天空の難破船【完結】
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あれからどれだけ時が経ったんだろう……いまだ私達はハイジャック犯に命を握られている。緊迫した空気をずっと浴びていては精神も疲弊してくる。それでも諦めない、助けはきっと来る……そう信じて大人しくしている。
しかし、ここで自分の体に異変が起きていることに気づく。痒みが強くて、無意識に腕を引っ掻いていた。あぁ……やっぱり……そうだったんだ。あの人が感染したと分かった時、もしかしたらそうなんじゃないかと思っていた。でも飛沫感染だし、咳やくしゃみをしていた訳じゃないからと半信半疑だったが、疑いは確信へと変わる。
感染したとすればあの時……
────── 回想
明かされた真実に戸惑いが大きかった私。耐えきれなくて、蘭と
パシッ
藤「おぉ!君がつけている白い石……光に反射して光沢が見えるな。こりゃ綺麗だな」
私の腕を掴んだのは藤岡さんだった。いきなり男性に腕を掴まれたことに驚きと共に不快感があらわれる。
貴「あの……」
藤「ん?」
貴「腕を離してもらえませんか……?これは大切な物なので……」
藤岡さんに腕を離してもらうよう頼む。この時この人から良くないものも感じ、一刻も早く離れたかった。
……私の大切な宝物に、不躾に触れないで欲しかったから。
藤岡さんは私の態度を見て、「これは失敬……あまりにも綺麗だったから、よく見たくて君の腕に触れちまったよ」と平謝りだった。
その態度に益々藤岡さんを苦手に思ってしまったが、なるべく事を荒立てたくなかったので、そのまま頭を下げて足早に離れる。その後園子達と合流し、ダイニングへと向かったのだ。
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……あの時に感染したのかな。他の可能性も考えられると思うけど、今の私にはこの可能性しか思いつかなかった。それなら本当に藤岡さんはなんて事してくれたんだと、恨めしく思った。
そして今後の事を考えて、視界が歪みそうになり、慌てて拭う。
……やっぱり私も感染していた。そうなるともう皆とは一緒にいられない……。
────── もっと皆の事を知りたかった……
……ここにはいないけど、私の大切な幼馴染や家族の元へも帰れない。
────── 弟と親友がおくる幸せな未来を見届けたかった……
……腕の痣と共に視界に入るは白き石。彼を象徴するムーンストーンを見て、より涙が溢れそうになる。
────── アイツの傍にいたかった……快斗と……もっと一緒に生きていたかった……
……未練なんて沢山ある。でも皆まで巻き込みたくない……ましてやここには小さな子ども達がいる。その事を考えれば、こんな人達への恐怖も薄まった。
園「……憐??」
蘭「??」
突然立ち上がった私を見て、蘭と園子が不安気な面持ちで見上げた。念の為皆と離れて座っていて良かった。園子の一声で、子ども達や銀三さんなど他の人からも私へと注目が集まる。その視線を意に介さず、私はリーダー格の男へ歩いて行った。
この細菌に感染すれば生存は絶望的。今度ばかりは流石の神様も助けてはくれない……頑張ればどうにかなるという問題ではないのだ。
貴「これ……貴方達が持ち去った細菌に感染したの。もうこれ以上感染者を出したくない……だから私を喫煙室へ連れて行ってください……」
私は発疹が出た腕を突き出し、リーダー格の男の前に堂々と立つ。今度は怯えたりしない……涙を堪えて、彼らに喫煙室に連れて行くよう頼んだ。
「ふん……良いだろう。連れてけ……」
私の願いを聞き入れたリーダー格の男は、他の仲間に私を連れて行くよう指示を出す。彼らに前後を挟まれて歩き出す。背中にはサブマシンガンを突き付けられている。そんな事しなくても私は逃げも隠れもしない。
蘭/園「「憐っ!!」」
歩「憐お姉さんっ!!」
蘭や園子、歩美ちゃんの声が私を呼び止める。それでも立ち止まる訳にはいかない……私は皆に安心して欲しくて笑顔を見せる……上手く笑えたかな?
