天空の難破船【完結】
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飛行船内部、彼女達は正反対の位置に立ち、それぞれ目の前の窓から見下ろしていた。そこから見える景色は当初と見た景色と同じく、清々しい程綺麗な青空が広がっている。しかし、その景色とは裏腹に彼女達の心は暗く曇りがかっていた。
蘭(信じないわよ……怪盗キッドが新一だったなんて……)
貴(……何が友達よ。好きな人がちゃんといるのに人を揶揄って楽しむような人だったんなんて……!)
今回彼女達が知ってしまった事実……その内容はどちらにも大きく……そして複雑なものだった。
蘭(そんな訳ないじゃない……でも……でも……)
貴(蘭もきっとどうすればいいか悩んでいるだろうな〜…………よし、決めた!何度も助けてくれた恩があるから、今迄の行いは全部無かったことにする!その代わりもう関わらないし、例えあっちから来てもサラッと流そう……キッドなんか……)
(キッドなんか大嫌い……) / (新一……)
彼女達の心は再び晴れるのか……コナン、蘭、キッド、憐の関係は次第に、より複雑なものに変わっていく事になる。
───────────────────────
────── ダイニング
小「最高ォーーーーッ!お姉ちゃんおかわり〜〜〜!!」
園「おじ様、完全復活ね……」
ビックジュエルを拝んだ後、コナン一行は飛行船内部にあるダイニングにて、食事を楽しんでいた。高所恐怖症で気が滅入っていた小五郎も、自分の好きな酒を胃に流し込んだお陰で、元の陽気な状態に戻った。
キ「お待たせしました……デザートのケーキです……」
蘭「!?」
貴「……」
蘭や園子達の前に次々とケーキが置かれていく。
蘭はケーキを置いていくウェイターの男をじっと見つめており、憐は目を合わせないよう瞼を閉じていた。
蘭「あ、ありがとう……」
貴「……ありがとうございます」
蘭も憐もウェイターにお礼を言うのは変わらない。しかしその態度が全くもって違ったのだ。蘭は戸惑いながらも発し、憐は目を合わせずただ一言すまし顔でお礼を伝えるのみ。
この様子に誰もが違和感を抱いた。特に小さな名探偵と当事者のウェイターに扮する怪盗は顕著に感じていた。
キ(やっぱ怒ってる……何で怒ってんだよ……?露骨に俺と目を合わせないようにしてんな)
コ(ん……?蘭の様子が……)
それぞれ疑問に思うも、特に何もせず……キッドは己の仕事をきっちりやるのみ。その他のテーブルに残りのケーキを置いていく。その様子をじっと見つめる蘭に、流石の園子も指摘をした。
園「蘭ってば!!」
蘭「!?」
園「何深刻な顔して見つめてんのよ……あんな子が蘭の好みだっけ?」
蘭「……え?べ、別にそんなんじゃ……」
園「旦那に言いつけちゃおっかなぁ〜……」
蘭「だから違うって!!」
いつもの蘭と園子のじゃれ合いを見て、何処か不自然な違和感を持ちつつも呆れたコナンは、静かにジュースを飲んでいた。
光「ですからこのドアを開ければ、真ん中の通路へ出られるんですよ!!」
元「行けるんだな!!」
歩「それで前のドアから出れば……」
光「そうです!!」
元「イシシ…」
阿「君達……何処か行くのか?」
光「あ、いえその……この後、トランプでもしようかなぁ〜って……」
別テーブルの歩美、光彦、元太は周りに聞かれぬよう小声で何かを話していた。阿笠博士に聞かれると、笑って誤魔化している辺り、また何か企んでいると考えたコナン。今度はすぐ傍から聞こえてきた会話に再度耳を傾ける。
園「で……何でアンタはずっと黙ってるの憐?」
貴「?!……別に良いでしょ!!このケーキがあまりにも美味しくて、じっくり味わってたのよ!!流石鈴木財閥ね〜デザートも1級品で美味しい〜!」
園「そうでしょ〜?私に感謝しなさいよね〜!憐は強制参加だったから、憐好みのケーキを用意しておいたのよ♡」
貴「……ありがとう園子」
憐が一言も話さないため、気になった園子が訳を聞くと、本人曰くあまりにもデザートが美味しすぎた為にじっくり味わっていたが為に話さなかった。
コ(……?神崎の様子も変だな?)
