幸運な者なのか、もしくはただ弱そうに見せているだけで、本当は強者なのか……どちらにしろ、別の意味で恐怖を感じる。早々に立ち去った方が良さそうだ。
貴「……ゴホン。とりあえず怪我がなくて良かったです。元気そうなので、これで私は失礼致しますね」
何事も笑みを浮かべ、当たり障りなく対応すれば上手くいく。今迄の人生から得た経験を生かして、そして憧れのしのぶ様のような対応を見せれば、私のさっきの蛮行も許されるだろう。まぁ、私もやりすぎたと思うが、見ず知らずの女に抱き着くこの人にも非はある。さっさと退散しようと少年に背を向けた瞬間、背中に走る衝撃。
貴「っ!?」
「駄目駄目駄目!!俺を置いていかないでよぉおおお!!俺!!すっごく弱いんだよぉ……今みたいに君に助けて貰えなきゃ死んでたんだ!!見捨てないでよぉおお!!」
自身の腹に回る腕……これ以上進めないように力を込められている。剥がそうと思えば剥がせそうだが、振り返って彼の表情を見ると、大きな瞳に大粒の涙をポロポロと流している姿があり、放っておくと後味が悪い。彼に腕を離すよう掴むも、嫌々と首を横に振られて大声で叫ばれる。
貴「分かった!見捨てないから!!だから落ち着いて……」
耳元で叫ばれると耳が死ぬ……それくらいの音量だ。そうすると、当然……
鬼「こりゃまた生きのいい獲物が2匹もおる。しかもそのうちの1匹は、見目麗しい女子じゃ!こりゃ余程美味であろうなぁ……」
どこからともなく鬼はやってくる。あれだけ大声で叫んでいたら、鬼に場所を知らせているようなものである。
「ひぇええええ!!お、鬼だぁあああ!!まただよ!!今度こそ絶対死ぬわ!!俺もう無理だよぉ……」
相変わらず涙を零しながら泣き言を漏らす蒲公英頭の少年。……何故彼はここまで鬼に怯えながらも最終選別に来ているのか。鬼殺隊に入りたくて来たのではないのか……まだ何も分からない……この人の名前ですら今だ私には分からない。
貴「……貴方がどんな理由で刀を持ち、この最終選別に来たのか……そもそも貴方の名前すら、私は知らない。貴方の事を何も知らない私だけれど……」
「!?」
貴「逃げたいのなら、逃げなさい。貴方が鬼を怖いと思うのも、逃げたいと思うのも何も間違ってはいない。それで逃げたとしても、私は貴方の事を責めたりも幻滅したりもしない……自分の命がかかっているのだから、そう思うのは普通なんです……」
「でも!き、君は……」
貴「……私も正直恐れがないとは言いません。多少なりともあります。でも、それ以上に私は、鬼の殲滅を望んでいる。理不尽に、軽々しく、娯楽のように失われていく命が、これ以上あってはならないの……」
己の恐怖心に打ち勝ち、ここに立っている。私の答えは彼を満足させられただろうか。……少なくとも、泣き止んでもらう事には成功したみたいだ。
鬼「ごちゃごちゃ何を話しておるのだ。どうせこれから死にゆく身なのだから、無意味だ」
鬼は自慢気に鋭利な爪を見せながら、ジリジリと近寄ってくる。もうお喋りする暇はなさそうだ。再び鞘から刀を抜き出す。
貴「でももし、鬼と相対する勇気があるのなら、刀を抜くことが出来るのなら、一緒に戦って欲しい……。一緒に人を助けられる鬼殺隊に入ろうよ」
背後の彼に少し視線を送り、再び前を向いた。痺れを切らした鬼が襲いかかってくる。私も応戦する為、走り出した。
「……お、俺は……」
少年は投げかけられた言葉を胸に、拳を握りしめた。
⚠️原作軸、出会い編
⚠️何でも良い方向け
私の目の前にその人は現れた。この時代には珍しい桜色と緑色を混ぜ合わせたような髪色を持つ女性で、しなやかに伸びている細い腕、豊満な体、異性同性関係なく魅了するような愛らしい顔……それなのに、その人はただただ……強かったのだ……。
「──── 今助けるからね!恋の呼吸、壱ノ型…」
