銀翼の奇術師【完結】
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快斗side
快「ふぅ〜……ようやく終わった〜……。やっぱし疲れんな〜……」
怪盗キッドとして夜な夜な仕事をこなしている俺は、今夜もキッドととなりビックジュエルを盗み出した。いつもなら中森警部率いる警察の連中を難なくかわし、余裕でお宝を盗んでいるが、今日はいつもと違って自分の調子が悪く、危ない橋を渡るようなハラハラした追いかけっこを繰り広げた。そんな苦労して手に入れた宝石を頭上にかかげて月に翳す。期待を込めて翳してみても、眠る宝石の姿は確認出来ない……これもまたパンドラではなかったと残念に思いながら帰路に着く。
(それにしても今日の俺はまずまずだったな……)
原因なら分かっている……どう考えたって数日前の出来事、キッドになって憐の様子を見に行った時、そしてキッドとして彼女と相対し、彼女の思いを知った。
憐を護れなかった後悔、彼女の象徴とも呼べるアメジストを落としてしまった罪悪感、それは後に名探偵の彼女が拾い、名探偵の手に渡り、俺と怪盗キッドを結ぶ証拠となって名探偵から突きつけられた。あのアメジストを憐の前で見せられたりでもしたら、終わりだった……だから自分の正体を認めざるを得なかった。
しかし俺もただでは転ばず、名探偵の正体も暴いたことにより、即通報!とはならず、一先ず互いに関わらない、他人に正体をばらさないと話は纏まった。
名探偵が帰る途中、俺にアメジストを返してきた。だからアイツのアメジストは、今はちゃんと俺の手元にある……もう失くしは無い。俺は二度と同じ過ちを繰り返さない……
だけど一度持ってしまった後悔や罪悪感はなかなか消えないものだ……いくら彼女が明るく振舞っていても、彼女の涙を見てしまってはいつも通りにとはいかない。憐を深く傷つけてしまった事へのやるせなさも感じていた。
どんなに辛くても、仕事はきっちりとこなすことが一流……でなければ、足元掬われてとんでもないことに……なんて分かっていたのに、結果はこのザマだ。宝石こそ盗み出せたものの、だいぶ危なかった。一歩間違えれば、中森警部の罠に引っかかり今度こそ捕まっていたかもしれない。
警部も尚更悔しいだろうな……何せあと一歩の所で俺に逃げられ、更に明日には警備の対象だった宝石は警察へと届けられるのだから……
快「……戻るか」
怪盗キッドとして憐に会った後、その罪悪感から少しでも離れたくて、いつもより早い時間帯に予告状を出し、盗みを終えた。今回は玲於の手を借りずにいた。玲於からの申し出は有難かったが、もし憐が退院する日に玲於まで居なかったら憐が悲しむと思い断った。最後まで心配そうな目で見られていたことにも気づいていたが、玲於にも余計な心配をかけたくなかった。
それでもこうして終わった後に、連絡が来ることがある。内容を見ると、今日の午後に憐が退院したらしい。それでその退院を祝うパーティーをやるから俺もどうかと誘いのメールだった。同様の内容を青子からも送られている。しかし、送信された時間もだいぶ前だ。
快「流石にこんな時間迄はやってねーよな……」
時刻を見ればもう22時をまわっている。盗みに手こずったせいで、早い時間に盗みにいったはずなのに、警察を巻くのに凄く時間がかかっていた。俺は玲於と青子のメールにパーティーに参加出来なくなった謝罪をしようと思った矢先に、再度メールが届く。
快「ん?玲於か?なになに……〝もうパーティー終わったよ。銀三さんが酔い潰れて寝ちゃったから、僕と青ちゃんと母さんで青ちゃん家まで運んで介抱してる。家には姉さん一人だから、今がチャンスだよ〟……っては?!憐が家に一人!?こんな時間にか?!」
その事実に冷や汗が出る……いつもだったらそこまで心配しないが、最近何かと事件に巻き込まれがちで不運な憐……しかも家に一人だけなんて……もし強盗なんかに押し込まれでもしたら……憐の身が危ない!!
快「あんのヘボ親父!人の家で酔い潰れる程酒を飲むなよ……!こうしちゃいられねー!!早く憐家に行かねーと!!」
俺は中森警部を恨みながらも、足早に憐の待つ家へと急いで帰った……。
──────────────────────
快「……はぁ……はぁ……っ……最速で来たぜ……玲於達帰ってきてねーかな……」
息をきらせながら、走ってアイツの家まで向かう。もう玲於達が帰ってくることを期待していたが、どうやらまだ帰ってなさそうだ。帰ったらメールをするように玲於に送っておいたが、そんなメールはいまだ来ていない。
快「電気も付いてない……一応鍵だけかかってるか確かめてみっか……」
試しに戸口の扉を引いてみる。
ガチャッ……
嫌な予想が当たってしまった。開かないことを願った扉は、引っかかることなく簡単に開いてしまった。
快「開い……てる……憐っ!!」
俺は息を吸うことも忘れ、乱暴に扉を開けて憐の家へと入った。
快「……はぁ……はぁ……(とりあえず、荒らされた形跡はなさそうだな)」
中へ入るとリビングに続く廊下がある。ざっと見たところ荒らされた形跡はない。靴箱は開けられておらず、物も散乱している様子はない。……靴が一足置いてあるだけ。多分これは憐のだ……やっぱり玲於達はまだ帰ってきていない。
快「さっさと憐を探さねーと……おい憐!!いるか……?!」
荒々しい呼びかけに何も返事が返ってこない。俺は廊下の電気を付けて、無我夢中で廊下を駆け抜けてリビングへと向かう。リビングも電気が付いておらず、暗かった為、電気を付ける。するとそこには──────
貴「……」
机に突っ伏している憐の姿があった。
快「憐!!なぁ憐!!大丈夫か……?!しっかりしろ!!」
俺は慌てて駆け寄り憐の体を揺らす。あの時一人だけ血を流して倒れていた憐……それを目の当たりにした時の絶望感に似た物をこの時も感じていた。それを払拭したくて必死になって、憐の体を揺らした。
