天空の難破船【完結】
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コナンside
警視庁のヘリコプターに乗せてもらい、飛行船を追いかける俺達。ヘリに乗っていたのは顔見知りの佐藤刑事と高木刑事だった。この二人なら理解を得られやすいと思い、内心安堵する。
暫く飛行を続けて、飛行船を追い抜いた頃、俺と〝工藤新一〟に変装したキッドは風向きを調べる為にヘリの窓から腕を出す。丁度いい風向きになった為、ヘリコプターから飛び降りる。飛行船のガス袋部分に飛び降りたものの、ハンググライダーを上手くしまうことが出来ず、風に飛ばされるかと思ったが、どうにかまた飛行船に戻ってくることが出来たのだ。
キ「そんじゃまぁ、グッドラックって事で……」
コ「オメーは行かねーのか?」
飛行船の内部に再び戻る為、上部から並んで歩いている俺達。しかし、キッドは歩みを止めてその場で腰を下ろした。てっきりこのまま一緒に着いてくるのかと思っていた。
奴の目的は宝石を盗み出すことと、神崎の救出……どちらも赤いシャム猫の連中を倒さなければならない。
キ「フッ……俺はここで暫く様子見だ!宝石はリーダーの手に渡っちまったし……
そうだ、ほれ……」
キッドは自身のポケットから小さいシールのようなものを取り出した。それはヒラリと舞い、危うく落としかけそうになるも素早くキャッチする。
コ「なんだこれ?」
キ「次郎吉さんの指紋シールだ」
コ「んなもんどうやって取ったんだ?」
キ「なーに……小さな協力者に頼んでちょいとな……」
キッドの脳裏には数日前の早朝での出来事が浮かんでいた……。
────────────────────────
────── 飛行船に乗る数日前……
普段は黒羽快斗として平和で退屈な日常を、夜は怪盗キッドとしてスリリングな非日常を楽しんでいる彼に突如として舞い込んできたのが、とある新聞の記事。記事は主に二つ……快斗だけではなく、日本中で注目を集めている記事だった。ひとつは昔壊滅した筈のバイオテロ組織、赤いシャム猫が細菌を持ち去ったという記事だ。その細菌は感染すれば致死率80%、治療法はいまだ見つかっていないという恐ろしい代物。世間の目が大きく向くのも道理といえる。
もうひとつは、鈴木財閥が世界最大の飛行船を作り上げたという記事。その飛行船を舞台に鈴木次郎吉は、その怪盗キッドに挑戦状を叩きつけた。
吹っかけられた大勝負、逃げ出しては怪盗キッドの名が廃る……初代怪盗キッドの黒羽盗一の後継者、黒羽快斗は叩きつけられた挑戦状にYESと返した。
年齢、性別、体格、どんな人物だろうと関係ない……その人の声色、所作まで完璧に真似てしまう彼の変装によって、どんなに固い警備だろうと、空を飛ぶ飛行船だろうと関係ない。あの高校生探偵工藤新一も認める変装技術を駆使して、今回もどうやって盗もうか……
快(恐らくあの爺さん、今回もまた厄介な罠を仕掛けているだろうな。例えば、ビックジュエルを展示するケースは、一見変哲もないようなガラスケースと見せかけて……指紋認証式のガラスケースとかな……!)
貴「ちょっと快斗!いつまで座ってるの?ほら学校に行くよ!」
快「わぁーってるよ!」
登校前、いつものように朝食を食べによった神崎家。憐の母親が用意した朝食をゆっくり味わった快斗は、いまだ椅子に腰掛けながら考えていた。そこで先に食べ終えた憐から急かされるよう声をかけられる。その声に快斗もようやく席を立つ……朝食を用意した憐の母親にお礼を言うことも忘れずに……。
その後憐と快斗は家を出て、学校へと向かうべく、いつものように住宅街の道を歩き始める。しかし、ここ最近……〝以前〟とは異なる光景が見られるようになる。
現在憐と快斗は二人で登校している……それには訳があった……。
青子と玲於が付き合い始めてから、快斗と憐は二人と登校時間をずらすようになった。玲於と青子はまたいつものように幼馴染4人で学校に行きたいと申し出たが、憐も快斗も何を言っているんだと突き返す。
貴「何言ってるのよ!……良い?二人っきりの登校は最初にあるデートイベントなのよ?それを楽しまずしていつ楽しむのよ!これまでに幼馴染の時間は十分取れてるのだから、今度は彼氏彼女として……青春しなさいよね!私と快斗の事は気にしなくていいから!ね?良いでしょ快斗……」
快「……そうだな。どうせ俺はこの後も学校で会うしよ……それまで二人の時間を楽しめよ!
