天空の難破船【完結】
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ようやく飛行船内部に入り、通路を歩いてく。ハイジャック犯達と出くわす可能性を考慮し、コナンは身を隠しながら慎重に歩いていた。すると前方で、目的の人物がハイジャック犯達と歩いているのを発見した。
その人物とは蘭だった。蘭の腕には発疹が出ていた。
(発疹……?)
蘭は喫煙室に連れて行かれて、乱暴にその部屋に入れられていた。どうやらその部屋に入れられたのは、蘭だけじゃなく、発疹が出たとキッドが言っていたディレクターの水川と……
(中で目を閉じて座っているのは……神崎?)
一瞬しか確認出来なかったが、彼女にも腕に発疹が出ていた。自分のいない間に、憐、そして蘭までもが発疹が出ていた。
水川、憐、そして蘭を入れた喫煙室の扉は閉じられた。蘭を連れてきたハイジャック犯が手袋を外し、その場を後にする。その際にその者の指の爪が黒ずんでいたのが見えた。
(どういう事だ……キッドが言うように、腕を掴まれただけでは感染しない。蘭は飛び退いたらしいし、藤岡さんは咳もくしゃみもしなかった。それにアイツの報告になかった神崎まで、どういう訳か発疹が出ていた。それに比べ、元太はくしゃみをされた上喫煙室の細菌を吸ったはずなのに感染していない……何故だ?)
コナンは思考をとめないまま通路を歩いていく。その時目の前にとまったドアノブを見て、ある可能性に思い当たった……
喫煙室の中に入りかけた元太、右の拳に発疹が出ていた水川。水川には、タバコの匂いがしたという証言があり、喫煙室に入った可能性がある。当然その場合、中に入る為に扉の取っ手に触る必要がある。
(もしかしたら……)
思い付いた仮説を試す為に、コナンはある行動に出る……。
────────────────────────
───────── ダイニング
蘭が連れて行かれた後、ダイニングに残された者達は各々大人しくしていた。
園「憐っ……蘭っ……」
園子は連れて行かれた友人達を思い出し、涙を流す。呟かれた名前を聞いて歩美や元太、光彦は更に落ち込んだ表情を見せていた。
突然ガタンッと上から音が聞こえた。音の正体を突き止めるようリーダー格の男が部下に指示を出す。その指示に従い、部下の男がいなくなって少し経った後、その部下と連絡が取れなくなった。
その様子に他の仲間に様子を見てくるよう告げる。しかし、またしてもその部下とも連絡が取れなくなりいよいよ焦りを見せたリーダー格の男。通信機に呼びかけると、応答したのは小さい子どものような声だった。
コ「キャットBなら屋根の上で伸びちゃってるよ……おかしいね。猫は背中から落ちたりしないのに……」
通信に出たのは先程飛行船に戻ってきたコナンだった。
元「コナンだ!」
光「戻ってきたんですね!!」
歩「キッドさんも一緒ね!!」
友人の声が聞こえて喜ぶ少年探偵団。歩美にキッドがいることを言及されるも即座にコナンは「キッドさんはいねぇよ……」と否定した。実際彼の近くに怪盗の姿は見えなかった。
コナンの態度に、痺れを切らしたリーダー格の男は追加の命令を下す。他の部下達に、コナンを見つけ次第撃ち殺すように、憐を殴った短髪のウェイトレスにダイニングを見張るよう命じた。
────────────────────────
その後次々とやってくる刺客相手に、阿笠博士の発明品と持ち前の身体能力で、危なげながらも捌いていくコナン。何人か再起不能にさせた後、スカイデッキへと駆け上がっていく。ここには鈴木次郎吉が用意した対キッド用に仕掛けられた罠が複数ある。その罠を駆使し、一人また一人と片付けていった。
その中でも一際目立った罠、柱の高い位置に仕掛けられたセンサーがある一定以上の高さで物体を感知すると、その物体目掛けて電撃を放たれる罠に引っ掛けられた敵の様子を見て、スカイデッキの上から見物していたキッドが降りてくる。
キ「おいおい、マジかよ……何これ?」
コ「次郎吉さんがオメーの為に用意した3つ目の仕掛けだ」
キ「そうか、俺が宝石を奪ってあの窓から脱出しようとワイヤー銃を撃ったら……危ねぇ危ねぇ〜……とんでもねー爺さんだな」
コナンの説明を聞いて、自分があの罠に引っ掛かりまんまと電撃を受けた想像をして、身を震え上がらせるキッド。
コ「って言うかお前、ずっと上にいたのかよ!?」
キ「……俺はお前からの報告を待ってたんだぜ?」
自分に盗聴器を付けていたこの男の肯定とも取れる回答に呆れ果てるコナン。付けられていた盗聴器を怪盗に投げつけて、キッドに目的の人物について告げる。
コ「ったく……あの時はまだ確信が持てなかったから、言わなかったが、お前の言っていた水川さんが喫煙室に居た。そしてそこには蘭と、もう一人……お前が身を案じていた神崎が……」