貴「……ん?……何…………!!」
体を揺さぶられていた憐は伏せていた顔をあげた。どうやらコイツはただ眠っていただけだった。眠りから覚めた憐は周囲を見回して、隣にいる俺を半目で見上げていた。しかし俺の顔を見るなり、大きく目を見開きその状態で静止する。……俺も俺で、冷静に見れば憐はただ寝ていただけだと気づけたはずなのに、彼女の身が心配で、よく見ずに突っ走ってしまった事に今更ながら恥ずかしくなり、その後どう声をかけていいのか分からず、何も言葉を発せないでいた。
貴「…………」
快「……(どうすんだよこれ……焦りすぎだろ俺……でも、何であれ俺が憐を傷つけた事には変わりはねーんだ……謝んねーと……)」
どの言葉にすれば良いのか悩んだが、いきなり変な態度をとってコイツを傷つけた事に変わりは無い。謝罪するのが一番だと思い、謝罪の言葉を並べようとしたが、それよりも前に憐が口を開く。
貴「おかえり!快斗……!」
……憐は、満面の笑みを浮かべて答えた。
その笑顔に目を奪われる。
俺はいつだってコイツの優しさに救われていた……昔も今もそれは変わらない……憐は俺を優しいと言うけれど、俺からしたらお前の方が優しいと思うぜ。そんな優しいお前を傷つけた俺を、お前は受け入れようとしている。
……俺だってこんな事でお前と仲違いなんてことしたくない。だから……
快「……ただいま……憐」
俺は憐に、不格好に笑いながらも返した。
──────────────────────
貴「快斗、何処かでご飯食べてきた?」
快「は?……いや食ってねぇけど……」
貴「なら座って!……今からご飯の準備するから!」
快「は?!おい憐!……」
貴「良いから!……あっちょっと待って!快斗手洗った?洗ってないなら先に洗ってから来てよ!」
快「……あーもう分かった!分かったってーの!」
ここに来るまでの俺の葛藤は一体なんだったのか……俺は憐に言われた通り、手を洗いに洗面台へと向かった。
貴「ほら早く座って〜!今日はご馳走なんだから!」
手を洗った後、戻ってきた俺を憐は笑って迎え入れる。憐が話すご馳走と言うとのは、コイツの退院パーティーに青子と桜おばさんが用意したという色とりどりの食事の事だろう。
だが、そのパーティーに間に合わなかった俺に何故そのご馳走が残ってるのか……
快「憐、お前俺が帰ってくるのを待ってたのか……?」
食事を用意する背中は何も言わない。
快「……お前の家に俺が帰ってくるかなんて分からないだろう?……お前の家に行かない時もあるのに……それなのに何でその料理……残ってるんだ……?」
そんな事聞かなくても大体は予想が着く。でも確かめたいから……コイツの口からちゃんと聞きたいから聞いた。
貴「……待ちたかったから!帰ってくる確証なんてなかったけど、快斗を待ちたかったから……」
快「!!」
振り向いた憐は、笑っていた。
貴「玲於から聞いてるよ……最近寺井さんと一緒にマジックショーをやってるから、夜遅くまで帰ってこないんだよね?偶に玲於もそのお手伝いしてるって……」
快「え?……!!ま、まぁな……(玲於の奴、キッドの仕事を憐にマジックショーだって伝えてたのか……)」
貴「だから今日もそうなんだろうな〜って……分かってるから大丈夫!でも……」
快「??」
憐は俯き言い淀む。しかしゆっくりと顔をあげた。
貴「……快斗が帰ってくるかもしれないから……もしお腹を空かせて帰ってきたら、一緒に食べたいな〜って思って待ってたの!」
……屈託のない笑みに心奪われる。自分が取っていた態度によって傷ついても、確証もないのに、ただ俺が帰ってくることを愚直に信じて待っていた。俺を当たり前のように受け入れてくれる……。
幼い頃に亡くなった父親、海外にいて偶にしか帰ってこない母親、そんな家庭環境で育ったから、自分の帰る家はいつだって一人……母親とは仲違いしている訳では無いが、あたたかく迎えてくれる家族もいない。だから偶にどうしようもなく寂しさを感じる時があった。だけど憐、玲於、桜おばさんと神崎一家があたたかく迎えてくれた……仕事で多忙の父親を持つ青子もきっと俺と似たような思いをしている。青子もきっと神崎家に救われている。
怪盗キッドの仕事も大事だ。親父の死の真実を知りたい……そして、親父を死に追いやった原因のパンドラを破壊する為に……だけどそれと同時にこのどうしようもなく優しい人達を、平和で退屈な日常を絶対失いたくない。……これは俺の我儘なのかもしれない……でも……
貴「美味しい……?」
手に持ったスプーンで自身のスープを掬いながら、こちらの様子を伺う憐を見て、密かに思う……
─── 幼い頃から好きなお前に素直になれない俺だけど……
─── 誰よりも大切に想う気持ちは変わらない……
快「……そうだな……いつも通り神崎家の料理は最高に美味いぜ」
─── こんな俺を受け入れてくれたお前に……いつも感謝してるんだぜ
俺はおばさんが用意してくれた料理に手をつけながら、最大限の笑顔を憐に返した……
それから俺は憐と一緒に、おばさんの料理を楽しんだ。青子達とパーティーをやっていた憐が何故ここでも俺と一緒に食べているのかと疑問を持ったが……
貴「青子達が用意してくれて嬉しかったから楽しんでたけど、もし快斗が帰ってきても一緒に食べられるようにって食べる量を調節したり、予め残しておいてもらってたんだ……。
食事って一人で食べるのも楽しいと思うけど、やっぱり誰かと一緒に食べるともっと楽しいからね……!」
……全部俺への気遣いによるもの。自分が避けられても、変わらない態度で接しているのは、キッドの時に語っていた理由だろう。
貴「……やっと目を合わせてくれるようになったね」
快「……悪かったな、お前を避けちまって……」
貴「……別にいいよ。私も中学の時に1回アンタにやってるしね……これでおあいこよ!
