天空の難破船【完結】
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快斗side
憐を抱え上げた俺は、縛られていた名探偵の仲間を置いてホールを抜け、スカイデッキへと向かった。当初お宝が飾られていた場所へと立つ。抱えていた憐は乗ってきたエレベーターとは逆の方にある壁を背にして、一時的に座らせている。憐の意識が戻る前にさっさと始めるとしよう。
夜空に繋がるスカイデッキで、今宵のお宝
もしこれが求めていた物ならば、
キ「透ける訳ねーか……」
だが、そう簡単に見つかるはずもなく……ただ
蘭「新一……」
キ「!?」
蘭「ねぇ、新一……」
いつの間にか自分の背後に名探偵の彼女が立っていた。そして彼女が呟いた名前に、ハッとした。
快(ヤベッ!!そういやそんな事……)
ウェイターに化けてスカイデッキへ視察していた所、憐と彼女に見つかり、更には正体もバレかけるというハプニングがあったことを思い出す。憐がいる手前、正体がバレることは是が非でも避けたかったがために、苦肉の策として〝怪盗キッドの正体は、工藤新一である〟と二人の前で工藤新一に変装してみせてやり過ごしたのだ。
正直色々な事があったせいで、すっかり忘れていたが、〝工藤新一〟であると嘘をついたせいで二人の人間の態度が変わった。現在目の前にいる彼女と、確証はないが急に態度が冷たくなった憐。前者の態度は分かるが、後者の態度の変化に今だ理由を見いだせていない。
……いっそ彼女に理由を話していてくれればと思ったりもしたが、そんな都合の良いことがある訳もないだろうと否定する。
キ「よぉ蘭……今日はなかなか刺激的な1日だったな」
蘭「……」
さて、またもや訪れたピンチをどう切り抜けようかと思案していると、再度彼女が口を開く。
蘭「意識のない憐を、一体何処へ連れて行くつもりなの……?」
憐の身を案じる言葉が彼女の口から放たれる。憐とは友人同士、他の奴らを置いて一人でやってきたのは、憐と大切な幼馴染の行方を探りたいって所だろう。
キ「そりゃ勿論、この後すぐ病院に連れて行くぜ。その為に連れ出したんだからな……」
二つあった目的のうち、この宝石が己の求めていた宝石どうか確かめるという目的は済んだ為、後はもう一つの方、憐を助け出すという目的の為動こうと考えていた。
蘭「そっか……ねぇ、さっき言ってたあの言葉は本当なの??……新一は憐の事が好きなの??」
その言葉に、冷や汗が流れた。
(しまった……!!そんな設定忘れちまってたぜ……)
キ「い、いやそれは!!その……」
これ以上彼女を傷つける前に訂正しなければと思うが、我ながら大胆な告白を嘘だったなんて今更言っても信用されないだろう……それにあの想いを否定することは出来るだけしたくない。偽りだらけの己が唯一明かした本音なのだから。かと言ってどう彼女に対応しようか、答えあぐねていると先に動いたのは彼女の方だった。
蘭「……やっぱり貴方、新一じゃないわね」
キ「!!……」
蘭「新一は憐の事を気の合うミステリー好きの友達だって言ってたし、私から見た新一の憐に対する行動と、今迄の貴方の憐に対する行動が全く違うから……冷静になって考えてみて、ようやく気づいたわ……やっぱり貴方と新一は別人ね」
自ら答えを出した彼女に驚き振り返る。なんだよ、俺が答えを教えなくとも彼女自身で真実にたどり着けている。その事に感心していると、スカイデッキへと続くエレベーターの扉が開く。その中に居たのは、恐らく彼女を心配しに来た名探偵とお嬢様。特に名探偵が恐ろしい形相でこちらへ近づいてくるのが見えた。
(名探偵に捕まる前に、憐を連れてさっさと逃げるとするか)
俺は自ら真実に辿り着いた彼女の手を取り跪いた。そしてその手に口付けを贈る……。
キ「そう……私は探偵ではなく泥棒……」
