天空の難破船【完結】
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蘭「新一!!」
ウェイターは窓から飛び降りた。放り出されたコナンくんを追って……いやただのウェイターではない……私と蘭だけが知っている彼の本当の姿。
蘭が彼の〝本当の名〟を呟く……。確かにそう名乗った……だけど、本当にあの人は〝工藤新一〟くんなんだろうか……?
極限状態の中、勘が冴え渡り嫌な胸騒ぎを感じた。案の定コナンくんを掴みあげた男は、窓へと歩き始めた。
(まさかコナンくんを窓から放り投げるつもり……?!)
貴『駄目!!やめて……!!』
男に急いで駆け寄ろうとした瞬間……
『憐!』
『俺が行く!お前は待ってろ!』
彼は私の〝名〟を呼び、手を掴んだ。そして代わりに自分が行くと言い出し、私の先を歩いていった。
────── 一瞬だけ掴まれた安心出来る温もり……
────── 私の事を〝苗字〟じゃなく、〝名前〟で呼んだ……しかもそれが当たり前であるかのように……
工藤くんにしては、違和感のある行動、普段使わない呼称……もしかして……、彼は…………
(工藤くん……じゃない……?)
そんな考えが頭をよぎる。そうこうしている内にコナンくんは窓から落とされてしまった。どうしよう!!どうしたらコナンくんを助けられる……?
貴「そんな……コナンくんっ……」
起こってしまった悲しい現実に座り込んでしまった。あの子が苦しむ姿を見たくないと、私はそれ以上窓に近寄れず、俯いてしまう。ポタポタと涙は落ち、 どうしようもなく項垂れていると力強く聞こえた彼の声に顔を上げた。
ウェイターの彼は、コナンくんが落とされた窓から躊躇なく飛び降りていた。
中「キッド!!」
園「流石はキッド様ね!!」
次「敵ながら天晴れじゃ!!」
元「やったぜ!!」
光「ナイスキャッチです!!」
次々と窓に近寄り、コナンくん達を見下ろしている。銀三さん達のセリフからどうやら彼が怪盗だと分かり、その彼がコナンくんを助けたようだ。
ようやく私も立ち上がり、ノロノロと歩き窓に近寄る。眼下には白い物が飛んでいることが確認できた。恐らくあれが怪盗なのだろう……
そしてようやく私は避けていた彼の名前を呟く。
「キッド……」
キッドのおかげでコナンくんは助かる……とにかく二人が無事で本当に良かったっ……!
私は人知れず、そっと安堵の息を漏らし、握られた手の温もりを思い出すかのように、その部分にそっと触れた……。
────────────────────────
コナンside
コ「くっ!!」
意図も簡単に空中に放り投げ出された。この小さな体では抵抗しても大の大人相手には敵わない。蘭が悲痛な声で俺の名前を叫んだ。
(クソッ!このままじゃ……何かないのか?!)
必死に考え、体をジタバタさせても変わらず落下し続けている。
パシッ!