園「あ〜〜〜〜〜〜ん、待ち遠しい♡早く大阪に着いてキッド様に会いた〜〜〜〜〜〜〜い♡
そして願わくは、その不敵な唇に私の唇を重ねて……」
蘭「駄目駄目!!そんなの絶対駄目ーーーーー!!!!」
貴「…………」
園子の悪ふざけにいつもならば、蘭と憐は呆れつつも優しく見守っている態度なのに、彼女らの反応はいつもと全く異なっていた。蘭は大きな声で否定し、憐は全く持って喋らず、紅茶を飲んでいた。
園「……へっ?」
蘭「……え?」
コ「あ……」
貴「…………」
そんな様子に流石の園子も違和感を感じ、それぞれ心配の目を向け、コナンは目を大きく見開いた。蘭は己の言動で、変な空気になってしまったこの空間を何とか普通に戻そうと慌てて話し始める。
蘭「キ、キッドは犯罪者でしょう!?そんなの不謹慎よ!!」
園「何ムキになってんのよ……」
蘭「べ、別に!!」
園「それに……いつまで味わってるのよ憐!!キッド様と言ったらアンタでしょ?!」
貴「……別に私には関係ない。それより私から園子へのアドバイス……京極さんっていう素敵な彼氏がいるんだから、あの怪盗に熱をあげすぎないようにね……?京極さん嫉妬深いんでしょ?やりすぎて愛想尽かされても知らないよ?」
園「そんなの嫌!!何で急に意地悪な事言うのよ〜〜!!」
やはり態度が可笑しい……蘭はムキになり、憐は何処か冷たい様子に見受けられる。しかし、何故友人達がそんな態度になっているのか園子には分からなかった。
その後デザートタイムを終えた子ども達は、足早に部屋へ戻ると告げて、去っていく。そんな様子に疑問を抱いた阿笠博士と哀だが、引き止めることなく見送った。その際にすれ違った女性の店員が元太の目の前でくしゃみをして、元太に咎められる。
平和な時間に鳴り響く次郎吉の携帯の音。画面を見てみると、非通知の文字が出ていた。
次「誰じゃ一体……」
訝しげに次郎吉は、携帯を耳に当てると電話の向こう側の人物からとんでもない発言が飛び出してくる。
〝飛行船の喫煙室に殺人バクテリアをバラまいた……左側のソファーの下を見てみろ……〟
次「おい待て……!」
ガチャッ
次郎吉が詳細を聞く前に、相手側から電話を切られた。尋常ではない声を上げた次郎吉に対し、どうかしたのかと問う園子。
次「いや、何でもない……ただの悪戯電話じゃ……」
皆を混乱させない為、本当の事を言わず一旦は誤魔化した次郎吉だったが、暫くしてその場にいた全員に、この飛行船内部に殺人バクテリアがばら撒かれた事を話す。
蘭「間違いないんですか?」
浅「悪戯なんじゃ……」
中「いや残念ながら……今本庁に確認した所だ……」
ザワ……ザワ……
中「とにかくさっきも言ったように、Bデッキの喫煙室は封鎖……」
藤「うわぁ〜〜〜〜〜〜……!!」
「「「「「!?」」」」」
殺人バクテリアがばら撒かれたという喫煙室を封鎖しようと中森が指示を出そうとするも、その指示は途中で消える。呻き声を上げたのはルポライター藤岡。藤岡の身体には発疹のような赤いものが全身に広がっていた。その瞬間あたりは緊迫した空気に包まれる。もう感染者が出てしまったということなのか、そんな彼らの予想も悠長に出来ない程、藤岡は助けて欲しいと迫ってくる。
中「まさか、感染したのか!?」
浅「そういえばあの方さっき喫煙室に……」
藤岡は喫煙室に行っていたと証言もあり、この場にいる全員が彼は感染してしまったのではと考えた。
藤「助けてくれ……お願いだ……何だか具合が悪いんだ……」
中「落ち着け……落ち着きなさい……」
発疹のような症状に犯され、助けを乞うように近づいてくる藤岡を中森は宥めようとするも効果がない。
藤「死にたくないんだ……」
藤岡は狙いを中森に定め、彼へどんどん近づいていく。その藤岡を止めようとコナンが腕時計型麻酔銃を構え、撃とうとした瞬間、ある人物が中森の前へ立つ。
貴「駄目……!」
側で見ていた憐が中森の前に出て、これ以上藤岡が来ないよう腕を広げて立ちはだかった。憐は一瞬で考え想像した……
(もしこれで本当に藤岡さんが感染しているのなら、これ以上感染者を出しては駄目!