(憐の奴……他人の恋愛は気合い入れて応援すっからな……大好きな青子なら尚更だろうな)」
憐と快斗の気遣いに、照れながらも素直に感謝を見せる玲於と青子。二人の気遣いに甘えて、週の何回かは先に二人で登校するようになったのだ。
貴(……これで快斗は私と登校する理由も無くなったよね……さてこれからどうしようかな……言われるより言う方が傷つかないから先に言おうかな……)
快(玲於と青子に感謝だな……オメーらみたいに俺も……今度こそ憐と……)
互いにすれ違った思いを抱えているとは夢にも思わずに……、結局この時のすれ違いを解決し、今は普通に二人で登校しているが、それはまた別の機会にお見せしよう……
とにかく憐と快斗は二人で会話を弾ませながら、公園のそばの道を歩いていた。ここは普段とは違う通り道……快斗が憐にたまには違う道から行くのはどうだと提案し、憐は何の疑いもせずその提案にのった。何故そんな提案をしたかと言えば、この公園に来たるある人物の指紋を採取するためだった。
快(もうすぐだな……もうすぐここであの爺さんが……)
貴「はぁ〜……今日は数学の小テストある〜…どうしよう……」
快「……ったく何回言うんだよオメーは……昨日からずっと言ってんじゃねーか!」
貴「しょうがないでしょ〜……苦手な分野だし、 快斗に教えて貰ったけど、ちょっとでも応用されたら解ける自信ない……。良いよね快斗は〜……私も快斗みたいに頭が良かったらな〜……」
快「そんな事言ってるうちは無理だろーな!」
貴「!!……そんな事分かってるよ!快斗の馬鹿!もう知らない!」
目的の為に待ちつつも、いつものように憐との会話を楽しんでいた快斗。しかし、今日は憐が怒ってしまい、先に自分を置いてスタスタと歩くスピードを早めている。
快「おい待てよ憐!ここはいつもの道じゃねぇんだから、お前が先行っても迷子になるだけだぜ」
憐の後ろから最もな事を言う快斗。そう……今回快斗の提案で普段とは全く違う道から学校に行こうとする二人。特に方向音痴の憐は、彼からの指摘で途端に足を止めた。
貴「!!……うぅ……そうだよ、私一人で行っても迷子になって戻ってこれないかもしれない……もう〜!快斗のバーーカ!!」
快「ガキかよオメーは……!」
青子や玲於の前だと比較的大人な対応をする憐だが、快斗の前だと途端に子どもっぽい態度になるのは、彼の前だと素直になれなかったり、別に隠す必要もないのだと憐が判断しているからだ。
すると遂に目的の人物が公園へと姿を現す。朝早くから愛犬ルパンと共に、公園に出向いて体操をし始めた鈴木次郎吉の姿があった。
快(よし、来たな爺さん!じゃあ早速……おっ!あんな所に、丁度良い坊主がいるじゃねーか!……ケケケッ!あの坊主に手伝ってもらうとするか)
憐が怒ってそっぽを向いている隙に遊具で遊んでいる少年に声をかけた。快斗からいきなり声を掛けられた少年は、警戒心をあらわにする。
「……お兄ちゃん誰?知らない人に声かけられても、答えるなって言われてるんだけど……」
快「おいおい……確かに間違っちゃねーけど、俺は怪しい奴じゃねぇって!ちょっとお前に頼みたいことがあるだけだよ!」
「え〜〜〜?!だってママが、怪しい人は自分の事怪しくないって言うから気をつけなさいって!」
快「しっかり子どもの教育が行き届いてんな!逆に安心するぜ……ってそんな事言ってる場合じゃなくてだなー!」
快(早くしねぇと爺さんが帰っちまう!どうにかしねーと……そうだ!)