コナンの言葉が途切れる。待ちに待ったコナンの情報を聞けると思った瞬間、最後の邪魔が入り怪盗は小さく舌打ちをした。
部下に支持を出していたハイジャック犯達のリーダー格の男が自らスカイデッキへとおもむき、コナン達にサブマシンガンを向けた。連射される銃撃に、彼らはすぐさま報告を中断し、各々左右に捌ける。
コ「くらえ!」
コナンはその銃撃を避けながら、自身のキック力属強シューズのスイッチを入れて、ベルトから射出されるサッカーボールをリーダー格の男目掛けて、全力で蹴りあげる。
ボールは見事男の顔面に命中し、ようやく倒すことが出来たのだった。
コ「フ〜ッ……」
キ「すげー……」
幾度となく見ており、尚且つ自身も狙われた事もあるキッドにとっては、相変わらずの威力の高いボール捌きに感嘆の息が漏れる。そして、今回の事件の立役者でもあるコナンの頬に、絆創膏を貼り付けた。
キ「戦士の勲章だな……」
彼への賞賛の言葉を忘れずに……
コ「ッ……」
キ「それで?教えてくれ……今、憐は……どうしてるんだ……」
コナンに目線を合わせたまま、余裕そうな態度から、突如真剣な顔付きで問いかける怪盗に対し、コナンは途中となってしまった報告を再開する。
コ「最初に発疹が出た藤岡さんの次に発疹が出ていた水川さんは、喫煙室に閉じ込められていた。そしてその少し前に、同じく腕に発疹が出ていた蘭が連れて行かれて放り込まれていた。その時に一瞬だが見えた……腕に発疹が出ていた神崎の姿が」
キ「!!」
コ「恐らく蘭よりも前に発疹が出て、連れて行かれていた……」
コナンの言葉を聞いていた怪盗の顔付きが再度変わる。目を見開き、次の瞬間……俯き地面に拳を打ち付けた。
キ「やっぱりそうか……。道理で自分の命を投げ出すような行動を……!」
コ「やっぱりって……お前、分かってたのか?!」
コナンの追求にキッドは立ち上がって背を向けながら話し始める。自分が予想していた訳を……
キ「今やっと分かったんだよ……違和感の正体にな」
コ「違和感?」
キ「オメーも見てただろ?藤岡って男が全身に発疹が出て、周りに助けを求めていた時、奴は中森警部に向かって近寄って行った」
コ「あ、あぁ……だから俺は藤岡さんを眠らせようと、麻酔銃で……」
キ「その時憐が中森警部の前に飛び出して守ろうとした……結局お前の彼女が奴の腹に一発殴って、事なきを得ていたが、その時に憐が話していた言葉が、ずっと俺の中で引っ掛かっていた……」
中『何考えとるんだ憐ちゃん!!もう少しで、憐ちゃんまで感染するかもしれなかったんだぞ……!!』
貴『!!……ごめんなさい銀三さん!!でも、これ以上感染者を出したくないと思ったら、体が勝手に……』
コ「〝これ以上感染者を出したくないと思ったら〟……か」
キ「どっちの意味にも取れる言葉だけどな。でもあの尋常じゃない焦り……他にも感染者が出ることを分かっていたんだ……」
コ「でもあれは中森警部が狙われたからだろ?園子から聞いたぜ……彼女の幼馴染の父親だって……」
キッドが感じてた違和感に、コナンは見たままの意見を述べるが、キッドはその言葉に俯きながら、ポツリと言葉を零す。
キ「それだけじゃねぇんだよ……」
それはある意味表の情報のみにすぎない……真実はもっと複雑で……悲しい出来事が関係している。
快(やっぱりアイツの中で、親父の死は乗り越えられていないんだな……)
黒羽盗一がいなくなって8年経った今も、彼女の中
に自分の敬愛する父が存在していることが嬉しい反面、父親が居なくなることがトラウマになってしまっていることに心を痛める快斗。自分や彼女の悲しみをもう一人の幼馴染に味わせないため……自分の体を張って守ろうとしたのだ。
当時自分の父親が亡くなったと知らされた時、肉親の自分達のように深い悲しみを見せていた幼い憐の様子を今でもはっきりと思い出せる。
普段比較的大人しい憐が、大声を上げて涙をポロポロと流していた。号泣していた彼女に寄り添い様々なマジックを見せていたのは、他ならぬ幼きマジシャンの快斗だった。
そんな裏事情を小さな名探偵が知るはずがない……これは彼女と長い時を一緒に過ごしている自分と中森警部だから知っているのだと、怪盗は静かな目を伏せていた。
コ「??」
キ「いや何でもない……それにその言葉だけじゃない!俺が憐に感じた違和感は……
藤岡を気絶させた後、中森警部が俯いていた憐の頭に手を置いた時、アイツ…………」
〝駄目!!うつっちゃう!!〟
コナンはキッドが何を言いたいのか、全て察し確かめるように口を開いた。
コ「じゃあ、あの時既に神崎はもう……」
キ「……分かってたんだろうな」
キ( いつ何処で……?名探偵は憐の腕に発疹が出来ていたと言っていた……彼女と感染経路が同じなら……藤岡が彼女よりも先に憐に会っていて、藤岡に腕を掴まれた可能性が高い。アイツが一人で藤岡と会った瞬間……
先に一人でスカイデッキから去った時か……!)