それに銀三さんがもし感染したら……青子!!)
守りたい思いで飛び出してしまった。だけど彼女には後悔など微塵もなかった。親友の大切な父親を死なせない為に、前に出た。
中「憐ちゃん!?儂のことはいいから!!退きなさい……!!」
中森の肝は冷えた。自分の前に出た小さな背中。彼女は大事な愛娘の大切な友人。そして小さい頃から見ている娘同然の憐。その憐が今自分を守る為に、盾になろうとしている。そんな事をさせる訳にはいかない。中森は立ちはだかった小さな背中を必死に退けようとしたが、憐は言うことを聞かない。その間にも迫ってくる藤岡。どう対処すべきか焦っていた所、憐の前にまた一人立ちはだかる者がいた。
藤「うぅ……」
ドッ!!
藤「うっ!!」
ズル……
憐の前に立ったのは蘭だった。蘭は静かに拳を構えて一突き……藤岡の腹部に拳を入れて、藤岡を気絶させたのだ。
中「す、すまん……助かった」
蘭「い、いえ……」
貴「ありがとう蘭……銀三さんを守ってくれて……」
倒れた藤岡を置いて、中森と憐は蘭にお礼を言った。その後中森は直ぐに憐に対し、目を吊り上げて怒り始めた。
中「何考えとるんだ憐ちゃん!!もう少しで、憐ちゃんまで感染するかもしれなかったんだぞ……!!」
貴「!!……ごめんなさい銀三さん!!でも、これ以上感染者を出したくないと思ったら、体が勝手に……」
中「だからと言ってだな……!!」
貴「もう嫌だった!!……お父さんがいなくなるのは……」
中「?!」
俯きいて泣きそうな声で話す憐。その言葉に中森は小言が止まる。彼女が発した〝お父さん〟とは、憐自身の父親では無い。憐の父親は今、単身赴任で関西地方にいるからだ。居なくなった訳では無い。娘のもう一人の幼馴染、素晴らしい手品を披露する少年、黒羽快斗の父親……黒羽盗一の事を指していると中森は気づいた。
黒羽盗一が亡くなった時、彼の妻、幼かった彼の息子が哀しむのは勿論のこと、自分や幼かった自分の娘、彼と親交があった者は全員彼の事を惜しんだ。その中でも、神崎憐という少女は、彼がこの世を去ってしまった事実に、大粒の涙を流し、泣き叫んでいた。今でも少女の慟哭を鮮明に思い出せる。それぐらい少女の中で、黒羽盗一は大事な存在だったのだ……もう一人の父親のような存在だったのだろう。
少女の母親、少女の双子の弟が慰めようとするも、一向に泣き止む気配がなかった。誰もがその少女の慟哭に心を痛めている時に、ある少年が少女の前に立った。その少年は幼い手品師 で、父から受け継いだ得意のマジックを披露した。そのマジックを見た少女は、泣くことをやめたのだ。
……偉大な手品師 がこの世を去ってから8年。幼かった彼等は大きくなり、高校生になった。それだけの年月が経てども、高校生になった今もまだ……彼女にとっては悲しい思い出として残っていた。
中森は一息ついて、俯いている憐の頭にポンポンと手を置いた。それに気づいた憐が直ぐに「駄目!!うつっちゃう!!」と叫び、後ろへ下がったが、中森は首を横に振り、穏やかに微笑んだ。
中「大丈夫だ……憐ちゃんは感染しておらんよ」
貴「!!」
中「それにな……君が儂を〝父親〟だと思ってくれているように、儂も君を青子同様〝娘〟のように思っているんだ……だから君は〝父親〟であり民間人を守る警察官の儂に守られてくれ……なーに!心配せずとも、これぐらいでこの中森銀三、居なくなったりどせんよ!」