いまだ不信感を見せる少年に対して、快斗はある行動を思いつく……。
それは見る人の心震わせ、ワクワクさせる……彼は奇跡を起こす
パチンッ!
一度指を鳴らせば、もう1羽快斗の手にのっていた。
「うわぁ〜〜〜!!凄い〜〜〜!!」
快「へへへっ!どうだ坊主〜?これでもう俺は怪しい奴じゃないだろう?」
快斗は少年にたくさんの手品を見せてあげた。まだ比較的幼い少年には、彼の手から織り成す世界に、警戒していた態度を改めて、彼に心を開いた。
「お兄ちゃん凄いね〜!まるで魔法使いみたいだ!」
少年の嘘偽りのない素直な賞賛に、彼は微笑んだ。どうにか間に合いそうだな……いまだ向こうの方で体操をしている鈴木次郎吉の姿を目で捉える。
快「そんな俺の願いを君は聞いてくれるかな……?」
「勿論だよ〜〜!!」
こうしてかの少年の心を掴んだ黒羽快斗は、少年に自分で持っていたサッカーボールを渡し、体操している次郎吉の前で転がすように頼む。次郎吉がボールを拾ったらすぐこちらに戻すように伝え、少年を次郎吉の元へと送り出した。少年は言われた通りに動き、次郎吉が拾ったサッカーボールを快斗に手渡した。
「ありがとうね〜お兄ちゃん!また魔法を見せてね〜!!」
少年はボールを快斗に渡した後、大きく手を振って公園から駆け出して行った。少年に同じように手を振った快斗は、手渡されたボールを見て笑った。
快(上手くいったぜ……後はこのサッカーボールについている爺さんの指紋を取ってシールにすれば完璧……)
彼は自分の手際の良さに密かに誇っていた時、背後から手を叩く音が聞こえた。
パチパチ……
貴「さすが快斗のマジックね……」
振り返るとベンチに座っていた憐が、快斗のマジックを褒めていた。憐は怒って機嫌を悪くするも、一人では迷子になってしまう可能性が高い為、快斗に再び呼びかけようとする。しかし、その時既に彼は少年と話していた。これは長くなりそうだと思い、声をかけずに見守っていると、彼は少年に沢山のマジックを見せていたのだ。
少年と快斗が楽しく話している様子を見て、へそを曲げていた憐はようやく笑みを浮かべた。子どもを楽しませようとマジックをやる彼の様子を見て、微笑ましくなり気づけばすっかり機嫌も戻っていたのだ。快斗は憐の所まで戻り、隣に座った。
貴「あの子……目がとってもキラキラしてた。……まるで幼い頃の私が、快斗や盗一さんにマジックを見せて貰った時みたいに……」
そう語る憐は、穏やかに笑っていた。彼女は快斗のマジックによって目を輝かせた少年を見て、昔の自分の様子を思い出したのだ。懐かしそうに語る憐を見て、快斗も同じように過去の記憶を振り返る。
貴『うわぁ〜!!きれい〜!!快斗も快斗パパもすごいね〜!!まるで魔法使いさんみたい!!』
幼い頃の憐は自分や自分の父親の手品を見て、いつも目を輝かせて喜んでくれていた。そんな彼女の喜ぶ姿を見たくて、色んなマジックを覚えては彼女に真っ先に見せに行っていたのだから。
快「……そうだな、確かにあの坊主は似ていたかもしれねぇ……でもな、幼い頃の憐だからって似ていた訳じゃない。今も昔もお前は変わらねぇよ……」
人も情勢も常日頃移り変わっている。成長し、変化を求められるこの時代、変わらないでいることの方が難しいかもしれない。俺達だって昔と比べ変わった所もある……俺は怪盗キッドを始めて、憐は俺達とは別の高校に行きだした。青子と玲於も付き合い始め、関係性が変わった。
しかし、確かに変わらないものも存在する……。
────── 今までずっと……俺のマジックを見ている時の憐は変わらないんだ……