真剣な表情を浮かべたり、思い悩んでいたり、年相応の少年のように笑ったり、今迄見せていた姿とは何処か異なる姿を見せる怪盗キッド。いつもの彼なら、華麗にお宝を盗み出し、不敵な笑みを浮かべ、月夜を背にして風のように去っていく。しかし、今日1日で彼らしくない姿を何度も見かけている。
今も考え込むキッドの様子を、コナンは静かに見ていた。
キ「クソ……おい名探偵!お前の大事な彼女に発疹が出ているのに、そんなに落ち着いてられんのは、何か助ける方法があるって事だよな……」
コ「……」
キ「方法があるなら教えてくれ!!俺は絶対……アイツを死なせる訳にはいかねぇんだ……!!」
神崎憐を救う為に、時に形振り構わず行動する姿は、怪盗キッドではなくきっと………彼の本当の姿、〝黒羽快斗〟として名探偵の目に写った。
─── 自分と同じように大切な人を護る為に……
この1点において、彼の気持ちに共感できたコナンは、強気な笑いを見せて、落ち着いている訳を一通り説明した……。
その人物とは蘭だった。蘭の腕には発疹が出ていた。
(発疹……?)
蘭は喫煙室に連れて行かれて、乱暴にその部屋に入れられていた。どうやらその部屋に入れられたのは、蘭だけじゃなく、発疹が出たとキッドが言っていたディレクターの水川と……
(中で目を閉じて座っているのは……神崎?)
一瞬しか確認出来なかったが、彼女にも腕に発疹が出ていた。自分のいない間に、憐、そして蘭までもが発疹が出ていた。
水川、憐、そして蘭を入れた喫煙室の扉は閉じられた。蘭を連れてきたハイジャック犯が手袋を外し、その場を後にする。その際にその者の指の爪が黒ずんでいたのが見えた。
(どういう事だ……キッドが言うように、腕を掴まれただけでは感染しない。蘭は飛び退いたらしいし、藤岡さんは咳もくしゃみもしなかった。それにアイツの報告になかった神崎まで、どういう訳か発疹が出ていた。それに比べ、元太はくしゃみをされた上喫煙室の細菌を吸ったはずなのに感染していない……何故だ?)
