天空の難破船【完結】
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「動くな!!」
「!!!」
流れていた涙を拭っていると、猛々しい声と共に備え付けのドアも乱暴に開かれる。中に入ってきたのは、複数の黒服の者達。手にはサブマシンガンのような機関銃を持っている。如何にもな彼等の醸し出す物々しい雰囲気に、その場の全員の動きが止まる。
次「誰じゃ汝等は?!」
次郎吉さんが声を張上げる。主催の次郎吉さんが知らないってことは、招かれざる客ってことになる。まぁ人を殺せる武器を躊躇なく人に向けている時点で普通の人ではないだろう。
「アンプルは見つかったか?」
複数人の黒服の集団の恐らくリーダー格の男が挑発するように質問を返す。その言葉に銀三さんが「赤いシャム猫……」と呟いた。
(赤いシャム猫って、ニュースでやってたバイオテロ組織の名前?!)
「この船内に爆弾を仕掛けた。大人しく言う事を聞いていれば、爆破したりはしない……」
爆弾を仕掛けたとリーダー格の男が話す。異様な空気が船内を満たす中、次郎吉さんの愛犬ルパンが吠えていた。また急にその男が発砲する。
西「きゃあ!!」
「大人しくしろと言ったはずだ……」
(下手に動けば、さっきみたいに発砲されかねない……)
少しでも彼等に気づかれれば撃たれてしまう。下手に動けない中、ある違和感に気がついた。
(子ども達がいない……?!)
その事に気づくもリーダー格の男から、船内にいる乗務員全員をダイニングに集めるよう指示が下される。次郎吉さんは指示に従い、館内放送を流し、全乗務員をダイニングに集めた。
先程感染者が出たダイニングに全乗務員と私達が集めさせられる。
「この飛行船は、我々赤いシャム猫がハイジャックした!!」
リーダー格の男は高らかに叫んだ。それにしても何でバイオテロ組織が、この飛行船内にいるのだろうか?そんな疑問を持ちつつも、他の疑問もあった。
(子ども達って言っても哀ちゃんは博士と一緒にいるのね……なら哀ちゃんなら皆の場所を知ってるかもしれない)
そう思い、私はさりげなく哀ちゃんと博士の傍による。丁度その時リーダー格の男から、全員携帯電話を出すよう指示が飛ぶ。マシンガンを突きつけられている以上、誰も逆らえない。大人しくそれぞれ携帯電話を出された袋の中に入れる。私も皆と同じように携帯を袋の中に入れた。
哀「私、持ってない……」
小さい子どもの携帯まで回収しようとするなんて、用心深い奴らね。すると哀ちゃんは博士の後ろに隠れ、何かを取り出し、誰かへ連絡しているようだ。
(これ、探偵バッジ!確か歩美ちゃんが言ってた……通信機みたいなもので探偵バッジを持っている人同士で連絡がとれる……じゃあ相手は子ども達の誰か……私ならこの状況で連絡取るとしたら……コナンくん!)