コ「キッド、テメッ〜〜〜!!!」
キ「泥棒は人の心を盗むのが商売……例え己の心の中に大切な人がいたとしても……」
蘭「……え?」
ちゃっかり彼女の指に
────────────────────────
コナンが仲間達のもとに戻った時、警察が慌ただしく動いていた。中森の怒号が響き、歩美や光彦達は大人しく椅子に座っていたりと、何だか物々しい雰囲気を感じ、近くにいた園子に詳細を聞くと、キッドが意識のない憐を連れて去った事を告げる。だから中森警部があれほどに息巻いてキッドを探しているのかと納得し、自分もその捜索に加わろうとすると、園子がポツリと零す。
園「そう言えば遅いなぁ蘭……先に行っててって言われたからトイレだと思ったんだけど……
まさか憐を探しに行ったんじゃ……!?」
コ「!?」
哀「彼女ならエレベーターで上に行ったわよ……もしかしたら攫われたあの子を取り戻す為に、キッドに会いに行ったのかしらね……」
背後でコナン達の会話を聞いていた哀が、助言するように呟く。
正義感の強い蘭ならあり得る……だが中森警部に告げずに、一人で行くなんていつもの蘭らしくない。その理由だけじゃない気がして嫌な胸騒ぎを覚えたコナンは、一人エレベーターへと駆け出す。焦った表情を見せたコナンに対し、不審に思った園子も後を追って、エレベーターへと乗り込んだ。
あの怪盗がいる場所は、夜空に近いスカイデッキだとコナンは確信していた。
乗っていたエレベーターがスカイデッキの階で止まった。コナンと園子は急いで扉から飛び出す。前方を見ると危惧していた状況が待っていた。蘭とキッドが向き合っている。更に言うと二人の距離が近く、キッドはこちらを確認した後、跪き蘭の手を取ってキスをしていた。
コ「キッド、テメッ〜〜〜!!!」
その瞬間一気に怒りが爆発し、乱暴な口調で怪盗に詰め寄ろうと走り出す。しかし、キッドもコナン達に背を向け、一目散に走り出す。その時コナンはキッドが走り出した先の壁に瞳を閉じて座っている憐の姿を見つけた。キッドは壁にもたれていた意識のない憐を抱きかかえた。
コナン達に意味深な笑みを向けて、ワイヤー銃を持った手を器用に振る。そしてワイヤー銃を空に向けて放ち、ハンググライダーで憐と共に夜空の彼方へと消えていったのだった。
コ(アイツ……神崎の救助に手を貸してやったのに、蘭に変な事しやがって……)
園「キッド様、憐連れて行っちゃったわよ!?」
蘭「病院に連れて行くんだって……」
園「えっ?!キッド様がそう言ってたの?!」
蘭「うん……私達の前であんな大胆な告白したんだもの、憐を傷つけるようなことはしないと思う」
園「それもそうか〜……ただ中森警部には伝えといた方が良さそうね」
コ「大胆な告白って??」
蘭と園子が納得しかけた時、一人だけ分からなかったコナンが、二人に問いかける。
園「もうキッド様ったら、すっごく素敵な愛の告白をしていたのよ〜!いいわよね〜憐が羨ましい……私も真さんにあんな風に言われたら……」
有頂天になっている園子からの言葉ではいまいち要領を得ない。コナンが蘭の方を見ると、安心したように息を吐いて穏やかに笑っていた。
蘭「新一があんな事言えるはずないものね……良かった〜……」
コ「新一兄ちゃん!?」
蘭から出てきた己の名前に益々意味が分からないコナン。声を張上げて蘭に詳しく聞こうとするが、蘭がふと自身の指にはめられていた
蘭「あ〜
コ「ねぇキッドと何話してたの?!告白って何?!何で新一兄ちゃんだったら言えないの?!」
怒涛の質問攻めをしてくるコナンに、蘭は少し顔を赤くしながら答えた。
蘭「……だから新一だったら言えそうもない歯の浮くようなセリフよ!」
コ「えっ?!」
園「しょうがないわね〜このガキンチョは……蘭の代わりに、この園子様直々に教えてあげるわよ!