私の家族を襲っていた化け物……後に〝鬼〟と呼ばれていた化け物を、変わった形をした刀で倒した女性、甘露寺蜜璃さんとの出会いから、私の人生は大きな変化をとげた。
────────────────────────
あれから少しして、私は窮地を救ってくれた女性、甘露寺蜜璃さんの元で一緒に生活するようになった。家族を殺されて天涯孤独の身となった私を受け入れてくれた蜜璃さん。凄く優しい人で、とても強く、綺麗な人で、鬼殺隊と呼ばれる鬼を狩る集団の隊士だった。現在メキメキと力をつけ、あっという間に〝柱〟という最上位の階級で活躍するようになった。そんな強くて優しい人に助けて貰えて、私は何と幸福なのだろう。
鬼殺隊に入る人達の多くは、鬼によって家族、友達、恋人等大切な人達を、無慈悲にも奪われた者達が殆どだ。例に盛らず私もその一人で、大切な家族を殺されて鬼への恨みが生まれた。あんな生物……この世に生かしていてはいけないと強く思った私は、蜜璃さんに自分も鬼殺隊に入りたいことを告げた。
すると蜜璃さん基師範は、私を継子にしてくれて鬼を狩るための稽古をしてくれた。その稽古は決して楽ではなく、辛く厳しくて、何度か心が折れそうになるもその度に、あの日家族を奪われた事を思い出しては復讐心を奮い立たせて稽古に励んでいた。
師範と過ごして2年が過ぎた頃、鬼殺隊の入隊試験、〝最終選別〟が行われる時期がやってきた。師範の元でひたすらに稽古を続けていた私は、師範の許可でようやく参加することが出来た。
貴「それでは師範、行ってまいります」
甘「うん、行ってらっしゃい!憐ちゃんならきっと鬼殺隊に入れるわよ!」
貴「はい、ありがとうございます!必ずや生き残り、師範の元へ帰ってきます……!」
最終選別は、7日間藤襲山で生き残ればいいというもの。しかし、この藤襲山には何体か鬼が潜んでおり、その鬼を掻い潜って生き残らなければならない過酷な試験だったのだ。
でも私はその最終選別に心が踊っていた。
過酷だろうと、何だろうと……何だってやってみせる。何の罪もない優しい人達だった私の大切な家族を殺した化け物……〝鬼〟という生物を、私は絶対に許さない……
そんな思いでここまでやってきたのだから……
山の中に入り、待っていたのは数々の鬼達。鬼を見たのは、あの日以来……再度相見えた時、僅かに腕が震えた。脚も竦み、恐怖に苛まれたが、すぐに頭を振りかぶり刀に手をかける。
私は何のためにここまで来たのか……それは鬼という化け物を残らずこの世から排除する為でありそして、もうこれ以上鬼のせいで悲しむ人を失くす為に、私は鬼殺隊に入ると決めたのだから……やれ、如月憐……ここで立ち止まるな!
貴「─── 恋の呼吸 壱ノ型 初恋のわななき!」
恋柱の師範から教えて貰った呼吸法、恋の呼吸で鬼を仕留めていく。最初師範から教わった時、私に扱えるのかと心配したが、師範からは「体が柔らかい憐ちゃんなら大丈夫よ!それに、そのうち〝恋〟についても分かるようになるわ!」と言われて、実際にやってみたらそこまで時間がかからずに習得出来た。生まれつき体が柔らかかった事に初めて感謝したものだった。
貴「いける……私でも鬼を殺せる!」
今までの努力は無駄ではなかったと、より一層自信がついた。師範のようにうねる刀ではない為、恋の呼吸を行うには工夫が必要だが、私自身柔軟の体で、縦横無尽に飛び回れる体躯に恵まれたおかげで、この呼吸を使いこなせている。ただ何となく……違和感はずっとあったけれど、気にせず遭遇する鬼は容赦なく頸を撥ねた。
最終選別に挑んでから6日が経った。遭遇する鬼を1匹残らず葬っているせいか、疲労が流石に溜まってきていた。自分の弱点をあげるなら、体力の無さだろう。この手の必勝法としては、余計な体力は消費せず温存して生き残る事だと思う。