それに快斗が私を避けた理由、少しだけど聞いたから……」
快「聞いた?!……誰にだよ……」
俺の事情を全て分かっているとしたら、玲於の奴だけだが、アイツはさっきのメールの内容から俺と憐が本音で話せるように、この場を作ってくれていた。事前に憐に話すとは思えない……だとしたら一体……
貴「江戸川コナンくん!コナンくんが教えてくれた。快斗が病院で私のアメジスト失くして落ち込んでたこと……そのアメジストをコナンくんが拾ってくれたこと……コナンくんが〝快斗兄ちゃんすっごく反省してたから、あんまり怒らないであげてね〟って言ってたの」
────── 憐が目覚めた翌日
それは私が目覚めた翌日の事……私の病室に見舞い客として訪れたのは、コナンくん一人だけだった。私は不思議に思った……コナンくんが一人で来るなんてどうしたんだろう?普通少年探偵団みんなで来るか、蘭と一緒に来るのかなって思っていた……だって小さい子だしね。まさか一人でここまで来るなんて……不思議に思うと同時に驚いてしまった。でもコナンくんの口からもっと驚くべき事実を聞く。
コ『ねぇ憐姉ちゃんって、黒羽快斗さんって知ってる……?』
貴『?!……何でコナンくんがその名前を……?!』
コ『今日僕が憐姉ちゃんの病室に入る前に、実は病室の前に立ってたお兄さんが居てさ。その人がそうだったんだよ!快斗兄ちゃんって、憐姉ちゃんの友達なの?』
貴『……そうね、友達だけどちょっと違う……。小さい頃からずっと一緒にいる幼馴染なの!……今は何でか避けられちゃってるけど……
というか快斗ここに来てたの……?!』
コ『う、うん……憐姉ちゃんの病室に入るのかなって思ったら、憐姉ちゃんには会わずに帰るって言ってそのまま帰っちゃったんだ……』
……何でよ。私を避けてる癖に、何で病室の前まで来てるのよ!だったら開けて、入ってくれば良いじゃない……何考えてるのよ……
彼の気持ちが分からなくて、コナンくんがいるのに俯きそうになる。しかし、コナンくんは話を続けた。
コ『快斗兄ちゃんね……大切なアメジストを失くしたって言ってたんだ。だから憐姉ちゃんに会う前に偶然拾ったアメジストを見せたら、これだって喜んでくれたんだよ〜それでお礼に名前を聞いたら教えてくれたんだ!』
貴『!!』
アメジスト……それは私が大阪旅行の時に、快斗、青子、玲於用に買っていた誕生石のパワーストーンの一つ。私は自分用にアメジストを購入していたけど、後に快斗の要望で快斗のムーンストーンと交換していた為、快斗のムーンストーンを私が持ち、私のアメジストを快斗が持つ事になった。……そっか。アメジストを失くしてたんだ……
コ『憐姉ちゃんの病室の前に立っていた快斗兄ちゃん、思い詰めたような顔をしてたし、アメジストを失くしたって言ってた時もとても悲しそうだったから、きっと憐姉ちゃんに申し訳なくて、会いたくても会えなくて避けちゃったんだよ……
だから憐姉ちゃん……快斗兄ちゃんすっごく反省してると思うから、あんまり怒らないであげてね……』
アイツを庇うコナンくんの言葉に、私は笑いそうになった。何だ……そうだったんだ……
貴『……もう快斗の馬鹿!そりゃ多少は怒るかもだけど、ちゃんと謝ってくれたら許すのに……。大丈夫よコナンくん、私はいつも通り快斗に接するだけだから!
それにしても……快斗とコナンくんが既に知り合ってるなんて驚いたよ!』
コ『そ、そうかな〜?!(やべぇ!流石にバレたか……?!)』
貴『うん!手品が上手くて将来有望なマジシャンになる快斗のこと、これからも仲良くしてあげてね!』
コ『うん!(……危ねぇ)』
貴『あとコナンくんって見つけるの上手だね!ありがとう!……あのアメジスト、快斗を守ってくれる大切なパワーストーンなの……コナンくんが見つけてくれて本当に助かったよ!流石名探偵さんだね!』
コ『どういたしまして……!(……あくまでこれは友人の神崎の為だ。オメーには貸し一つだからな……黒羽)』
その後しばらく話して、また一人で帰っていった。一人で帰すのもどうかと思ったけど、どうやら病室までは一人で来ていて、病院の外には阿笠博士が迎えに来てくれているらしい。コナンくんのこの言葉を信じて、私はコナンくんを送り出したのだ。
──────────────────────
快斗side
貴「私のアメジストを失くしたからってそこまで思い詰めなくて良いのよ。一言いってくれれば良いし、また似合う物を見つけてプレゼントするから!」
自身の記憶を振り返りながら、俺の知らない思い出を話してくれた憐……色々と突っ込み所が多い。俺が訪れなかった日に名探偵は一人で憐に会いにやってきていた。そしてどうやら名探偵はかなりの捏造を含みながらも、俺へのフォローをしてくれていたらしい。……名探偵の事だ……多分友人でもある憐の為と、俺に貸しでも作っておこうという魂胆で、憐に俺を庇うような言動を見せた。
快(にゃろ……本当に抜かりないな名探偵は……)
俺が内心、名探偵への抜け目の無さにムカついていると、憐がこちらを伺うように自信のない瞳で見つめていた。そしておもむろに口を開く。
貴「だから快斗……お願いだから、もう理由も言わずに避けるのは無しね……結構傷ついたから……」
アイツの瞳は少し潤んでいた。大切な奴にこんな顔をさせるなんて、俺は本当に馬鹿だ。だけど、同じ間違いはもう起こさない。
快「憐……分かってるよ。本当に悪かった……でも、もうそんなことは絶対しない!……俺だってオメーにそんな顔させたくねぇからな」
俺の言葉に安心したように笑い、とめていた手を動かす憐。先程の何処か緊張感漂う雰囲気はなくなり、自然体に話す俺達。
快「そういえば憐……お前何で頭から血流して倒れてたんだよ。あの時怪我してたのお前だけだったぞ」
貴「それね〜……あんまり言いたくないんだけど、実は私、飛行機を着陸させた時気絶しちゃったんだけど、すぐ起きたんだよ。蘭と園子よりも早くね……それで助けを呼ぼうとして、飛行機から降りて、救急隊の人呼ぼうとしたら、瓦礫につまづいて転けちゃったんだよ。それで多分運悪く、後頭部をうっちゃったって感じかな……」
憐は軽い態度で自分が怪我をしていた理由を話し始めた。
快「お前な……その鈍臭い所何とかしろよな!せっかく飛行機を無事に着陸させても、自分が怪我してちゃ世話ないぜ……」
……憐だけ怪我をしていた真相。思っていたよりも呆気ないそしてどうしようもない内容で呆れてしまう。もう少し自分の身を大切にして欲しい……思いとは裏腹に口から出たのは、彼女を心配する内容ではなく、咎めるような内容……当然これには憐も怒り出す……と思いきや、珍しく落ち込んでいた。
