天空の難破船【完結】
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────── ホール
一度は犯人達の手で飛行船から地上へと落とされ、復帰も絶望的かと思われたが、持ち前の機転の良さと人脈を使い、再び飛行船へと戻ってきたコナン。そのコナンを今度こそ始末するべく、リーダー格の男は複数部下を追い放ち、更には自分の手を下すべく、残りの者達にダイニングを任せ、その場を離れた。それから暫く時間が経った頃……いまだ身動きが取れない毛利一行達に希望の一声が届いた。
コ「残りの人聞いてる?リーダーやっつけちゃったよ。他の3人も……」
「な、何?いい加減なことを……」
中「うりゃ〜〜〜〜っ!!」
次「行け!!ルパン!!」
ル「ワンワン!!」
人数が減って頭領も居なくなれば、相手方は動揺し統率は乱れる。千載一遇の好機とみて、コナンの声を皮切りに、中森と次郎吉は他の犯人達を制圧しにかかった。敵の拳銃が落とされて、地面にカランと転がる。次郎吉はすかさず拾おうとするも、犯人一味だったウェイトレスの女に撃たれそうになり、素早く体を壁に隠した。
仕留めきれなかった女は、再度自身の銃を握り締めて、引き金を引こうとする。その瞬間、どこからともなくトランプのカードが飛んできて、女の拳銃をはじき飛ばした。
「何で!?……キャッ!!」
予想外の出来事にパニックになり焦り出すウェイトレスの女。その様子に躊躇なく踏み込んで、女の腕を掴みあげ、背負い投げを実行したのは、先程まで寝ていると思われていた毛利小五郎だった。
歩/光/元「「「ヤッタ〜〜〜〜!!!」」」
小「……ったく!こんなもん振り回すんじゃねぇ!!」
得意の背負い投げが見事決まり、無事犯人一味を制圧した小五郎達に、歩美、光彦、元太は喜びの声をあげる。
哀(トランプのカード……まさか……)
ウェイトレスの女が取り上げた探偵バッジを拾い上げながらも、近くに落ちていたトランプのカードを見つめ、ある人物が何処かから自分達を助けてくれたと認識した哀。飛んできた方向へ目を向けるもそこには壁があるだけで、誰もいなかった。
しかし、実はこの時壁の奥の方には、白い怪盗がトランプ銃を持ってもたれかかっていた。
キ(……憐を殴ったウェイトレスに、本当は一泡吹かせたかったが仕方ない……毛利探偵の背負い投げ食らって痛い目見たんだ……これで勘弁してやるぜ)
憐を傷つけたあのウェイトレスに、密かに仕返しを考えていたキッド。しかし、小五郎があのウェイトレスに対して綺麗な一本背負いを決めたおかげで、彼は自分が直接手を下さなくとも良いと判断してこの場を去った。
そんな事情を知らない哀は、倒れ込んだウェイトレスの傍に落ちた探偵バッジを拾い、この場にいないコナンに連絡を取った。
哀「江戸川くん、こっちの二人もやっつけたわ!」
コ「了解!」
哀「それと、トランプのカードが……ううん、何でもないわ」
コ「……まぁ、無事で良かったぜ」
そう言って探偵バッジの通信を切り、改めてリーダー格の男の懐をガサゴソと漁り携帯電話を探り出す。
コ(凄い数の履歴だ……しかもこの2〜3時間の間に……)
コ「ねぇ、誰と電話してたの?それもこんなに沢山……」
「フンッ……」
非協力的な態度の男に、コナンはある物を取り出した。
コ「ふ〜ん……話したくないなら」
「それをどうするつもりだ……」
コ「素直に白状しないと、これの中身をかけちゃうよ」
コナンが手にしているものは、リーダー格の男が所持していた殺人バクテリア入のアンプルだった。彼の推理が正しければ、中身は殺人バクテリアではない。だから中身をかけると言っても焦らないはず……そう仮定し脅しをかけていた……
「ふん……好きにしろ」
案の定、彼の予想通りの回答が返ってきてコナンは思わず笑みを浮かべた。