彼女の行動は決して褒められた物では無い。現に蘭が藤岡を気絶させなければ、被害は甚大に広がったかもしれない。彼女が前に出る必要はなかった……しかし、それでも自分を守りたいという思いに確かに救われた。だから、叱った後は必ず褒める……そこは小さい頃の彼らと変わらないかもしれない。
中「ありがとうな、憐ちゃん」
明朗に笑う中森を見て、改めて無事で良かったと涙を流す憐がいた。
貴「……うんっ……」
周囲にいたコナン達は二人のやり取りを静かに見守っていた。事情は詳しくは分からない……けれど、彼女の流す涙を見て守れて良かったと蘭は改めて思った。
……少し離れた所で様子を見守っていたウェイターのみが、彼女達の事情を把握出来ていた。彼は仕事の都合上、彼等の中に加われない。しかし、終始心配そうな表情を憐に向けていた……。
蘭に頃合いを見て阿笠博士が、すぐ手を消毒するように促した。短髪のウェイトレスの女性が、蘭に配膳室の消毒用アルコールを使用するように案内しようとしたが、その瞬間隣に立っていたポニーテールのウェイトレスが倒れた。右手と左腕に発疹のようなものが出てきており、藤岡と同じバクテリアに感染した者と思われた。
中森は次郎吉と相談し、病室を隔離室とし、喫煙室とダイニングを封鎖を提案した。その場にいたコナン達も異論はなく、その指示に従う。阿笠博士がこの現状を子ども達に伝える必要があると呟き、ある可能性に思い当たったコナンが、その場を離れ、子ども達のいる所へ走って向かっていく。
……黒い影は音もなく忍び寄り、彼等のすぐ側まで迫ってきていた……。
蘭(信じないわよ……怪盗キッドが新一だったなんて……)
貴(……何が友達よ。好きな人がちゃんといるのに人を揶揄って楽しむような人だったんなんて……!)
今回彼女達が知ってしまった事実……その内容はどちらにも大きく……そして複雑なものだった。
蘭(そんな訳ないじゃない……でも……でも……)
貴(蘭もきっとどうすればいいか悩んでいるだろうな〜…………よし、決めた!何度も助けてくれた恩があるから、今迄の行いは全部無かったことにする!その代わりもう関わらないし、例えあっちから来てもサラッと流そう……キッドなんか……)
(キッドなんか大嫌い……) / (新一……)
彼女達の心は再び晴れるのか……コナン、蘭、キッド、憐の関係は次第に、より複雑なものに変わっていく事になる。
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────── ダイニング
小「最高ォーーーーッ!お姉ちゃんおかわり〜〜〜!!」
園「おじ様、完全復活ね……」
ビックジュエルを拝んだ後、コナン一行は飛行船内部にあるダイニングにて、食事を楽しんでいた。高所恐怖症で気が滅入っていた小五郎も、自分の好きな酒を胃に流し込んだお陰で、元の陽気な状態に戻った。
キ「お待たせしました……デザートのケーキです……」
蘭「!?」
貴「……」
蘭や園子達の前に次々とケーキが置かれていく。
蘭はケーキを置いていくウェイターの男をじっと見つめており、憐は目を合わせないよう瞼を閉じていた。
蘭「あ、ありがとう……」
貴「……ありがとうございます」
蘭も憐もウェイターにお礼を言うのは変わらない。しかしその態度が全くもって違ったのだ。蘭は戸惑いながらも発し、憐は目を合わせずただ一言すまし顔でお礼を伝えるのみ。