貴「うぅ……分かってる!快斗に言われなくたって私が一番分かってるわよ……」
快「……まぁでも、オメーが無事で良かったよ。それに憐がそれぐらいの怪我で済んだのは、もしかしたら俺のムーンストーンのおかげかもな!」
これ以上落ち込む憐を見たくなくて、調子の良い発言をした。これでいつもなら「調子に乗らないでよバ快斗!」と反論してくるはずだが……
貴「そうね……今回私はアンタにも助けられたのよ……ありがとう快斗」
快「!?……お、おう!」
(何か今日の憐……やけに素直だな?いつもこれぐらい素直だと可愛気があるのにな……)
素直な憐の態度に疑問を持ちつつも、そんな事思う癖に、結局憐ならどんな部分も愛らしく思えてしまう自分がいるのだから、そんな自分にも呆れてしまう。恋愛は惚れた方が負け……昔から俺はコイツに何だかんだ負けている。
そう思いながら、止めていた食事を再開する。そんな中憐が再び食べていた手を止めて、視線を逸らしながら、どこか不自然な様子で俺に問いかけてきた。
貴「あのさ……これはさっきの事と全然関係ないんだけど……私が聞きたいから聞くね!」
快「な、何だ……?」
貴「か、快斗の……す、好きな人って……青子だよね……?」
言葉は吃り、視線が右往左往し、顔色も少し赤くなっている。憐なりに頑張って俺に聞いているようだが、俺はその内容に驚きの反応を示す。
快「な、何でそうなった?!俺がいつ青子を好きだって言ったんだよ……!」
これは新庄に変装している時に聞いているが、黒羽快斗の姿では初めてなので、初見の反応を示した。我ながら役者だなと思うが、やはり何回聞いても分からない。
貴「違うの?!」
快「ち、違ぇよ!!ていうかそもそも何で俺に好きな人がいる前提なんだよ……!」
貴「だって……いつも青子と喧嘩してるし、周りからも夫婦喧嘩だって言われてたし、青子にだけ他の女の子とは違う態度とるじゃない!」
俺の勢いに負けじと反論してくる憐。
快「青子にだけ違う態度ってなんだよ……」
貴「好きな女の子に素直になれない態度よ」
快「はぁ?!そんだけか?!それで言うなら青子だけじゃなくて、お前ともよく喧嘩になるだろう!」
俺と青子の仲を勘違いしていた理由にも驚いた。……自分で言うのもなんだが、その理論でいくなら青子だけじゃなく憐ともよく言い合いしてるだろ俺……
貴「!!……そんな事ないもん!!快斗は気づいてないかもしれないけど、何だかんだ青子には優しいし、よく気にかけてるから……もういい加減認めたら?!隠さなくたって分かってるのよ!!」
快「いーや!!全然分かってねーよ!!第一俺が青子にだけ優しくてよく気にかけてるだと……?!そんな訳ねーだろ!!お前は何にも分かってない!!勘違いしてんだよ!!」
貴「何よ!何にも分かってない上に勘違いって……!!」
どっちも引かない態度だから益々雰囲気が悪くなる。クソ……喧嘩したくないのに……何で一番伝わって欲しい人間に伝わってねーんだよ!
快「大体な……俺はそいつに優しく出来た事なんてねーよ!!優しくしたいのに、素直に出来なくていつも怒らせてばかりだ……!
でも、そんな俺でも……そいつにはただ笑っていて欲しい……俺の全てをかけてでも護りたいって思うんだよ!!」
いつもそうだ……憐に素直に伝えるだけでいいのに、余計な一言を言ったり揶揄うように言ってしまい、気づけば言い争いになっている。その後家に帰り、一人になった時に、何で酷い言い方しか出来ないんだと己の言動を振り返り後悔する。喧嘩ばっかりの俺達だけど、それでも俺はいつだってお前の幸せを願っている……
貴「そっか……(そんな大切に想っている人がいるのね……)
……やっぱり、好きな人いるじゃない!そんな相手、青子しかいないと思うけど、青子じゃないと言い張るなら一体誰なの……?!」
憐は訝しげな様子で俺の返答を待つ。
しかし、俺は内心ポーカーフェイスなんて忘れる程に焦っていた。伝わらないもどかしさにモヤモヤして、ついとんでもないことを口走っていることに気づいた。でも今がチャンスか??長年の想いを伝える絶好の機会……。
俺は憐の瞳を真っ直ぐ見つめ返して、口を開く。
────── 今こそ憐に伝えるんだ俺!
────── 俺の好きなやつはお前だって……!
快「そ、それは…………と、とにかく青子じゃねーよ!!それだけは違うって言っておくぜ!!もうそんな勘違い二度とするなよ!!」
(しまった……!!何やってんだよ俺!!だから何でそうなっちまうんだ!!)
口に出した時にはもう遅かった。俺の言葉を聞いた憐は、訝しげな様子から、睨みつけるような眼差しに変わった。
貴「……はぁ?!何よそれ!!結局誰か分からないわよ!!男らしくはっきり言いなさい!!」
確かにはっきり言わない俺も悪いが、自分の好きな奴を明かしていないくせに、俺を責めるような憐の態度に、流石の俺もイラッとして強い口調で言葉を返した。
快「うるせー!!オメーだけには絶対言わねーよアホ憐!!」
貴「何ですって?!バ快斗!!」
……とまぁ結局俺は素直になれず、コイツに想いを伝えることも出来ず、いつものように喧嘩していたら、玲於達が帰ってきて、玲於とおばさんに喧嘩を止められてこの日を終えてしまった。
工藤新一の変装時、思わぬ形でアイツが勘違いしていた理由を聞いてしまった。勘違いした理由、本当はそれだけじゃなかったのでは……?と考えた時もあったが、今はまだ怪盗キッドのこともある為、全力で追求することはやめた。ただ目的のひとつであった勘違いを訂正させることは出来ただろう……。
玲於にあきられてしまったが、俺には分かった……アイツの中で、俺は他とは違う位置に存在している。それが特別なのかはっきりはしないが、他とは違うことだけは分かる……今はまだ〝幼馴染〟という甘くも辛い関係だが、いつかは……
―――いつか親父の真相を知り、怪盗キッドという仮面を脱ぎ捨て、何のしがらみもない本来の黒羽快斗に戻れた時……その時には、この気持ちをちゃんと伝えるからな……憐
こうしてまたひとつ距離が縮まっていく快斗と憐だが、お互いその事に気づいていない。玲於と青子含め周りは落胆するが、そんな事は露知らない渦中の二人は、また何気ない日常を送っていくこととなる。
〜あとがき〜
銀翼の奇術師終わりましたー!!いやー長かった!!本当はもっと短く終えるはずだったのに、またいつものように書きたいこと詰めまくったら、こうなりました!!文書も似たような感じでしか書けず申し訳ございません。本当に自分の文才の無さに腹が立ちますが、一応完結です!!