そうか……あの子に連絡してるとしたら、きっと頭の良いコナンくんの事だ……わざわざ危険の及ぶこの場所には来ないだろう。歩美ちゃん達と一緒にいることも予想できる……とりあえず皆が安全そうで安心した。
しかし、こちらの状況はより深刻なことになっている。リーダー格の男が語ったこの飛行船をハイジャックした理由……それは鈴木財閥への恨み。聞けば、赤いシャム猫はかつて財閥を標的に活動していたテロ組織。10年前に幹部全員が逮捕されて壊滅した組織で、その壊滅に手を貸していたのが次郎吉さんだった。
完璧な逆恨みだ……次郎吉さんは何も悪くない。何て卑劣な集団なのだろうか。益々この犯人達には同情の余地はない。
次郎吉さんが自ら人質になることを提案するが、リーダー格の男は応じなかった。銀三さんに警察に連絡することを要求する。妙な動きを見せたらこの飛行船を爆破するという脅迫付きだった。更にリーダー格の男は殺人バクテリアだと言って大きなカプセルのようなものを取り出した。
殺人バクテリアに爆弾……本当に用心深い連中ね。これで隙を見て取り押さえるなんてことも容易に出来なくなった。その後リーダー格の男が次郎吉さんを連れてどこかへ行ってしまった。
園「ねぇ、あの子達は?」
阿「心配いらん……コナンくんがついとる」
蘭「…………」
貴「やっぱりそうなのね……それなら哀ちゃん」
哀「……何?」
哀ちゃんとは、今までちゃんと話したことは無かった。何処か小学生らしくない大人っぽい哀ちゃん。これも歩美ちゃん情報だけど、コナンくんと一緒でとても頭が良いらしい。……それでも彼女は幼い子どもなのだから最優先に守られなければならない。他の子ども達が無事だと分かった今、この子もちゃんと守らないと……。
貴「大丈夫だからね……きっと助かるから!他の子達にも、そう言ってここに近づかないように伝えてくれると嬉しいな……」
私はしゃがんで哀ちゃんと同じ目線にして、小さい声で話す。今は何の根拠もない無責任に聞こえる言葉かもしれないけれど、きっと反撃のチャンスはある。銀三さんも居るし、警察の人達がいるんだから大丈夫だ。後は私の勘がそう告げている……きっと大丈夫だと……。
哀「……えぇ(……小学生だと思って気遣ってくれているけれど、私よりも彼女の方が限界に近そうね……)」
哀は密かに横目で憐の手を確認する。少しだが震えている。誰よりもこの緊張感溢れる空気に参っているのは、彼女の方だと哀は思考する。
哀ちゃんに伝えていると、水川さんが自身の手を摩っているのが見えた。それを石本さんが指摘すると、水川さんは慌てて手を隠そうとするもハイジャックしたメンバーの一人に、グイッと掴まれて確認されていた。水川さんの手には赤い発疹が出ていた。
更に西谷さんからタバコの臭いがしたと新たな証言が加わり、水川さんが喫煙室に行っていた疑惑が発生する。そして咳まで始めた水川さんに皆が注目していると、背後から銃声が聞こえた。
振り返るとリーダー格の男と次郎吉さんが戻ってきた。リーダー格の男が蹲っている水川さんの首元に手刀し、気絶させていた。そして喫煙室に放り込まれるよう指示を出していた。
水川さんが喫煙室に連れて行かれた後、急に西谷さんが話し始める。
西「ねぇ……そういえば子ども達がいないんじゃない?」
「子ども?」
西「あ、えぇ……確かあの子と同じくらいの男の子が3人と女の子が1人いた筈……」
西谷さんが話し始めた内容はこの場にいない子ども達について。ご丁寧に男女比までペラペラと話していた。
(どうしよう……ハイジャック犯達に子ども達の存在がバレた……)
西谷さんには悪いけど、なんて余計なことをしてくれたのだろうと恨めしい気持ちで彼女を見た。
そして案の定子ども達の存在がバレて、捜索される羽目になった。だけど現状を嘆いても仕方ない。
(せめて哀ちゃんだけでも守らなきゃ……)
博士と並んで哀ちゃんを見えないように盾になる。
阿「余計なことを……」
哀「江戸川くん!貴方達がいないのがバレたわよ。江戸川くん!江戸川くん!男が二人捜しに…………っ!!!」
哀ちゃんの声が途切れる。哀ちゃんが持っていたはずの探偵バッジが短髪女性のウェイトレスに取られていた。
「シャレた事をするじゃない……」
(っ!!……この人もハイジャック犯達の仲間だったのね)
阿「君!?」
気づかなかった……黒服の集団に気を取られていて、まさか一般人だと思っていたウェイトレスに取られるなんて……!?
ヤバイ……哀ちゃんが連絡取っている所を奴等に見られた!哀ちゃんに注目がいく前に何とかしなくちゃ……そんな思いで私はまた咄嗟に体と口が動いたのだ。
貴「私が!この子に頼んだ……連絡取れるなら取って欲しいって!携帯は貴方達に取られちゃったしね……だからこの子は悪くない!悪いのは頼んだ私だよ!」
哀ちゃんに被害がいかなければそれで良いと、私は短絡的に思っていた。
哀「!!(……私を守る為に……)」
蘭/園/阿/「「「!!」」」
キ「……っ!(憐……)」
「フン……アンタがこの子の保護者って訳ね。ならそれなりに責任取ってもらおうじゃない!!」
パンッ!!