この様子に誰もが違和感を抱いた。特に小さな名探偵と当事者のウェイターに扮する怪盗は顕著に感じていた。
キ(やっぱ怒ってる……何で怒ってんだよ……?露骨に俺と目を合わせないようにしてんな)
コ(ん……?蘭の様子が……)
それぞれ疑問に思うも、特に何もせず……キッドは己の仕事をきっちりやるのみ。その他のテーブルに残りのケーキを置いていく。その様子をじっと見つめる蘭に、流石の園子も指摘をした。
園「蘭ってば!!」
蘭「!?」
園「何深刻な顔して見つめてんのよ……あんな子が蘭の好みだっけ?」
蘭「……え?べ、別にそんなんじゃ……」
園「旦那に言いつけちゃおっかなぁ〜……」
蘭「だから違うって!!」
いつもの蘭と園子のじゃれ合いを見て、何処か不自然な違和感を持ちつつも呆れたコナンは、静かにジュースを飲んでいた。
光「ですからこのドアを開ければ、真ん中の通路へ出られるんですよ!!」
元「行けるんだな!!」
歩「それで前のドアから出れば……」
光「そうです!!」
元「イシシ…」
阿「君達……何処か行くのか?」
光「あ、いえその……この後、トランプでもしようかなぁ〜って……」
別テーブルの歩美、光彦、元太は周りに聞かれぬよう小声で何かを話していた。阿笠博士に聞かれると、笑って誤魔化している辺り、また何か企んでいると考えたコナン。今度はすぐ傍から聞こえてきた会話に再度耳を傾ける。
園「で……何でアンタはずっと黙ってるの憐?」
貴「?!……別に良いでしょ!!このケーキがあまりにも美味しくて、じっくり味わってたのよ!!流石鈴木財閥ね〜デザートも1級品で美味しい〜!」
園「そうでしょ〜?私に感謝しなさいよね〜!憐は強制参加だったから、憐好みのケーキを用意しておいたのよ♡」
貴「……ありがとう園子」
憐が一言も話さないため、気になった園子が訳を聞くと、本人曰くあまりにもデザートが美味しすぎた為にじっくり味わっていたが為に話さなかった。
コ(……?神崎の様子も変だな?)
園「あ〜〜〜〜〜〜ん、待ち遠しい♡早く大阪に着いてキッド様に会いた〜〜〜〜〜〜〜い♡
そして願わくは、その不敵な唇に私の唇を重ねて……」
蘭「駄目駄目!!そんなの絶対駄目ーーーーー!!!!」
貴「…………」
園子の悪ふざけにいつもならば、蘭と憐は呆れつつも優しく見守っている態度なのに、彼女らの反応はいつもと全く異なっていた。蘭は大きな声で否定し、憐は全く持って喋らず、紅茶を飲んでいた。
園「……へっ?」
蘭「……え?」
コ「あ……」
貴「…………」
そんな様子に流石の園子も違和感を感じ、それぞれ心配の目を向け、コナンは目を大きく見開いた。蘭は己の言動で、変な空気になってしまったこの空間を何とか普通に戻そうと慌てて話し始める。
蘭「キ、キッドは犯罪者でしょう!?そんなの不謹慎よ!!」
園「何ムキになってんのよ……」
蘭「べ、別に!!」
園「それに……いつまで味わってるのよ憐!!キッド様と言ったらアンタでしょ?!」
貴「……別に私には関係ない。それより私から園子へのアドバイス……京極さんっていう素敵な彼氏がいるんだから、あの怪盗に熱をあげすぎないようにね……?京極さん嫉妬深いんでしょ?やりすぎて愛想尽かされても知らないよ?」
園「そんなの嫌!!何で急に意地悪な事言うのよ〜〜!!」
やはり態度が可笑しい……蘭はムキになり、憐は何処か冷たい様子に見受けられる。しかし、何故友人達がそんな態度になっているのか園子には分からなかった。