今回はだいぶオリジナル寄りになりました。最初の予定としては黒羽快斗の正体は江戸川コナン改め工藤新一にはバレない予定でしたが、後々書きたいと思っている話によっては怪盗キッドではなく、黒羽快斗で夢主と絡んで欲しいため、このような展開とさせて頂きました。これ以降快斗とコナンくんは互いに正体を知っている前提で話が進みますので、ご理解頂けましたら幸いです。
この度もまた拙い小説をお読み頂きありがとうございました!次回もまた映画の話の予定です!今後もマイペースに更新していきますので、どうぞよろしくお願いいたします🙇♀️
快「ふぅ〜……ようやく終わった〜……。やっぱし疲れんな〜……」
怪盗キッドとして夜な夜な仕事をこなしている俺は、今夜もキッドととなりビックジュエルを盗み出した。いつもなら中森警部率いる警察の連中を難なくかわし、余裕でお宝を盗んでいるが、今日はいつもと違って自分の調子が悪く、危ない橋を渡るようなハラハラした追いかけっこを繰り広げた。そんな苦労して手に入れた宝石を頭上にかかげて月に翳す。期待を込めて翳してみても、眠る宝石の姿は確認出来ない……これもまたパンドラではなかったと残念に思いながら帰路に着く。
(それにしても今日の俺はまずまずだったな……)
原因なら分かっている……どう考えたって数日前の出来事、キッドになって憐の様子を見に行った時、そしてキッドとして彼女と相対し、彼女の思いを知った。
憐を護れなかった後悔、彼女の象徴とも呼べるアメジストを落としてしまった罪悪感、それは後に名探偵の彼女が拾い、名探偵の手に渡り、俺と怪盗キッドを結ぶ証拠となって名探偵から突きつけられた。あのアメジストを憐の前で見せられたりでもしたら、終わりだった……だから自分の正体を認めざるを得なかった。
しかし俺もただでは転ばず、名探偵の正体も暴いたことにより、即通報!とはならず、一先ず互いに関わらない、他人に正体をばらさないと話は纏まった。
名探偵が帰る途中、俺にアメジストを返してきた。だからアイツのアメジストは、今はちゃんと俺の手元にある……もう失くしは無い。俺は二度と同じ過ちを繰り返さない……
だけど一度持ってしまった後悔や罪悪感はなかなか消えないものだ……いくら彼女が明るく振舞っていても、彼女の涙を見てしまってはいつも通りにとはいかない。憐を深く傷つけてしまった事へのやるせなさも感じていた。
どんなに辛くても、仕事はきっちりとこなすことが一流……でなければ、足元掬われてとんでもないことに……なんて分かっていたのに、結果はこのザマだ。宝石こそ盗み出せたものの、だいぶ危なかった。一歩間違えれば、中森警部の罠に引っかかり今度こそ捕まっていたかもしれない。
警部も尚更悔しいだろうな……何せあと一歩の所で俺に逃げられ、更に明日には警備の対象だった宝石は警察へと届けられるのだから……
快「……戻るか」
怪盗キッドとして憐に会った後、その罪悪感から少しでも離れたくて、いつもより早い時間帯に予告状を出し、盗みを終えた。今回は玲於の手を借りずにいた。玲於からの申し出は有難かったが、もし憐が退院する日に玲於まで居なかったら憐が悲しむと思い断った。最後まで心配そうな目で見られていたことにも気づいていたが、玲於にも余計な心配をかけたくなかった。
それでもこうして終わった後に、連絡が来ることがある。内容を見ると、今日の午後に憐が退院したらしい。それでその退院を祝うパーティーをやるから俺もどうかと誘いのメールだった。同様の内容を青子からも送られている。しかし、送信された時間もだいぶ前だ。
快「流石にこんな時間迄はやってねーよな……」
時刻を見ればもう22時をまわっている。盗みに手こずったせいで、早い時間に盗みにいったはずなのに、警察を巻くのに凄く時間がかかっていた。俺は玲於と青子のメールにパーティーに参加出来なくなった謝罪をしようと思った矢先に、再度メールが届く。
快「ん?玲於か?なになに……〝もうパーティー終わったよ。銀三さんが酔い潰れて寝ちゃったから、僕と青ちゃんと母さんで青ちゃん家まで運んで介抱してる。家には姉さん一人だから、今がチャンスだよ〟……っては?!憐が家に一人!?こんな時間にか?!」
その事実に冷や汗が出る……いつもだったらそこまで心配しないが、最近何かと事件に巻き込まれがちで不運な憐……しかも家に一人だけなんて……もし強盗なんかに押し込まれでもしたら……憐の身が危ない!!