足を掴まれ、誰かに抱え込まれる。そしてそのまま雲の中に突っ込んだ。雲を抜けた先、上を見上げてみるとそこには白い翼を持った怪盗キッドの姿があった。
キ「まさか窓から放り投げるとはな……どうする?名探偵……このまま降参か?」
コ「んな訳ねぇだろ!!今すぐ飛行船に戻れ!!」
何を巫山戯たことを抜かしているのか……あんなテロ組織がいる飛行船の中に蘭達を置いてけっかよ!!俺はキッドに飛行船に戻るよう命令する。しかし、キッドの返答は否……
キ「無茶言うな!俺のハンググライダーはエンジン付きじゃないんだ……生きてるだけでもラッキーと思え!!」
コ「何っ?!…………」
奴の言葉に反論しようとするも、奴の表情を見て思わず押し黙る。
キ「チッ……俺だってな!!戻れるなら今すぐ戻りてぇよ…………」
そこにはいつもの不敵な笑みを浮かべた奴ではなく、苦渋に満ちた表情を浮かべ、悔しそうに呟くキッドの姿があった。俺はすぐにキッドが発した言葉の意味が分かり、何も言えず口を噤んだ。
(そうか……蘭達だけじゃなく、あの飛行船には神崎も残っている……コイツだって本当は、一刻も早く戻りたいんだ……)
自分と同じような思いを持つキッドの気持ちを察して、俺は静かに抱えられたまま、ある島へと辿り着く。
────── 愛知県 佐久島
俺達は、愛知県佐久島の三河湾田定公園に降り立った。上空を見上げると、先程乗っていた飛行船の姿が目に写る。
(真っ直ぐ西へ向かっている……やはり行先は大阪か……)
となるとあの男に情報を共有しておく必要がある。俺は大阪の高校生探偵、服部平次に電話をかけて現状と経緯を説明した。
平『なんやとォ?!ホンマかそれ!?』
コ『あぁ……爆弾と殺人バクテリアとハイジャック犯を乗せた飛行船が、そっちに向かってんだよ!』
平『そ、そりゃ豪勢やのォ……豚、イカ、タコ、ソバのミッスクモダン焼きみたいなもんやなぁ……』
……つまり犯罪の詰め合わせみたいな事を言いたいのだろうか。あながち間違ってはいない……そんな危険な場所に蘭や子ども達を置いてきてしまったのだから。一刻も早く戻らなければ……それはそこの怪盗もよく思っている事だろう。
今は現地のヤギと戯れているが、その真意は見えてこない……
何を考えているのか……ただおちゃらけた態度をしても心中穏やかでは無いはず。あの飛行船には奴の大切な神崎が乗ってるんだからな……。
コ「既に感染者も二人……」
キ「3人だ……」
コ「……え?」
キ「水川っていうディレクターも、右の拳に発疹が出た」
コ「……って事だ。一応知らせておこうと思ってな」
飛行船は大阪を最終地点としている。最悪の場合のことを考えて服部に共有する。感染者は3人……
藤岡さん、ウェイトレス、水川さん、他に出ていないのが幸いだ……
服『で、お前は平気なんか?』
コ『あぁ、今のところはな……』
───────────────────────
キ(どうする……俺のハンググライダーはエンジン付きじゃないから、今も飛んでいる飛行船を追いかけるのは無理だ……かと言ってこのままここにいるのも……やっぱり名探偵の案に頼るしかなさそうだな)
キッドはヤギと戯れながら今後の動向について考えていた。しかし、自身では良い考えが思い浮かばず、コナンの考案するアイデアにかけることとした。そのコナンは今、電話で平次に情報共有をしている。その間、キッドはある事を考えていた。
キ(それにしても、やけに引っかかんな……)
彼には心の中でずっとある事が引っかかていた。
それは初めて感染者が出た時、ルポライターの藤岡という男が、全身に発疹が出て助けを求めていた時のこと。藤岡は助けを求めて中森へと近寄っていく……その二人の間に割って入ったのが憐だった。憐は両腕を伸ばし中森に近づけさせないように必死だった。その時の言動に謎の違和感を覚えているキッド。
キ(何であの時憐はあんな事を……?)
中『何考えとるんだ憐ちゃん!!もう少しで、憐ちゃんまで感染するかもしれなかったんだぞ……!!』
貴『!!……ごめんなさい銀三さん!!でも、これ以上感染者を出したくないと思ったら、体が勝手に……』
キ(〝これ以上感染者を出したくないと思ったら……〟……か。何でこんなにも引っかかってるんだ?
憐は中森警部を庇って前に出た。中森警部が感染していなくなる事を恐れての行動……〝父親〟がいなくなることへの恐怖。恐らくあの時憐は、俺の親父を思い出して……)
キッドはここまで考えて一瞬過去の記憶を呼び起こそうとするも、今やるべき事に目を向ける為に、すぐに思考を切り替えた。
キ(いや今は飛行船に戻ってアイツを助ける方法を考えないと……ん?)