貴「うっ……」
ウェイトレスの女は、私の頬を思いっ切り平手打ちした。そのせいで立っていられず、床に倒れ込んだ。
蘭「大丈夫憐!?」
園「女の子の顔を殴るなんて、何考えてんのよ!」
蘭と園子が心配して駆け寄ってくる。殴ってきたのが女で良かった……それなりの痛みだったから。これが男で、更に殴られたのが哀ちゃんだったら、もっと酷い傷になってたと思うからこれで良い……。私は軽く蘭と園子にお礼を言って立ち上がろうとすると、哀ちゃんが近くまで来てくれて手を貸してくれた。
哀「ごめんなさい……私を庇ったせいで……」
哀ちゃんは私に申し訳なさそうに謝ってくれた。哀ちゃんが謝る理由はどこにもない。寧ろ私が頼んでやって貰ったんだから謝らないと。私は哀ちゃんの手を借りて、立ち上がる。
貴「……こんなの平気だよ!痛くも痒くもないんだから!それより怪我は無い?ごめんね……私が頼んだせいで、大切な探偵バッジ取られちゃって……」
哀「……それは大丈夫(……彼女も少しだけ似ている……お姉ちゃん……)」
「いつまで強がっていられるかしらね……?今度妙な真似をしたら殺すわよ」
とりあえず哀ちゃんに怪我なくて良かった……!そう思っていると、私を殴ってきたウェイトレスの女が、拳銃を取り出し、装填させながら脅迫してきた。もう無茶な真似は出来ない……。
貴「……っ!(どうしよう!もう私には手立てが思い付かない……)」
悔しいがもう私ではこいつらに勝てる手段が分からない……こんな奴等に命を握られてるなんて……どうにか皆が生き残る術はないのだろうか……?
(どうしたらいいの……快斗……)
殴られた頬がヒリヒリ痛む。私は手首に巻いたムーンストーン付きの赤いミサンガを外し、祈るように手を合わせていた……ここにはいない彼の名前を唱えながら……必死に考えを巡らせていた。
───────────────────────
快斗side
乾いた音が響き渡り、目の前の光景が瞳に焼き付く。
パンッ!
貴「うっ……」
蘭「大丈夫?憐!」
園「女の子の顔を殴るなんて、何考えてんのよ!」
殴られた頬を抑えながら倒れ込む憐。俺はそれをただ見ていることしか出来なかった。
名探偵と仲が良い小さな彼女を守る為に、敢えて自分に敵意を向けさせるようにした憐。
……子ども好きなアイツには耐えられなかったんだ。憐が倒れた直後、本当は今すぐにでも駆け寄りたかった……しかし、今の俺はアイツの幼馴染の黒羽快斗の姿じゃない。飛行船の乗務員……ただのウェイターだ。そんな関係の俺がアイツに一目散に駆け寄れば、不自然に写るだろう。名探偵にも指摘されているが、俺は憐が居ると、憐最優先に動いてしまうから、今のこの状況下、ハイジャック犯の仲間が何人いるのか分からない中で、正体がバレそうな行動は避けなければならない。だから俺は一歩も動かなかった。
その間憐に駆け寄ったのは名探偵の彼女とお嬢様。その時お嬢様が言った言葉に全力で賛同したい。本来であれば俺が憐を助けたかった。体も表情も動いていないが、腸が煮えくり返る程、俺は怒っていた。ただ素人に見破られる程の表情管理はしていないのと、今の俺はただのウェイター……観察眼が鋭い名探偵なら兎も角、他の人間は気づかない。
表情じゃなくとも、両手を見られたら気づかれるかもしれない。……拳を握りしめて必死に自分の理性を抑えていた。
(あの女……憐の頬を殴りやがって……)
黒羽快斗も怪盗キッドも女性には親切である。そこは変わらない……しかし、大切な彼女を傷つけられたとなれば話は変わる。俺はこの時あのウェイトレスに対して苛立ちを覚えていた。