何か秀でている訳でもないのに、自分を襲ってくる鬼だけではなく、襲われている隊士候補の人達を救う為にも刀を振るった。助けた人達にお礼を言われたけれど、私としては当然の事をしたまでである。鬼によって悲しむ人を減らす為に私は鬼殺隊に入りたいのだ。この世から鬼を排除する為なのだから、鬼に襲われている他者を助けるのは必然である。
その助けた人の中に、師範と同じようにこの時代には珍しい髪色を持つ人がいた。この暗闇には目立つ明るい髪色、野に咲く蒲公英のような鮮やかな金色の男の子だった。
「ひゃぁあああっ!!お、お、鬼だぁあああ!!怖い怖い怖い怖い!!助けてぇえええ!!だ、誰か〜〜!!お、俺を助けてぇええええ!!」
大声を上げて、泣き叫んでいた。ジリジリと後ずさっていたけど、背中に樹木が当たり、いよいよこの世の終わりみたいな顔をしていた。
鬼「ギャハハハ!!コイツは良い……お前みたいな雑魚でも、ご馳走だからな!早速食ってやるぜ!!」
「いぃいいいいやぁああああ!!」
鬼は容赦なく、迫ってくる。彼は鬼に背中を向けて、木にしがみついて大泣きしていた。このままだとこの少年は鬼に殺されてしまう!そうなる前に助けなければ……。
────── 柄に手をかけ、一気に刀を抜きながら走る
迷いは無い……何のためにこの場にいるのか思い出せ。泣いている彼の横をすり抜け、一気に飛び上がる。くるりと回り、走ってくる鬼の頸目掛けて、高速で刃を動かし、細かく斬撃を打ち込む。
貴「─── 恋の呼吸 弐ノ型 懊悩巡る恋!」
刻まれた鬼の体は細かくなり頸も落ちた。
鬼「ぐわぁあああ!!こ、こんな女に……」
頸を斬られた鬼は負け惜しみのような言葉を吐いている。女という生物を舐め腐っているのだろう……その鬼の態度に顔を顰める。
貴「私如きに頸を斬られてしまう貴様のような雑魚は死んで当然だ。地獄の業火に焼かれ、犯した罪を償え」
消滅しかけている鬼に吐き捨てる。鬼は私の言葉を聞いてより苦しみながら消えていった。それを見て、刀を鞘にしまう。今回の最終選別にて判明した事がある。
……どうやら私は鬼を見ると、通常よりも気分が高揚し、我を忘れて行動してしまうらしい。今まであの頃以外に本物の鬼と対峙したことはなかった。師範に教えて貰った呼吸法、〝恋〟……〝恋愛〟というものすらよく分からず、無縁だった自分に扱えるのかと思ったが、鬼を見た時心の底からフツフツと湧き上がるこの思い……
────── やっと
思わず口角をあげていたのだ。
(……これが〝胸の高鳴り〟というものですね、師範!)
師範がよく感じているという胸の高鳴り、所謂〝キュン〟というもの……同一のものとは思えないが近いものだろうと結論付けて、師範の呼吸の真髄を理解していた時に、突然体が傾いた。
ドサッ!
貴「?!な、何……?」
気づいた時には地面に倒れていた。体が重い……自分の体に何かのっているみたいだ。少し視線を下に向けると、黄色い頭が私の胸元に顔を埋めていた。
貴「っ!?……誰だ貴様は!?」
「ぐぉっへぇ?!?!?!?」
先程木にしがみついて、泣き喚いていた少年が今度は私の体にしがみついていたのだ。理解が追いつかなくて暫く固まってしまったが、我に返って力いっぱい脚を蹴り上げた。
「痛ったぁああああい!!酷いよぉおおお!!お、お腹蹴られた〜っ!!」
貴「当たり前だ!いきなり女の体に抱き着く男がいるか!」
蹴りをくらった黄色い少年は、私に抱きついていた体を起こし、瞳を輝かせ、喜色満面な笑みを浮かべて話し始めた。
「めちゃくちゃ美人なのに、おっかない所も良い!!あ、ありがとう!君は命の恩人だよぉおおお!!」
……何なのこの人。蹴られたのに嬉しそうにしてて、少し不気味だった。
「爺ちゃんに最終選別に行ってこいなんて言われた時は、無理だ!!絶対死ぬわと思ったけどこんなに綺麗で優しい子に出逢えるなんて!!これは運命だよね?!爺ちゃんの厳しい稽古もこの為にあったんだ!!俺達は何れ出逢う運命だったんだよ!!しかもこんな弱い俺を君は助けてくれた!!もうこれは結婚するしかないよね?!?!良いよね!!でへへへぇ〜幸せだぁああああ!!」