その後デザートタイムを終えた子ども達は、足早に部屋へ戻ると告げて、去っていく。そんな様子に疑問を抱いた阿笠博士と哀だが、引き止めることなく見送った。その際にすれ違った女性の店員が元太の目の前でくしゃみをして、元太に咎められる。
平和な時間に鳴り響く次郎吉の携帯の音。画面を見てみると、非通知の文字が出ていた。
次「誰じゃ一体……」
訝しげに次郎吉は、携帯を耳に当てると電話の向こう側の人物からとんでもない発言が飛び出してくる。
〝飛行船の喫煙室に殺人バクテリアをバラまいた……左側のソファーの下を見てみろ……〟
次「おい待て……!」
ガチャッ
次郎吉が詳細を聞く前に、相手側から電話を切られた。尋常ではない声を上げた次郎吉に対し、どうかしたのかと問う園子。
次「いや、何でもない……ただの悪戯電話じゃ……」
皆を混乱させない為、本当の事を言わず一旦は誤魔化した次郎吉だったが、暫くしてその場にいた全員に、この飛行船内部に殺人バクテリアがばら撒かれた事を話す。
蘭「間違いないんですか?」
浅「悪戯なんじゃ……」
中「いや残念ながら……今本庁に確認した所だ……」
ザワ……ザワ……
中「とにかくさっきも言ったように、Bデッキの喫煙室は封鎖……」
藤「うわぁ〜〜〜〜〜〜……!!」
「「「「「!?」」」」」
殺人バクテリアがばら撒かれたという喫煙室を封鎖しようと中森が指示を出そうとするも、その指示は途中で消える。呻き声を上げたのはルポライター藤岡。藤岡の身体には発疹のような赤いものが全身に広がっていた。その瞬間あたりは緊迫した空気に包まれる。もう感染者が出てしまったということなのか、そんな彼らの予想も悠長に出来ない程、藤岡は助けて欲しいと迫ってくる。
中「まさか、感染したのか!?」
浅「そういえばあの方さっき喫煙室に……」
藤岡は喫煙室に行っていたと証言もあり、この場にいる全員が彼は感染してしまったのではと考えた。
藤「助けてくれ……お願いだ……何だか具合が悪いんだ……」
中「落ち着け……落ち着きなさい……」
発疹のような症状に犯され、助けを乞うように近づいてくる藤岡を中森は宥めようとするも効果がない。
藤「死にたくないんだ……」
藤岡は狙いを中森に定め、彼へどんどん近づいていく。その藤岡を止めようとコナンが腕時計型麻酔銃を構え、撃とうとした瞬間、ある人物が中森の前へ立つ。
貴「駄目……!」
側で見ていた憐が中森の前に出て、これ以上藤岡が来ないよう腕を広げて立ちはだかった。憐は一瞬で考え想像した……
(もしこれで本当に藤岡さんが感染しているのなら、これ以上感染者を出しては駄目!
それに銀三さんがもし感染したら……青子!!)
守りたい思いで飛び出してしまった。だけど彼女には後悔など微塵もなかった。親友の大切な父親を死なせない為に、前に出た。
中「憐ちゃん!?儂のことはいいから!!退きなさい……!!」
中森の肝は冷えた。自分の前に出た小さな背中。彼女は大事な愛娘の大切な友人。そして小さい頃から見ている娘同然の憐。その憐が今自分を守る為に、盾になろうとしている。そんな事をさせる訳にはいかない。中森は立ちはだかった小さな背中を必死に退けようとしたが、憐は言うことを聞かない。その間にも迫ってくる藤岡。どう対処すべきか焦っていた所、憐の前にまた一人立ちはだかる者がいた。
藤「うぅ……」
ドッ!!