コナンは思考をとめないまま通路を歩いていく。その時目の前にとまったドアノブを見て、ある可能性に思い当たった……
喫煙室の中に入りかけた元太、右の拳に発疹が出ていた水川。水川には、タバコの匂いがしたという証言があり、喫煙室に入った可能性がある。当然その場合、中に入る為に扉の取っ手に触る必要がある。
(もしかしたら……)
思い付いた仮説を試す為に、コナンはある行動に出る……。
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───────── ダイニング
蘭が連れて行かれた後、ダイニングに残された者達は各々大人しくしていた。
園「憐っ……蘭っ……」
園子は連れて行かれた友人達を思い出し、涙を流す。呟かれた名前を聞いて歩美や元太、光彦は更に落ち込んだ表情を見せていた。
突然ガタンッと上から音が聞こえた。音の正体を突き止めるようリーダー格の男が部下に指示を出す。その指示に従い、部下の男がいなくなって少し経った後、その部下と連絡が取れなくなった。
その様子に他の仲間に様子を見てくるよう告げる。しかし、またしてもその部下とも連絡が取れなくなりいよいよ焦りを見せたリーダー格の男。通信機に呼びかけると、応答したのは小さい子どものような声だった。
コ「キャットBなら屋根の上で伸びちゃってるよ……おかしいね。猫は背中から落ちたりしないのに……」
通信に出たのは先程飛行船に戻ってきたコナンだった。
元「コナンだ!」
光「戻ってきたんですね!!」
歩「キッドさんも一緒ね!!」
友人の声が聞こえて喜ぶ少年探偵団。歩美にキッドがいることを言及されるも即座にコナンは「キッドさんはいねぇよ……」と否定した。実際彼の近くに怪盗の姿は見えなかった。
コナンの態度に、痺れを切らしたリーダー格の男は追加の命令を下す。他の部下達に、コナンを見つけ次第撃ち殺すように、憐を殴った短髪のウェイトレスにダイニングを見張るよう命じた。
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その後次々とやってくる刺客相手に、阿笠博士の発明品と持ち前の身体能力で、危なげながらも捌いていくコナン。何人か再起不能にさせた後、スカイデッキへと駆け上がっていく。ここには鈴木次郎吉が用意した対キッド用に仕掛けられた罠が複数ある。その罠を駆使し、一人また一人と片付けていった。
その中でも一際目立った罠、柱の高い位置に仕掛けられたセンサーがある一定以上の高さで物体を感知すると、その物体目掛けて電撃を放たれる罠に引っ掛けられた敵の様子を見て、スカイデッキの上から見物していたキッドが降りてくる。
キ「おいおい、マジかよ……何これ?」
コ「次郎吉さんがオメーの為に用意した3つ目の仕掛けだ」
キ「そうか、俺が宝石を奪ってあの窓から脱出しようとワイヤー銃を撃ったら……危ねぇ危ねぇ〜……とんでもねー爺さんだな」
コナンの説明を聞いて、自分があの罠に引っ掛かりまんまと電撃を受けた想像をして、身を震え上がらせるキッド。
コ「って言うかお前、ずっと上にいたのかよ!?」
キ「……俺はお前からの報告を待ってたんだぜ?」
自分に盗聴器を付けていたこの男の肯定とも取れる回答に呆れ果てるコナン。付けられていた盗聴器を怪盗に投げつけて、キッドに目的の人物について告げる。
コ「ったく……あの時はまだ確信が持てなかったから、言わなかったが、お前の言っていた水川さんが喫煙室に居た。そしてそこには蘭と、もう一人……お前が身を案じていた神崎が……」
コナンの言葉が途切れる。待ちに待ったコナンの情報を聞けると思った瞬間、最後の邪魔が入り怪盗は小さく舌打ちをした。
部下に支持を出していたハイジャック犯達のリーダー格の男が自らスカイデッキへとおもむき、コナン達にサブマシンガンを向けた。連射される銃撃に、彼らはすぐさま報告を中断し、各々左右に捌ける。
コ「くらえ!」
コナンはその銃撃を避けながら、自身のキック力属強シューズのスイッチを入れて、ベルトから射出されるサッカーボールをリーダー格の男目掛けて、全力で蹴りあげる。
ボールは見事男の顔面に命中し、ようやく倒すことが出来たのだった。
コ「フ〜ッ……」
キ「すげー……」
幾度となく見ており、尚且つ自身も狙われた事もあるキッドにとっては、相変わらずの威力の高いボール捌きに感嘆の息が漏れる。そして、今回の事件の立役者でもあるコナンの頬に、絆創膏を貼り付けた。
キ「戦士の勲章だな……」
彼への賞賛の言葉を忘れずに……
コ「ッ……」
キ「それで?教えてくれ……今、憐は……どうしてるんだ……」
コナンに目線を合わせたまま、余裕そうな態度から、突如真剣な顔付きで問いかける怪盗に対し、コナンは途中となってしまった報告を再開する。