中「憐ちゃんっ!!……何故だ!!どうしてあの子に発疹が出るんだ……っ……」
背後から銀三さんの悔しそうな声が聞こえていたが、それでも私は立ち止まらなかった。
(ごめんなさい皆……)
心の中で謝罪を繰り返しながら、私はテロ組織の人達と一緒にダイニングを出て喫煙室へと向かっ
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───── 喫煙室
「ここだ。大人しくしとけよ」
貴「っ!!」
喫煙室まで連れて行かれた後、乱暴に中に入れられる。そこには水川さんの姿があった。水川さんは私を見て驚いていた。水川さんは彼らに出して欲しいと伝えても、犯人グループがそんな優しい訳でもなく、結局私達は喫煙室に閉じ込められた。
(これで良いのよ……)
後は皆が無事助かれば、この長く辛い時間もようやく終わる。そう考えたら、皆の前で我慢していた涙が頬を伝って落ちた。
「……っ……うっ……っ……!」
一度流れ出した涙は止まらなかった。拭っても拭っても次々と溢れ出る。……どれだけ強がったってやっぱり死ぬのは怖い……。
(私って本当に弱い人間だな……)
発疹は腕だけではなく足にまで広がっていた。いよいよ終わりが近づいているんだと分かる。
長時間に渡る拘束、緊迫した空気感、発疹、刻々と近づく命の終わり、止まることを知らない涙……自分の心の限界を悟る。どうせもうこの世とはお別れ、私の大好きな人達に会えないのだから、せめて夢の中で会いたい……だから私は喫煙室の椅子に腰掛けた。今迄の思い出を振り返りながら瞼を閉じた。
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少しした後、扉が開かれる音がする。その音に反応して薄らと目を開けると、そこには蘭の姿があった。
貴「蘭っ?!」
水「あぁ〜〜!!助けてくれ〜〜!!頼む!!」
蘭を連れてきた犯人グループの一人に駆け寄り、再度喫煙室から出してもらうよう水川さんが頼むも、乱暴に跳ね除けられていた。
「ほら!!お前も入ってろ!!」
蘭「触らないで!!」
私や水川さんの時の扱い同様、乱暴に背中を押され喫煙室に放り込まれる蘭。その蘭に駆け寄って改めてここに来たのか訳を聞いた。
貴「どうして?何で蘭まで……」
蘭「憐と同じ理由だよ……それよりも何で私達に何も言わずに行っちゃったの!」
貴「え……?!」
私の質問に、発疹が出来た腕を見せた蘭。まさか蘭まで感染していたなんて……藤岡さんの全身に発疹が出ていた時に、身を呈して銀三さんを守ってくれた蘭。その時に感染したのか……ってそんなことを考える隙も与えさせず、蘭は私に怒りながら問いかけてくる
蘭「憐だけ一人で座ってるな〜とは思ってたけど、まさかその時から分かってたの?!」
貴「それは!……ごめんなさい!藤岡さんが感染者だと分かった時に、薄らと考えていたの。もしかしたら私も感染しているんじゃないかって……蘭とその……彼を残してスカイデッキを出た後、直ぐに藤岡さんに腕を掴まれちゃって、その時に軽く話もしたから……」
蘭「憐も藤岡さんと会ってたんだ……」
貴「じゃあ蘭も……?」
何と蘭も彼とスカイデッキを出た後に、藤岡さんに腕を掴まれたというのだから、驚きだ。
あの人……蘭にまで不躾に触れていたのね。合意無しに女性の体に触れるなんて、非常識な人で本当に嫌悪感が酷い。
蘭「ねぇ憐……無理して笑わないで……!一人で泣かないでよ……!」
貴「?!……な、何言って……」
蘭「だって私達……友達でしょ?」
貴「!!」
蘭の言葉に、俯いていた顔を上げた。その言葉に酷く既視感を覚える……だってそれは……私が前に蘭に伝えた言葉だからだ。
貴『理由は分からないけど、今蘭が苦しんでいることは分かる。……多分工藤くんの事じゃないの?』