快「あんのヘボ親父!人の家で酔い潰れる程酒を飲むなよ……!こうしちゃいられねー!!早く憐家に行かねーと!!」
俺は中森警部を恨みながらも、足早に憐の待つ家へと急いで帰った……。
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快「……はぁ……はぁ……っ……最速で来たぜ……玲於達帰ってきてねーかな……」
息をきらせながら、走ってアイツの家まで向かう。もう玲於達が帰ってくることを期待していたが、どうやらまだ帰ってなさそうだ。帰ったらメールをするように玲於に送っておいたが、そんなメールはいまだ来ていない。
快「電気も付いてない……一応鍵だけかかってるか確かめてみっか……」
試しに戸口の扉を引いてみる。
ガチャッ……
嫌な予想が当たってしまった。開かないことを願った扉は、引っかかることなく簡単に開いてしまった。
快「開い……てる……憐っ!!」
俺は息を吸うことも忘れ、乱暴に扉を開けて憐の家へと入った。
快「……はぁ……はぁ……(とりあえず、荒らされた形跡はなさそうだな)」
中へ入るとリビングに続く廊下がある。ざっと見たところ荒らされた形跡はない。靴箱は開けられておらず、物も散乱している様子はない。……靴が一足置いてあるだけ。多分これは憐のだ……やっぱり玲於達はまだ帰ってきていない。
快「さっさと憐を探さねーと……おい憐!!いるか……?!」
荒々しい呼びかけに何も返事が返ってこない。俺は廊下の電気を付けて、無我夢中で廊下を駆け抜けてリビングへと向かう。リビングも電気が付いておらず、暗かった為、電気を付ける。するとそこには──────
貴「……」
机に突っ伏している憐の姿があった。
快「憐!!なぁ憐!!大丈夫か……?!しっかりしろ!!」
俺は慌てて駆け寄り憐の体を揺らす。あの時一人だけ血を流して倒れていた憐……それを目の当たりにした時の絶望感に似た物をこの時も感じていた。それを払拭したくて必死になって、憐の体を揺らした。
貴「……ん?……何…………!!」
体を揺さぶられていた憐は伏せていた顔をあげた。どうやらコイツはただ眠っていただけだった。眠りから覚めた憐は周囲を見回して、隣にいる俺を半目で見上げていた。しかし俺の顔を見るなり、大きく目を見開きその状態で静止する。……俺も俺で、冷静に見れば憐はただ寝ていただけだと気づけたはずなのに、彼女の身が心配で、よく見ずに突っ走ってしまった事に今更ながら恥ずかしくなり、その後どう声をかけていいのか分からず、何も言葉を発せないでいた。
貴「…………」
快「……(どうすんだよこれ……焦りすぎだろ俺……でも、何であれ俺が憐を傷つけた事には変わりはねーんだ……謝んねーと……)」
どの言葉にすれば良いのか悩んだが、いきなり変な態度をとってコイツを傷つけた事に変わりは無い。謝罪するのが一番だと思い、謝罪の言葉を並べようとしたが、それよりも前に憐が口を開く。
貴「おかえり!快斗……!」
……憐は、満面の笑みを浮かべて答えた。
その笑顔に目を奪われる。
俺はいつだってコイツの優しさに救われていた……昔も今もそれは変わらない……憐は俺を優しいと言うけれど、俺からしたらお前の方が優しいと思うぜ。そんな優しいお前を傷つけた俺を、お前は受け入れようとしている。
……俺だってこんな事でお前と仲違いなんてことしたくない。だから……
快「……ただいま……憐」
俺は憐に、不格好に笑いながらも返した。
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貴「快斗、何処かでご飯食べてきた?」
快「は?……いや食ってねぇけど……」
貴「なら座って!……今からご飯の準備するから!」
快「は?!おい憐!……」
貴「良いから!……あっちょっと待って!快斗手洗った?洗ってないなら先に洗ってから来てよ!」
快「……あーもう分かった!分かったってーの!」
ここに来るまでの俺の葛藤は一体なんだったのか……俺は憐に言われた通り、手を洗いに洗面台へと向かった。
貴「ほら早く座って〜!今日はご馳走なんだから!」
手を洗った後、戻ってきた俺を憐は笑って迎え入れる。憐が話すご馳走と言うとのは、コイツの退院パーティーに青子と桜おばさんが用意したという色とりどりの食事の事だろう。
だが、そのパーティーに間に合わなかった俺に何故そのご馳走が残ってるのか……
快「憐、お前俺が帰ってくるのを待ってたのか……?」
食事を用意する背中は何も言わない。
快「……お前の家に俺が帰ってくるかなんて分からないだろう?……お前の家に行かない時もあるのに……それなのに何でその料理……残ってるんだ……?」
そんな事聞かなくても大体は予想が着く。でも確かめたいから……コイツの口からちゃんと聞きたいから聞いた。
貴「……待ちたかったから!帰ってくる確証なんてなかったけど、快斗を待ちたかったから……」
快「!!」
振り向いた憐は、笑っていた。
貴「玲於から聞いてるよ……最近寺井さんと一緒にマジックショーをやってるから、夜遅くまで帰ってこないんだよね?偶に玲於もそのお手伝いしてるって……」
快「え?……!!ま、まぁな……(玲於の奴、キッドの仕事を憐にマジックショーだって伝えてたのか……)」
貴「だから今日もそうなんだろうな〜って……分かってるから大丈夫!でも……」
快「??」
憐は俯き言い淀む。しかしゆっくりと顔をあげた。
貴「……快斗が帰ってくるかもしれないから……もしお腹を空かせて帰ってきたら、一緒に食べたいな〜って思って待ってたの!」
……屈託のない笑みに心奪われる。自分が取っていた態度によって傷ついても、確証もないのに、ただ俺が帰ってくることを愚直に信じて待っていた。俺を当たり前のように受け入れてくれる……。
幼い頃に亡くなった父親、海外にいて偶にしか帰ってこない母親、そんな家庭環境で育ったから、自分の帰る家はいつだって一人……母親とは仲違いしている訳では無いが、あたたかく迎えてくれる家族もいない。だから偶にどうしようもなく寂しさを感じる時があった。だけど憐、玲於、桜おばさんと神崎一家があたたかく迎えてくれた……仕事で多忙の父親を持つ青子もきっと俺と似たような思いをしている。青子もきっと神崎家に救われている。
怪盗キッドの仕事も大事だ。親父の死の真実を知りたい……そして、親父を死に追いやった原因のパンドラを破壊する為に……だけどそれと同時にこのどうしようもなく優しい人達を、平和で退屈な日常を絶対失いたくない。……これは俺の我儘なのかもしれない……でも……
貴「美味しい……?」
手に持ったスプーンで自身のスープを掬いながら、こちらの様子を伺う憐を見て、密かに思う……
─── 幼い頃から好きなお前に素直になれない俺だけど……
─── 誰よりも大切に想う気持ちは変わらない……
快「……そうだな……いつも通り神崎家の料理は最高に美味いぜ」
─── こんな俺を受け入れてくれたお前に……いつも感謝してるんだぜ
俺はおばさんが用意してくれた料理に手をつけながら、最大限の笑顔を憐に返した……
それから俺は憐と一緒に、おばさんの料理を楽しんだ。青子達とパーティーをやっていた憐が何故ここでも俺と一緒に食べているのかと疑問を持ったが……
貴「青子達が用意してくれて嬉しかったから楽しんでたけど、もし快斗が帰ってきても一緒に食べられるようにって食べる量を調節したり、予め残しておいてもらってたんだ……。
食事って一人で食べるのも楽しいと思うけど、やっぱり誰かと一緒に食べるともっと楽しいからね……!」
……全部俺への気遣いによるもの。自分が避けられても、変わらない態度で接しているのは、キッドの時に語っていた理由だろう。
貴「……やっと目を合わせてくれるようになったね」
快「……悪かったな、お前を避けちまって……」
貴「……別にいいよ。私も中学の時に1回アンタにやってるしね……これでおあいこよ!