コ「最初に発疹が出た藤岡さんの次に発疹が出ていた水川さんは、喫煙室に閉じ込められていた。そしてその少し前に、同じく腕に発疹が出ていた蘭が連れて行かれて放り込まれていた。その時に一瞬だが見えた……腕に発疹が出ていた神崎の姿が」
キ「!!」
コ「恐らく蘭よりも前に発疹が出て、連れて行かれていた……」
コナンの言葉を聞いていた怪盗の顔付きが再度変わる。目を見開き、次の瞬間……俯き地面に拳を打ち付けた。
キ「やっぱりそうか……。道理で自分の命を投げ出すような行動を……!」
コ「やっぱりって……お前、分かってたのか?!」
コナンの追求にキッドは立ち上がって背を向けながら話し始める。自分が予想していた訳を……
キ「今やっと分かったんだよ……違和感の正体にな」
コ「違和感?」
キ「オメーも見てただろ?藤岡って男が全身に発疹が出て、周りに助けを求めていた時、奴は中森警部に向かって近寄って行った」
コ「あ、あぁ……だから俺は藤岡さんを眠らせようと、麻酔銃で……」
キ「その時憐が中森警部の前に飛び出して守ろうとした……結局お前の彼女が奴の腹に一発殴って、事なきを得ていたが、その時に憐が話していた言葉が、ずっと俺の中で引っ掛かっていた……」
中『何考えとるんだ憐ちゃん!!もう少しで、憐ちゃんまで感染するかもしれなかったんだぞ……!!』
貴『!!……ごめんなさい銀三さん!!でも、これ以上感染者を出したくないと思ったら、体が勝手に……』
コ「〝これ以上感染者を出したくないと思ったら〟……か」
キ「どっちの意味にも取れる言葉だけどな。でもあの尋常じゃない焦り……他にも感染者が出ることを分かっていたんだ……」
コ「でもあれは中森警部が狙われたからだろ?園子から聞いたぜ……彼女の幼馴染の父親だって……」
キッドが感じてた違和感に、コナンは見たままの意見を述べるが、キッドはその言葉に俯きながら、ポツリと言葉を零す。
キ「それだけじゃねぇんだよ……」
それはある意味表の情報のみにすぎない……真実はもっと複雑で……悲しい出来事が関係している。
快(やっぱりアイツの中で、親父の死は乗り越えられていないんだな……)
黒羽盗一がいなくなって8年経った今も、彼女の中
に自分の敬愛する父が存在していることが嬉しい反面、父親が居なくなることがトラウマになってしまっていることに心を痛める快斗。自分や彼女の悲しみをもう一人の幼馴染に味わせないため……自分の体を張って守ろうとしたのだ。
当時自分の父親が亡くなったと知らされた時、肉親の自分達のように深い悲しみを見せていた幼い憐の様子を今でもはっきりと思い出せる。
普段比較的大人しい憐が、大声を上げて涙をポロポロと流していた。号泣していた彼女に寄り添い様々なマジックを見せていたのは、他ならぬ幼きマジシャンの快斗だった。
そんな裏事情を小さな名探偵が知るはずがない……これは彼女と長い時を一緒に過ごしている自分と中森警部だから知っているのだと、怪盗は静かな目を伏せていた。
コ「??」
キ「いや何でもない……それにその言葉だけじゃない!俺が憐に感じた違和感は……
藤岡を気絶させた後、中森警部が俯いていた憐の頭に手を置いた時、アイツ…………」
〝駄目!!うつっちゃう!!〟
コナンはキッドが何を言いたいのか、全て察し確かめるように口を開いた。
コ「じゃあ、あの時既に神崎はもう……」
キ「……分かってたんだろうな」
キ( いつ何処で……?名探偵は憐の腕に発疹が出来ていたと言っていた……彼女と感染経路が同じなら……藤岡が彼女よりも先に憐に会っていて、藤岡に腕を掴まれた可能性が高い。アイツが一人で藤岡と会った瞬間……
先に一人でスカイデッキから去った時か……!)
真剣な表情を浮かべたり、思い悩んでいたり、年相応の少年のように笑ったり、今迄見せていた姿とは何処か異なる姿を見せる怪盗キッド。いつもの彼なら、華麗にお宝を盗み出し、不敵な笑みを浮かべ、月夜を背にして風のように去っていく。しかし、今日1日で彼らしくない姿を何度も見かけている。
今も考え込むキッドの様子を、コナンは静かに見ていた。
キ「クソ……おい名探偵!お前の大事な彼女に発疹が出ているのに、そんなに落ち着いてられんのは、何か助ける方法があるって事だよな……」
コ「……」
キ「方法があるなら教えてくれ!!俺は絶対……アイツを死なせる訳にはいかねぇんだ……!!」
神崎憐を救う為に、時に形振り構わず行動する姿は、怪盗キッドではなくきっと………彼の本当の姿、〝黒羽快斗〟として名探偵の目に写った。
─── 自分と同じように大切な人を護る為に……
この1点において、彼の気持ちに共感できたコナンは、強気な笑いを見せて、落ち着いている訳を一通り説明した……。