……話が通じなさすぎる。どうしてそんな考え方に到れるのか甚だ疑問だった。もう最終日に近い日にちまで生き残っている意味を考えると、このように誰かに助けられながら生き残っている幸運な者なのか、もしくはただ弱そうに見せているだけで、本当は強者なのか……どちらにしろ、別の意味で恐怖を感じる。早々に立ち去った方が良さそうだ。
貴「……ゴホン。とりあえず怪我がなくて良かったです。元気そうなので、これで私は失礼致しますね」
何事も笑みを浮かべ、当たり障りなく対応すれば上手くいく。今迄の人生から得た経験を生かして、そして憧れのしのぶ様のような対応を見せれば、私のさっきの蛮行も許されるだろう。まぁ、私もやりすぎたと思うが、見ず知らずの女に抱き着くこの人にも非はある。さっさと退散しようと少年に背を向けた瞬間、背中に走る衝撃。
貴「っ!?」
「駄目駄目駄目!!俺を置いていかないでよぉおおお!!俺!!すっごく弱いんだよぉ……今みたいに君に助けて貰えなきゃ死んでたんだ!!見捨てないでよぉおお!!」
自身の腹に回る腕……これ以上進めないように力を込められている。剥がそうと思えば剥がせそうだが、振り返って彼の表情を見ると、大きな瞳に大粒の涙をポロポロと流している姿があり、放っておくと後味が悪い。彼に腕を離すよう掴むも、嫌々と首を横に振られて大声で叫ばれる。
貴「分かった!見捨てないから!!だから落ち着いて……」
耳元で叫ばれると耳が死ぬ……それくらいの音量だ。そうすると、当然……
鬼「こりゃまた生きのいい獲物が2匹もおる。しかもそのうちの1匹は、見目麗しい女子じゃ!こりゃ余程美味であろうなぁ……」
どこからともなく鬼はやってくる。あれだけ大声で叫んでいたら、鬼に場所を知らせているようなものである。
「ひぇええええ!!お、鬼だぁあああ!!まただよ!!今度こそ絶対死ぬわ!!俺もう無理だよぉ……」
相変わらず涙を零しながら泣き言を漏らす蒲公英頭の少年。……何故彼はここまで鬼に怯えながらも最終選別に来ているのか。鬼殺隊に入りたくて来たのではないのか……まだ何も分からない……この人の名前ですら今だ私には分からない。
貴「……貴方がどんな理由で刀を持ち、この最終選別に来たのか……そもそも貴方の名前すら、私は知らない。貴方の事を何も知らない私だけれど……」
「!?」
貴「逃げたいのなら、逃げなさい。貴方が鬼を怖いと思うのも、逃げたいと思うのも何も間違ってはいない。それで逃げたとしても、私は貴方の事を責めたりも幻滅したりもしない……自分の命がかかっているのだから、そう思うのは普通なんです……」
「でも!き、君は……」
貴「……私も正直恐れがないとは言いません。多少なりともあります。でも、それ以上に私は、鬼の殲滅を望んでいる。理不尽に、軽々しく、娯楽のように失われていく命が、これ以上あってはならないの……」
己の恐怖心に打ち勝ち、ここに立っている。私の答えは彼を満足させられただろうか。……少なくとも、泣き止んでもらう事には成功したみたいだ。
鬼「ごちゃごちゃ何を話しておるのだ。どうせこれから死にゆく身なのだから、無意味だ」
鬼は自慢気に鋭利な爪を見せながら、ジリジリと近寄ってくる。もうお喋りする暇はなさそうだ。再び鞘から刀を抜き出す。
貴「でももし、鬼と相対する勇気があるのなら、刀を抜くことが出来るのなら、一緒に戦って欲しい……。一緒に人を助けられる鬼殺隊に入ろうよ」
背後の彼に少し視線を送り、再び前を向いた。痺れを切らした鬼が襲いかかってくる。私も応戦する為、走り出した。
「……お、俺は……」
少年は投げかけられた言葉を胸に、拳を握りしめた。