─────────────────────────
空の上でコナン達がバイオテロ組織相手に奮闘している中、地上ではバイオテロ組織の犯行により、大勢の人が避難の為、関西地域から大移動が行われていた。
犯人一味の仲間が、無人となった寺社の仏像を盗もうとトラックに運び込もうとしたが、別で調査を行っていた服部平次達と、通報してやってきた奈良県警のおかげで、地上にいた彼等の仲間も無事逮捕出来た。その報告の為に、服部はコナンに電話をしていた。
服『おう、工藤!仏さん狙ってた奴等、全員捕まえたで!もちろん住職らも全員無事や!!』
コ「分かった!ありがとう平次兄ちゃん!」
一方、飛行船の方ではコナンが蹴散らした犯人達を中森が手錠で括り付け、逃げられないよう確保していた。コナンの電話を傍で聞いていた小五郎は、西の高校生探偵が裏で糸を引いていると勘違いしており、誤魔化すように少年は笑った。その際に次郎吉へ
次「おぉ、すまんな小童」
園「それより早く蘭と憐を病院へ連れて行かなきゃ!!」
園子が血相変えて次郎吉に詰め寄る。
コ「あ、そうそう!その事なんだけど……」
コナンは、今回の発疹騒動について自身の見解を話し始める。
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死へのカウントダウンは既に始まっていた。残りの私の命はどれくらい残っているのだろう……
いっそ快斗達がやってるゲームみたいに、自分の命のゲージが見えたらいいのに……私はあとどれくらい生きられるのだろうか……そんな事を永遠と考えている。蘭は窓から見える景色を眺めて、私は手の中にあるムーンストーンを見つめ、水川さんが項垂れている時、閉じられていた喫煙室の扉が開いた。どうせ犯人グループの誰かだろうと、特に何も反応せずにいたら、聞き覚えのある声が私達の名前を呼んだ。
コ「蘭姉ちゃん、憐姉ちゃん……」
蘭/貴「「!?」」
驚いて顔を上げる。そこには絆創膏を頬に付けたコナンくんの姿があった。
蘭「駄目!!来ちゃ駄目!!コナンくん!!」
貴「コナンくん?!とにかくこの場から早く出て!!」
私と蘭が必死になってうつさないようコナンくんを離れさせようとするが、逆にコナンくんは歩み寄ってくる。
コ「大丈夫だよ二人とも!だって、誰も細菌になんか感染してないもん!」
コナンくんが衝撃的な一言を述べる……その内容に目が点になる。
貴「……えっ?」
蘭「でも発疹が……」
コ「その発疹はただのかぶれ!多分漆にかぶれただけだよ!」
なんと誰も感染していないと言うのだ。この発疹は漆にかぶれただけ?……思わず自身の発疹に目を向ける。
蘭「漆?」
コ「さっき蘭姉ちゃんをここへ連れて来た人、水川さんや憐姉ちゃんの時も同じ人だったんじゃない?」
蘭「え、えぇ……」
貴「……全然覚えてない」
だってそんな事気にしてられる余裕なんてなかったから。
コ「やっぱり……きっとあの人だけが彼らの中で漆に耐性があるんだ。手の爪が黒くなってたから、多分元漆職人か何かだろうね」
漆と言えば、ウルシの木から取れる樹液の事で塗料とか接着剤とかに使われていて、昔から日本文化に馴染みがあるもの。私はよく知らないけど、そういえば学校の行事で、日本の伝統工芸品を知る為に博物館に行った朧気の記憶が蘇る。
(そういえばあの時、快斗が『漆は無闇矢鱈に触れるとかぶれるから気をつけろよ』って言ってたっけ……)
過去の記憶を振り返り、幼馴染に言われたことを思い出す。これがそのかぶれなのかと身をもって体験できた。
コ「つまり犯人達は最初から細菌なんか盗んでなかった……ただ、実験室を爆破して今回のバイオテロを本当っぽく見せただけだよ。その証拠にこのアンプル……リーダーの前でこのアンプルの蓋を開けようとしたけど、リーダーは騒ぎもせずに平気な顔してた」