それに快斗が私を避けた理由、少しだけど聞いたから……」
快「聞いた?!……誰にだよ……」
俺の事情を全て分かっているとしたら、玲於の奴だけだが、アイツはさっきのメールの内容から俺と憐が本音で話せるように、この場を作ってくれていた。事前に憐に話すとは思えない……だとしたら一体……
貴「江戸川コナンくん!コナンくんが教えてくれた。快斗が病院で私のアメジスト失くして落ち込んでたこと……そのアメジストをコナンくんが拾ってくれたこと……コナンくんが〝快斗兄ちゃんすっごく反省してたから、あんまり怒らないであげてね〟って言ってたの」
────── 憐が目覚めた翌日
それは私が目覚めた翌日の事……私の病室に見舞い客として訪れたのは、コナンくん一人だけだった。私は不思議に思った……コナンくんが一人で来るなんてどうしたんだろう?普通少年探偵団みんなで来るか、蘭と一緒に来るのかなって思っていた……だって小さい子だしね。まさか一人でここまで来るなんて……不思議に思うと同時に驚いてしまった。でもコナンくんの口からもっと驚くべき事実を聞く。
コ『ねぇ憐姉ちゃんって、黒羽快斗さんって知ってる……?』
貴『?!……何でコナンくんがその名前を……?!』
コ『今日僕が憐姉ちゃんの病室に入る前に、実は病室の前に立ってたお兄さんが居てさ。その人がそうだったんだよ!快斗兄ちゃんって、憐姉ちゃんの友達なの?』
貴『……そうね、友達だけどちょっと違う……。小さい頃からずっと一緒にいる幼馴染なの!……今は何でか避けられちゃってるけど……
というか快斗ここに来てたの……?!』
コ『う、うん……憐姉ちゃんの病室に入るのかなって思ったら、憐姉ちゃんには会わずに帰るって言ってそのまま帰っちゃったんだ……』
……何でよ。私を避けてる癖に、何で病室の前まで来てるのよ!だったら開けて、入ってくれば良いじゃない……何考えてるのよ……
彼の気持ちが分からなくて、コナンくんがいるのに俯きそうになる。しかし、コナンくんは話を続けた。
コ『快斗兄ちゃんね……大切なアメジストを失くしたって言ってたんだ。だから憐姉ちゃんに会う前に偶然拾ったアメジストを見せたら、これだって喜んでくれたんだよ〜それでお礼に名前を聞いたら教えてくれたんだ!』
貴『!!』
アメジスト……それは私が大阪旅行の時に、快斗、青子、玲於用に買っていた誕生石のパワーストーンの一つ。私は自分用にアメジストを購入していたけど、後に快斗の要望で快斗のムーンストーンと交換していた為、快斗のムーンストーンを私が持ち、私のアメジストを快斗が持つ事になった。……そっか。アメジストを失くしてたんだ……
コ『憐姉ちゃんの病室の前に立っていた快斗兄ちゃん、思い詰めたような顔をしてたし、アメジストを失くしたって言ってた時もとても悲しそうだったから、きっと憐姉ちゃんに申し訳なくて、会いたくても会えなくて避けちゃったんだよ……
だから憐姉ちゃん……快斗兄ちゃんすっごく反省してると思うから、あんまり怒らないであげてね……』
アイツを庇うコナンくんの言葉に、私は笑いそうになった。何だ……そうだったんだ……
貴『……もう快斗の馬鹿!そりゃ多少は怒るかもだけど、ちゃんと謝ってくれたら許すのに……。大丈夫よコナンくん、私はいつも通り快斗に接するだけだから!
それにしても……快斗とコナンくんが既に知り合ってるなんて驚いたよ!』
コ『そ、そうかな〜?!(やべぇ!流石にバレたか……?!)』
貴『うん!手品が上手くて将来有望なマジシャンになる快斗のこと、これからも仲良くしてあげてね!』
コ『うん!(……危ねぇ)』
貴『あとコナンくんって見つけるの上手だね!ありがとう!……あのアメジスト、快斗を守ってくれる大切なパワーストーンなの……コナンくんが見つけてくれて本当に助かったよ!流石名探偵さんだね!』
コ『どういたしまして……!(……あくまでこれは友人の神崎の為だ。オメーには貸し一つだからな……黒羽)』
その後しばらく話して、また一人で帰っていった。一人で帰すのもどうかと思ったけど、どうやら病室までは一人で来ていて、病院の外には阿笠博士が迎えに来てくれているらしい。コナンくんのこの言葉を信じて、私はコナンくんを送り出したのだ。
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快斗side
貴「私のアメジストを失くしたからってそこまで思い詰めなくて良いのよ。一言いってくれれば良いし、また似合う物を見つけてプレゼントするから!」
自身の記憶を振り返りながら、俺の知らない思い出を話してくれた憐……色々と突っ込み所が多い。俺が訪れなかった日に名探偵は一人で憐に会いにやってきていた。そしてどうやら名探偵はかなりの捏造を含みながらも、俺へのフォローをしてくれていたらしい。……名探偵の事だ……多分友人でもある憐の為と、俺に貸しでも作っておこうという魂胆で、憐に俺を庇うような言動を見せた。
快(にゃろ……本当に抜かりないな名探偵は……)
俺が内心、名探偵への抜け目の無さにムカついていると、憐がこちらを伺うように自信のない瞳で見つめていた。そしておもむろに口を開く。
貴「だから快斗……お願いだから、もう理由も言わずに避けるのは無しね……結構傷ついたから……」
アイツの瞳は少し潤んでいた。大切な奴にこんな顔をさせるなんて、俺は本当に馬鹿だ。だけど、同じ間違いはもう起こさない。
快「憐……分かってるよ。本当に悪かった……でも、もうそんなことは絶対しない!……俺だってオメーにそんな顔させたくねぇからな」
俺の言葉に安心したように笑い、とめていた手を動かす憐。先程の何処か緊張感漂う雰囲気はなくなり、自然体に話す俺達。
快「そういえば憐……お前何で頭から血流して倒れてたんだよ。あの時怪我してたのお前だけだったぞ」