藤「うっ!!」
ズル……
憐の前に立ったのは蘭だった。蘭は静かに拳を構えて一突き……藤岡の腹部に拳を入れて、藤岡を気絶させたのだ。
中「す、すまん……助かった」
蘭「い、いえ……」
貴「ありがとう蘭……銀三さんを守ってくれて……」
倒れた藤岡を置いて、中森と憐は蘭にお礼を言った。その後中森は直ぐに憐に対し、目を吊り上げて怒り始めた。
中「何考えとるんだ憐ちゃん!!もう少しで、憐ちゃんまで感染するかもしれなかったんだぞ……!!」
貴「!!……ごめんなさい銀三さん!!でも、これ以上感染者を出したくないと思ったら、体が勝手に……」
中「だからと言ってだな……!!」
貴「もう嫌だった!!……お父さんがいなくなるのは……」
中「?!」
俯きいて泣きそうな声で話す憐。その言葉に中森は小言が止まる。彼女が発した〝お父さん〟とは、憐自身の父親では無い。憐の父親は今、単身赴任で関西地方にいるからだ。居なくなった訳では無い。娘のもう一人の幼馴染、素晴らしい手品を披露する少年、黒羽快斗の父親……黒羽盗一の事を指していると中森は気づいた。
黒羽盗一が亡くなった時、彼の妻、幼かった彼の息子が哀しむのは勿論のこと、自分や幼かった自分の娘、彼と親交があった者は全員彼の事を惜しんだ。その中でも、神崎憐という少女は、彼がこの世を去ってしまった事実に、大粒の涙を流し、泣き叫んでいた。今でも少女の慟哭を鮮明に思い出せる。それぐらい少女の中で、黒羽盗一は大事な存在だったのだ……もう一人の父親のような存在だったのだろう。
少女の母親、少女の双子の弟が慰めようとするも、一向に泣き止む気配がなかった。誰もがその少女の慟哭に心を痛めている時に、ある少年が少女の前に立った。その少年は幼い
……偉大な
中森は一息ついて、俯いている憐の頭にポンポンと手を置いた。それに気づいた憐が直ぐに「駄目!!うつっちゃう!!」と叫び、後ろへ下がったが、中森は首を横に振り、穏やかに微笑んだ。
中「大丈夫だ……憐ちゃんは感染しておらんよ」
貴「!!」
中「それにな……君が儂を〝父親〟だと思ってくれているように、儂も君を青子同様〝娘〟のように思っているんだ……だから君は〝父親〟であり民間人を守る警察官の儂に守られてくれ……なーに!心配せずとも、これぐらいでこの中森銀三、居なくなったりどせんよ!」
彼女の行動は決して褒められた物では無い。現に蘭が藤岡を気絶させなければ、被害は甚大に広がったかもしれない。彼女が前に出る必要はなかった……しかし、それでも自分を守りたいという思いに確かに救われた。だから、叱った後は必ず褒める……そこは小さい頃の彼らと変わらないかもしれない。
中「ありがとうな、憐ちゃん」
明朗に笑う中森を見て、改めて無事で良かったと涙を流す憐がいた。
貴「……うんっ……」
周囲にいたコナン達は二人のやり取りを静かに見守っていた。事情は詳しくは分からない……けれど、彼女の流す涙を見て守れて良かったと蘭は改めて思った。
……少し離れた所で様子を見守っていたウェイターのみが、彼女達の事情を把握出来ていた。彼は仕事の都合上、彼等の中に加われない。しかし、終始心配そうな表情を憐に向けていた……。
蘭に頃合いを見て阿笠博士が、すぐ手を消毒するように促した。短髪のウェイトレスの女性が、蘭に配膳室の消毒用アルコールを使用するように案内しようとしたが、その瞬間隣に立っていたポニーテールのウェイトレスが倒れた。右手と左腕に発疹のようなものが出てきており、藤岡と同じバクテリアに感染した者と思われた。
中森は次郎吉と相談し、病室を隔離室とし、喫煙室とダイニングを封鎖を提案した。その場にいたコナン達も異論はなく、その指示に従う。阿笠博士がこの現状を子ども達に伝える必要があると呟き、ある可能性に思い当たったコナンが、その場を離れ、子ども達のいる所へ走って向かっていく。
……黒い影は音もなく忍び寄り、彼等のすぐ側まで迫ってきていた……。