コナンくんの説明に成程と相槌をうつ。筋が通った推理で感心してしまう。つくづく思う……コナンくんって本当に小学生なのかなって……。
コ「もし本当に細菌が入ってれば、必死に止めるはずだよね?蘭姉ちゃんと憐姉ちゃんがさっき僕に叫んだみたいに……」
蘭「コナンくん……」
見た目はどう見ても子ども……でも頭脳は、大人……本当に凄いんだよね。
コ「だったよね、おじさん!!」
小「あ?あぁ……大丈夫か?蘭」
蘭「うん……」
……何だ、今のは小五郎さんから聞いたのか。コナンくんは頭良いから、もしかしたらと思ったけど、今回は小五郎さんの知識みたい。喫煙室の扉を開けて入ってきたのは、小五郎さんと園子。園子の目元に濡れた跡がある……私だけじゃなく蘭まで発疹が現れて、彼女一人残して去ってしまったのだから。不安と恐怖を与えてしまったから謝らなくては……そう思い、園子に近づいて行った。
貴「園子……」
園「憐!あんた何考えてんのよ!!何で何も言わずに行っちゃったのよ!!私達友達でしょ!!」
貴「ごめんね……藤岡さんが感染してるって分かった時、私も感染してる可能性があったから、なるべく皆と一緒にいない方が良いと思って離れてたし、発疹が出た時も早くあの場を去りたかったの……皆には生きて欲しかったから……」
園子は私の話を聞いて、ハッとしていた。
貴「でもあの後蘭が来た時、すごく怒られた。園子と同じことを言われた……そうよね……友達だからこそ相談するべきだったね。不安にさせることや悲しませることまで考えてなかった。本当にごめんね園子……」
私の謝罪に、園子は目元に溜まっていた雫を拭ってまたいつものように笑った。
園「分かればいいのよ!今度やったら承知しないから……!」
貴「うん!」
雰囲気も柔らかくなり、話が着いた頃、急にコナンくんが私達の間を駆け抜けて行った。
蘭「その様子じゃ園子も憐に、言いたいことちゃんと言えたみたいで良かった!」
園「えぇ!先に蘭が憐に言っておいてくれたんでしょ?ありがとうね」
コナンくんと話が終わった蘭は、私達の様子を見て同じく表情に笑顔が戻っていた。私は再度蘭と園子に軽く謝罪すると、コナンくんが駆け抜けて行った方向を見つめる。
貴「コナンくん?……何かあったの?」
蘭「それが発疹の説明をしてたんだけど、急に何かを思い出したみたいに話すのをやめて、それで走り出しちゃったの」
貴「そうなんだ……」
すれ違ったコナンくんの表情……何か重要な事を思い出したような感じだったけど、追いかけるにしても、もういないから難しい。素早いコナンくんを追いかけるのは無理だと判断し、私達は再び他の皆のいるホールに戻って行った。
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ホールに戻ると、歩美ちゃん、光彦くん、元太くんが心配して駆け寄ってきてくれた。歩美ちゃんの目元にもよく見ると、濡れた後があった。この子達にも心配かけてしまったと反省して、皆に謝ったら笑って許してくれた。
そんな微笑ましい雰囲気は突如甲高い悲鳴が上がり、終わりを迎えた。
石「動くな!」
園「きゃあああ!!!」
蘭「園子!!」
貴「園子!!皆!私の後ろに下がって……」
園子の頭部に拳銃を突きつけていたのは、今回この飛行船に乗り合わせた客の一人、カメラマンの石本さんだった。疑問が残るも、一旦子どもたちは自分の後ろに下がらせて様子を見る。
蘭「!!」
西「動くなって言ったでしょ?」
貴「蘭!!」
すると園子に声をかけていた蘭の背後にも同じ黒い拳銃が突きつけられていた。その相手はレポーターの西谷さん……まだよく分かっていないけど、恐らくこの二人もアイツら犯人一味の仲間と考えて良さそうだ。
(……この飛行船に潜り込んでいたのは、キッドだけじゃなかった。まさか私達関係者以外に乗り込んだ人物の殆どが危険人物だったなんて……鈴木財閥はセキュリティの強化をした方が良さそうね)