貴「変わらないって?」
快「べ、別に……あれだよ、お前は昔と変わらずガキのまんまってことだよ!……とにかく!用事も済んだし、さっさと学校に行こうぜ」
憐が快斗の言葉の真意を知るのは、少し先の未来……。赤く染った顔を見られないよう、快斗はベンチから立ち上がって歩き出す。
貴「何よそれ……私が昔と変わらず子どものままって言いたいってこと!?何でアンタにそんな事言われなきゃなんないのよ!!言っておくけど、快斗だって小さい頃からずっと変わってないからね!? 」
憐が快斗とは違う意味で顔を赤くして、彼の後を追う。憐の言葉にどういうことだと快斗は反論する。
快「はぁ〜?!俺がガキのままって言いてぇのかよ!!」
貴「そうよ!どうせまだ青子や他の女の子達のスカート捲りとかしてるんでしょ!小学生の時と変わらないじゃない!!」
快「……し、してねぇーって!!」
貴「嘘ね……青子からの証言だってあるのよ!」
後から追いかけていつの間にか隣に並ぶ。言い合いしながらも、結局一緒に登校することが彼らの今の日常だった……。
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コナンside
キ「大事に扱ってくれよ……?色々と苦労したんでな」
キッドは遠くを見つめて、しみじみと呟いた。軽薄な笑みではなく、心做しか大切な記憶を振り返るかのような様子だった。
キ「今回は指紋認証式のガラスケースって読みは、ズバリ当たったんだが……もう用ねーから、オメーにやるよ!」
コ「……」
キ「にしてもお前の大事な彼女、気をつけてやった方がいいぜ?」
コ「えっ?」
突如出た怪盗の忠告に耳を傾ける。大事な彼女というのは蘭のことだろう。
キ「あの藤岡って男に両腕を掴まれてさ……けどすぐ飛び退いたし、咳やくしゃみした訳じゃねぇから伝染っちゃいねぇと思うけどな。一応知らせとくぜ……」
コ「…………」
もしかしたら蘭も……細菌に感染した可能性があるのか……?でもキッドの話では咳やくしゃみをうけた訳じゃねぇし、一応頭の片隅に入れておこう。
俺は飛行船の内部に入ろうと扉の柄の部分に触れた時、再度奴は口を開いた。
キ「なぁ、名探偵……一つ頼んでもいいか?」
コ「なんだよ……俺はもう行くぞ」
早く行かねぇと蘭達が心配だ。俺は急かすように返答を促した。
キ「ほんの些細な事でも良い……憐の事で何か気づいたら、俺に教えてくれ」
キッドが俺に依頼した内容……それは神崎の事だった。そんな事俺に頼まなくとも、自分で直接確認すれば良い。
コ「……オメーも来れば良いじゃねぇか」
俺はキッドに一緒に来るように促すも、奴は首を横に振った。
キ「言っただろう?暫く様子見するって……俺は慎重派なんでな。もう少し情報を集めてから行く……先にお前の方が憐に会うことになる。些細なことでも良い……気になることがあれば、俺に教えてくれ」
コ「……もしかして、お前が佐久島で考え込んでたのは神崎の事なのか」
キ「……ここまで戻るのに手伝ってやったんだから、これぐらい良いだろ?というかオメー言ったよな?憐を助ける事なら協力しても良いと……」
奴は再度念押しするかのように言葉を繋いだ。
キ「俺に呼びかけるだけで良い……聞いてっから」
コ「お前それは……!?」
まさか俺に盗聴器仕掛けたのか?!いつの間に…………俺を抱き上げて、飛行船に飛び降りた時か!俺は睨みつけるように奴を見上げる。
キ「そう睨むなって……とにかく頼むぜ名探偵……!」
俺はキッドの声を背にして、飛行船内部へと通ずる扉を開けて、中へと足を踏み入れた。