だがやはりこの状況……俺が出た所で良くなるとも思えない。きっと今頃名探偵がこの飛行船に仕掛けられている爆弾を解除しているはず。名探偵が来るまで、待つしかない。……だけど今度また憐を狙われても不味いので、なるべく憐の背後に少しずつ移動した。
そんな憐は倒れた体を起こし、立ち上がっていた。殴られた頬が赤くなっている。それにアイツが立ち上がった時に発した言葉……
貴「……こんなの平気だよ!痛くも痒くもないんだから!それより怪我は無い?ごめんね……私が頼んだせいで、大切な探偵バッジ取られちゃって……」
ウェイトレスの平手打ちなど効いていないように振る舞う。……小さな彼女の手前、アイツは強がっている。平気そうな振りをしているが、実際は恐怖を感じている。
憐の手は震えていて、表情もかなり辛く悲しげな様子だ。今も俺があげたミサンガとムーンストーンを両手に握りしめていた。
(あんな顔をさせたくなかった……こんな状況から憐を救い出したいのに、現実の俺は何も出来ず、ただ様子を見守るだけ……名探偵が来るのを待つことしか出来ない……偶に自分の立場が嫌になるぜ)
そうごくたまに……己の立場が嫌になる時がある……それはこんな時のように、大切な奴の為に堂々と傍にいることすら出来ない時……俺は自分の無力さに打ちひしがれている時に、事態は進んでいく。
ハイジャック犯達のリーダー格の男が、名探偵や名探偵の友人の子ども達を引き連れてやってきた。こんな時でも名探偵は名探偵だった……凶悪な犯罪集団にも関わらず、逆にハイジャック犯達を睨み付けるように見ていた。リーダー格の男は手に壊れた機械、恐らくそれがこの飛行船に仕掛けたという爆弾だろう。その爆弾を持って名探偵に問いかけた。
「お前等がやったのか?」
コ「やったのは僕さ……コイツ等は関係ないよ……」
「……」
嫌な沈黙が場を支配する。誰もが言葉を発せず二人のやり取りを見守っている時、俺は嫌な予感を感じ取った。それは憐も感じ取ったのか、少しずつアイツらに近づいていく。
「フン……いい度胸だ……」
ガッ!!
コ「!?」
「「「「「「!!」」」」」」
リーダー格の男は名探偵を掴みあげ、窓へと近づいていく。
貴「駄目!!やめて……!!」
あのウェイトレスの女に余計なことをしたら殺すと釘を刺されているのに、それでも自分の守るべき対象の
キ「憐!」
貴「!!」
キ「俺が行く!お前は待ってろ!」
俺は憐の手を掴んだ。これ以上危ないことはさせられない……俺が行く。そう伝えると、憐は大きく目を開き、歩みを止めた。
その間にも名探偵と男が窓の傍へと辿り着いた。やはり最悪な予感は間違っていなかった……名探偵を持ち上げていた男は、窓を開け名探偵を空中へと放り投げた。
コ「!!!」
蘭「コナンくん!!!」
名探偵の彼女の悲鳴にも似た叫び声が木霊する。憐は座り込み、「そんな……コナンくん……っ……」と涙ぐむ声が聞こえる。泣いているアイツの傍を離れるのは心苦しいが、今放り出された名探偵を助けられるのは俺だけだ!
キ「待て!!」
今にも飛び降りそうな名探偵の彼女を止めて、俺は開いている窓から飛び降りる。
────── あの時の飛行機と同じ……俺はまたお前を空へと置いて行く……
────── 悪い憐……だけど……
────── 絶対助けてやっからな……!
俺は先に落ちている名探偵を助ける為に、名探偵の体を掴み、身を包んでいる服を脱ぎ捨てた。
貴「キッド……」
キッドが飛び降りた後、憐は窓へと近寄り、今まで呼ぶことを避けていた怪盗の名前を静かに呟いた……。