少し前に飛行船が揺れたんだけど、その後キッド様が出てきて、蘭の繋いでた両手のロープを解いたのよ!私のも解いて欲しかったのに、キッド様は気絶した憐を見るなり、一直線に向かって真剣な顔で憐の紐を解いたと思ったら、私達の前で憐を連れ去ることを宣言したのよ!」
コ「えっ??」
蘭「勿論中森警部は怒って反対したんだけど、キッドは……────────────」
キ『暗闇が支配する世界の中で、ただ静かに浮かんでいる。この世の何よりも美しく、仄かな光で、どんな者でも優しく包み込んでしまう……
そんな月を、私は愛しているんです……』
蘭「……って。憐を抱き上げて、凄く優しい瞳で憐を見てた。多分月って言ってたのは憐の事を指してたんだと思うけど……」
園「何で月に喩えたのかは私達含めて誰も分からなかったんだよね〜。本当もう超かっこよかったんだからぁ!流石キッド様ね〜!」
蘭「……ね?これで分かったでしょ?新一がこんな告白出来るはずがないもの……!」
園「あら〜分からないわよ!蘭もそのうち新一くんにあつぅーい告白されちゃうかもね!」
蘭「ちょっと園子!」
蘭と園子がじゃれ合う最中、コナンが静かに口を開く。
コ「ムーンストーン……」
蘭/園子「「えっ??」」
コ「キッドが憐姉ちゃんを〝月〟に喩えたのは、憐姉ちゃんがムーンストーンを持ってたからだと思うよ」
コナンの発言に二人は、言い合いをやめてハッとして再度顔を見合せた。
蘭「そう言えば憐、ムーンストーンの石持ってたね……」
園「あの子いつも手首に巻いたミサンガに付けてたものね〜!でも、キッド様も気づいてたんだぁ?!」
コ(気づいたというよりは、実際そう仕向けたのがアイツだからな……)
某日、コナンが怪盗キッドの本来の姿の者に会いに行った時、彼の正体を裏付けた物がまさに憐のあげたパワーストーンだった。実際彼女は、自分の幼馴染にその者の誕生石であるムーンストーンを贈ろうとしていた。しかし、その彼から自身の誕生石と彼女の誕生石の交換の要求があり、彼女はその提案を受け入れて、両者の誕生石交換が行われた。
憐の誕生石はアメジスト、そしてその幼馴染の誕生石はムーンストーン……両者共に小さいながらもイニシャルが彫られていたことが発覚し、誕生石は交換されていても本来の持ち主を示していたことがわかった。そのおかげでコナンは、キッドが落としたとされるアメジストと、憐の幼馴染の持つアメジストが同一の物で本来の持ち主は神崎憐だと推理し、様々な要素から怪盗キッドの正体は、神崎憐の幼馴染である手品の得意な少年だと気づけたのだ。
コ「月下の奇術師と謳われるキッドにとって、〝月〟とはまさに奴の象徴であり、なくてはならない存在……。
憐姉ちゃんがムーンストーンを持っていたことも知っていた。だから〝月〟と掛けたんだ……怪盗にとって、どちらも欠けることが出来ない存在だったから」
一般的に月は日によって姿を変える。月の表面が見えてまん丸の形に見えるものを満月、そこから欠けていると三日月と名称も変化する。月の満ち欠けと言葉があるくらいだ。しかし、実際形が変わっている訳ではない。月は太陽の光が反射して輝いており、月が地球の周りを公転する際に、太陽の光が当たる部分が変化することで、地球から見た月の形が変わって見えるようになっている。
自分の大切な者をを月と評した怪盗に対して、相変わらずいけ好かないキザ野郎だとコナンは心の中で毒づいた。しかし他ならぬ神崎憐を連れ去ったのが、怪盗キッドだという点に安堵の息をもらす。
コ(まぁ奴にとって、神崎は自分の命を懸ける程の存在……そんな奴が彼女を危険に晒すような真似をするとは到底思えない。蘭の言う通り、キッドは神崎を助ける為に連れ去った。ひとまず危険性はないと判断して良さそうだ)
コ「とりあえず今日はもう休んで、明日近くの病院に行ってみようよ!きっとそこに憐姉ちゃんはいるからさ」
コナンの言うことも一理とあると思った蘭と園子は、これ以上の追求をやめて、コナンと一緒に下の階へと降りていった。
その後彼女達は無事他の仲間と合流、鈴木次郎吉に