上空からバタバタと音が聞こえる。見上げてみると、一台のヘリコプターが飛行船の後を追うように飛行していた。
キ「ありゃ警察のヘリだな……飛行船を追ってるのか……」
その言葉にコナンは素早く眼鏡に手をかける。コナンがかけている犯人追跡用眼鏡の機能の一つに、拡大機能がある。拡大機能によって分かったことは、あのヘリコプターは警視庁のヘリコプターだと言うこと。
コ「悪い!またかける!」
そう言って平次との電話を乱暴に切ったコナン。後に平次から文句を言われてることも知らずに……。
すぐにある人物へと電話をかけた。コール音が何度かして、相手へと繋がり明朗な声が聞こえてきた。
目『はい、目暮……』
コ『目暮警部!工藤です』
目『おぉ、工藤くん!』
コナンは蝶ネクタイ型変声機を使い、元の姿の工藤新一の声に変えて、目暮警部に電話をかけた。その横で静かに見守っているキッド。
コ『今、愛知県の佐久島にいるんですが、飛行船を追って警視庁のヘリが……』
目『あぁ……佐藤くんと高木くんが乗っている。実はな工藤くん……』
コ『ハイジャックの件は知っています。そこで警部にお願いしたい事が……』
目『ん?なんだね……』
コ『僕もそのヘリに乗せて欲しいんです……この〝工藤新一〟を……』
コナンはなんて事ないように目暮へと伝えた。
────────────────────────
快斗side
今、隣の小さな名探偵は何と言ったのか……聞き間違いでなければ、ここには居ない人物の名前を上げて、警視庁のヘリコプターに乗せてくれ……だと……?
キ「どこに工藤新一がいるんだよ?オメーだろ?工藤新一は……」
一体どういうつもりなのか、警察への連絡を終えた名探偵を問い詰める。
コ「だーかーら、俺に化けてくれって言ってんだよ!!」
なるほど……工藤新一にそっくりな俺を工藤新一に変装させて、警視庁のヘリコプターに乗り込む気か。というかマジかよ……
キ「ったく……またオメーに化けんのかよ……」
コ「……え?」
キ「あっいや……手を貸すのは良いが、俺の仕事の邪魔すんじゃねーぜ?」
全く気が進まない為、つい愚痴のように零してしまう。しかし、そのせいで名探偵に不審がられた為、慌てて俺の仕事を邪魔しないように釘を刺す。あの危険地帯から憐を救い出す事も大切だが、仕事だって重要な事だ。俺は両方こなせるよう動くのみ。
コ「そいつは保証出来ねーけど、なるべく努力はするよ……」
そこは努力じゃなくて言い切ってくれよ……何か不安だぜ。俺の呆れた様子を察したのか、名探偵は真剣な表情へと変わる。
コ「お前が大切にしている神崎を助ける事だったら協力してやっても良いぜ……」
キ「!!」
コ「神崎を一刻も早く助け出したいんだろう?彼女を助けるためにも、ちゃんと俺に協力しろよ!」
……コイツ、この前俺の正体が分かったから、俺が憐について考えていることも、敢えて口に出さず仕事の事しか言ってないことも、しっかり分かってやがる。これだから探偵は嫌なんだよ……!真実の為なら、人の心に無遠慮に土足で入ってきて、得意気に宣う……今のだって、ぜってーお前の気持ち、お見通しだぜ!とか思ってんだろうな……
キ「ったく……元々高校生とはいえ、今は体の小さい坊主の癖に、生意気に何言ってんだか……」
正直間違ってはいないが、素直に認めるのも、そして尊大な態度を取る
キ「とにかく頼むぜ名探偵……俺はお前の案にのってやんだからな!」
だが名探偵の出した案ならば、飛行船に戻れる……。微かな希望の光が差し込んできた。
俺は首にかけているアメジストを服の中から取り出す。以前ポケットの中に入れていたアメジストだが、失くして名探偵の彼女に拾われた経験から、ポケットの中はやめてネックレスとして首にかけることにした。これなら失くす心配もないし、黒羽快斗の時でも、怪盗キッドの時でも服の中に入れて分からないようにしてあるから、憐に見られる可能性もない。
憐のアルファベットが彫られているアイツのアメジストを、掌の中に入れてグッと握り込む。これは俺の決意を表す……
(待ってろよ憐……!もうすぐお前の元に行くからな……)
俺は名探偵の指示通り、今回2回目の〝工藤新一〟に変装して、小さな名探偵と一緒に警視庁のヘリコプターに乗り込んで、飛行船の後を追った……。