蘭『……なんで、憐は……』
貴『だって私達……友達でしょ?友達が辛そうにしていると、私だって悲しくなるよ。……それに蘭にそんな顔させるなんて、工藤くんぐらいしかいないだろうから』
蘭がコナンくんの正体について、悩んでいた時。コナンくんの正体が工藤くんなんじゃないかと疑っていた時、その悩みを一人で抱え込んでいた。傍から見ていても無理して笑っていることが分かったから……私は友達の力になりたかったから……例えそれが突拍子もない事だとしても信じて相談にのった。
蘭「私や園子は憐の友達なんでしょ?それなら相談して欲しかったよ!」
状況も問題も違うけど、それでも蘭は私に相談して欲しかったと告げた。だって私達は友達だから……友達が悲しんでいたら自分のことように悲しく感じる。力になってあげたいと思う。
蘭「……憐の幼馴染の男の子みたいに、マジックを使って憐を笑顔にさせるのは難しいかもしれないけど、それでもあの男の子は憐の傍にいないんだから……こういう時こそ、私達を頼ってよ……!」
……快斗の事を言っているんだろうな。小さい頃から落ち込んだ時にはいつも快斗が傍にいて、私を励ましてくれていた。確かに私は快斗に救われていたと思う……でも今は快斗や青子、玲於だけじゃない……私を助けてくれる友達は他にもいる。
……自分だって同じような立場で辛くない筈がないのに、今も私を励まそうとしてくれるのが伝わる蘭の優しさが、嬉しかった。
貴「……うん!ありがとうっ蘭!」
私は涙を拭って精一杯笑った。蘭は私の笑顔を見て、安心したように息を吐く。……後どれだけ生きられるか分からないけれど、それでも先程よりは幾分か心が落ち着いている。死への恐怖が薄まっている感覚がある。改めて友人の存在に感謝した。
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コナンside
コ「何だよ面白いものって…………!?」
飛行船の中に入り、今回の犯人達の思惑について考察していた。その途中見つかった爆弾を処理しながらかかってきた服部の電話に答えていると、後から行くっと言っていた怪盗が、俺の所まで来て「面白いモンが見えるぞ!」と声をかけてきた為、服部との電話を中断し、再度飛行船の外に出た。その異様な光景に目を疑う。周りから煙が広がっており、よく調べてみるとスカイデッキの方でハイジャック犯の一人が、発煙筒を焚いていた。
(発煙筒?どういうことだ?)
俺の疑問とは正反対に奴は堂々と立ち、眼下の地上を見下ろしている。
キ「この山を越えれば奈良だ。飛行船が煙吐いてるんで奈良の人達ぶったまげるだろうな……」
コ「たまげるだけじゃない!パニックだ!!」
キ「パニック?」
そんな悠長なことを言っていられない。俺は服部が話していた大阪内での出来事から、キッドにパニックの理由を話す。今や大阪では赤いシャム猫達が自らの犯行をネットに公開したことにより、街中が大パニックを起こしている。殺人バクテリアと爆弾を抱えた飛行船が、大阪上空を現在飛行していることを……そのせいで、現地の人間は東京方面や九州方面へと我先に逃げようとして大移動が起きている。
それは大阪だけじゃない……きっとその他周辺の地域……この奈良県でも大規模な避難行動が予想される。しかし、その話を聞いたキッドは小さく笑いを零す。
キ「まぁ奈良がそうなったとしたら、泥棒にとっちゃ大ラッキーだけどな……」
コ「バーロー!!人がいなくなっても今はどこでもセキュリティーが…………セキュリティー?」
キ「…………」
奴の発言で重要な事実に気がついた。しかし、それは奴とて同じ……。
コ「まさか……だから奈良に?!」
キ「……かもしれねーな」
(そうだとしたら、何でアイツ等こんな事の為に細菌を……?)