どっちにしろ二人も人質をとられては動けない。私達は再び奴らの言う事に従うしか無かった。
一人ずつ手摺に紐で両手を縛られて拘束される。予想外だったのは、手錠で拘束されていたハイジャック犯達を助けるのかと思ったら拘束を解かなかったこと。
(仲間じゃなかったんだ。多分ハイジャック犯達とこの人達はまた別グループ……。哀れね……平気で裏切ることが出来る関係性だったんだもの)
本来であればこのハイジャック犯達と石本さん、西谷さんのグループは協力関係にあった。キッドが狙っていた
どっちにしろ石本さん達は、私達を生かして帰すつもりはないみたい。飛行船がハイジャックされたり、細菌に感染したと思ったら、それは漆のかぶれで、やっと命の危機を脱したと思ったら、またすぐこれだ……一難去ってまた一難とはこのこと……生命の危機はまたしても訪れる。
そんな訳で私に限らず、蘭や園子、子ども達、銀三さんなど皆の表情に疲労が見える。例外はなく、特に私は多大なストレスに長時間さらされたり、疲労が溜まると頭痛、酷いと吐き気等も出てくるのだ。今も頭痛が始まり、頭がズキズキと痛み始めていた。心因性の物だと分かっている為、この状況が落ち着けば次第に治まるとは思うけれど、一体何時になったら私達は助かるのだろうか。
幸い紐で両手を縛られたことによって、綺麗なカーペットに座らせられていて、立っている時の痛みよりかはマシだ……それでも辛いことには変わらない。誰一人弱音を吐けない状況で、私だけ情けない姿など見せられない。
でも少しだけなら……良いかな……?辛い表情を見せないように、静かに俯いて目を閉じようとした時、大きな音が鳴り響いた。
次の瞬間、座っていた地面が斜めになり、次第に垂直になったのだ。何も考えられないまま、気づけば重力に引っ張られて下に落ちるような格好になっていた。
「「「きゃああああ!!」」」
石「うわぁあああ!!」
私達は紐で手摺に括り付けられていたから、落ちずに済んだけど、石本さんと西谷さんは下に滑り落ちていった。
貴「うっ……」
落ちずには済んでいるけど、強い力で下に引っ張られている為、手首に紐が食いこんでいる。ただでさえ頭が痛いというのに、手首まで痛みが回ってきた。
貴「!!」
不味い……!飛行船が傾いていることによって、落ちそうになっているのは私達人間だけじゃない!ホールに置いてあった椅子や机までも下に転がり落ちている。その何個か椅子や机が私達の方へと落ちてきていた。
私の隣には元太くんが縛り付けられている……ここで避けたりなんか出来ないし、そもそもまともに動けない……でも、もしその椅子が元太くんや光彦くん、歩美ちゃんに当たったりしたら大怪我になる……!
(それだけは絶対駄目!守らなきゃ……!)
貴「くっ……届け……!」
私は私の後ろに繋がれている子ども達を守る為に、できる限り足を伸ばして、大量に落ちてくる椅子や机を横に蹴り飛ばした。
バシッ!
貴「っ……」
落ちてくる個数は多く、いくつか頭や足等体に当たったが、幸い他の皆に当たることは無かった。
暫くしてまた地面は平行に戻る。どうやら飛行船の機体が元に戻ったようだ。
銀「おーい、皆大丈夫か?」
光「はい、何とか……」
銀三さんや他の人達の声が聞こえる。皆何とか生きている。とりあえず、皆に怪我なくて良かった……
(あっ……ヤバい。もう限界かも……)
目の前の景色がぼんやりしている。恐らく頭痛に加えて頭や足に衝撃があったり、疲労が重なり、既にもう心も体も限界を迎えていた。
元「憐姉ちゃん?!おい大丈夫か?!」
貴「大丈夫……心配……しないで……」
隣にいた元太くんに安心して欲しくて、笑って伝えたつもりだけど、彼の表情はまた更に焦っていたので、上手くできなかったかもしれない。そんな事を考えながら、私は意識を暗い中へと沈めるのだった。