貴「それね〜……あんまり言いたくないんだけど、実は私、飛行機を着陸させた時気絶しちゃったんだけど、すぐ起きたんだよ。蘭と園子よりも早くね……それで助けを呼ぼうとして、飛行機から降りて、救急隊の人呼ぼうとしたら、瓦礫につまづいて転けちゃったんだよ。それで多分運悪く、後頭部をうっちゃったって感じかな……」
憐は軽い態度で自分が怪我をしていた理由を話し始めた。
快「お前な……その鈍臭い所何とかしろよな!せっかく飛行機を無事に着陸させても、自分が怪我してちゃ世話ないぜ……」
……憐だけ怪我をしていた真相。思っていたよりも呆気ないそしてどうしようもない内容で呆れてしまう。もう少し自分の身を大切にして欲しい……思いとは裏腹に口から出たのは、彼女を心配する内容ではなく、咎めるような内容……当然これには憐も怒り出す……と思いきや、珍しく落ち込んでいた。
貴「うぅ……分かってる!快斗に言われなくたって私が一番分かってるわよ……」
快「……まぁでも、オメーが無事で良かったよ。それに憐がそれぐらいの怪我で済んだのは、もしかしたら俺のムーンストーンのおかげかもな!」
これ以上落ち込む憐を見たくなくて、調子の良い発言をした。これでいつもなら「調子に乗らないでよバ快斗!」と反論してくるはずだが……
貴「そうね……今回私はアンタにも助けられたのよ……ありがとう快斗」
快「!?……お、おう!」
(何か今日の憐……やけに素直だな?いつもこれぐらい素直だと可愛気があるのにな……)
素直な憐の態度に疑問を持ちつつも、そんな事思う癖に、結局憐ならどんな部分も愛らしく思えてしまう自分がいるのだから、そんな自分にも呆れてしまう。恋愛は惚れた方が負け……昔から俺はコイツに何だかんだ負けている。
そう思いながら、止めていた食事を再開する。そんな中憐が再び食べていた手を止めて、視線を逸らしながら、どこか不自然な様子で俺に問いかけてきた。
貴「あのさ……これはさっきの事と全然関係ないんだけど……私が聞きたいから聞くね!」
快「な、何だ……?」
貴「か、快斗の……す、好きな人って……青子だよね……?」
言葉は吃り、視線が右往左往し、顔色も少し赤くなっている。憐なりに頑張って俺に聞いているようだが、俺はその内容に驚きの反応を示す。
快「な、何でそうなった?!俺がいつ青子を好きだって言ったんだよ……!」
これは新庄に変装している時に聞いているが、黒羽快斗の姿では初めてなので、初見の反応を示した。我ながら役者だなと思うが、やはり何回聞いても分からない。
貴「違うの?!」
快「ち、違ぇよ!!ていうかそもそも何で俺に好きな人がいる前提なんだよ……!」
貴「だって……いつも青子と喧嘩してるし、周りからも夫婦喧嘩だって言われてたし、青子にだけ他の女の子とは違う態度とるじゃない!」
俺の勢いに負けじと反論してくる憐。
快「青子にだけ違う態度ってなんだよ……」
貴「好きな女の子に素直になれない態度よ」
快「はぁ?!そんだけか?!それで言うなら青子だけじゃなくて、お前ともよく喧嘩になるだろう!」
俺と青子の仲を勘違いしていた理由にも驚いた。……自分で言うのもなんだが、その理論でいくなら青子だけじゃなく憐ともよく言い合いしてるだろ俺……
貴「!!……そんな事ないもん!!快斗は気づいてないかもしれないけど、何だかんだ青子には優しいし、よく気にかけてるから……もういい加減認めたら?!隠さなくたって分かってるのよ!!」
快「いーや!!全然分かってねーよ!!第一俺が青子にだけ優しくてよく気にかけてるだと……?!そんな訳ねーだろ!!お前は何にも分かってない!!勘違いしてんだよ!!」
貴「何よ!何にも分かってない上に勘違いって……!!」
どっちも引かない態度だから益々雰囲気が悪くなる。クソ……喧嘩したくないのに……何で一番伝わって欲しい人間に伝わってねーんだよ!
快「大体な……俺はそいつに優しく出来た事なんてねーよ!!優しくしたいのに、素直に出来なくていつも怒らせてばかりだ……!
でも、そんな俺でも……そいつにはただ笑っていて欲しい……俺の全てをかけてでも護りたいって思うんだよ!!」
いつもそうだ……憐に素直に伝えるだけでいいのに、余計な一言を言ったり揶揄うように言ってしまい、気づけば言い争いになっている。その後家に帰り、一人になった時に、何で酷い言い方しか出来ないんだと己の言動を振り返り後悔する。喧嘩ばっかりの俺達だけど、それでも俺はいつだってお前の幸せを願っている……
貴「そっか……(そんな大切に想っている人がいるのね……)
……やっぱり、好きな人いるじゃない!そんな相手、青子しかいないと思うけど、青子じゃないと言い張るなら一体誰なの……?!」
憐は訝しげな様子で俺の返答を待つ。
しかし、俺は内心ポーカーフェイスなんて忘れる程に焦っていた。伝わらないもどかしさにモヤモヤして、ついとんでもないことを口走っていることに気づいた。でも今がチャンスか??長年の想いを伝える絶好の機会……。
俺は憐の瞳を真っ直ぐ見つめ返して、口を開く。
────── 今こそ憐に伝えるんだ俺!
────── 俺の好きなやつはお前だって……!
快「そ、それは…………と、とにかく青子じゃねーよ!!それだけは違うって言っておくぜ!!もうそんな勘違い二度とするなよ!!」
(しまった……!!何やってんだよ俺!!だから何でそうなっちまうんだ!!)
口に出した時にはもう遅かった。俺の言葉を聞いた憐は、訝しげな様子から、睨みつけるような眼差しに変わった。
貴「……はぁ?!何よそれ!!結局誰か分からないわよ!!男らしくはっきり言いなさい!!」
確かにはっきり言わない俺も悪いが、自分の好きな奴を明かしていないくせに、俺を責めるような憐の態度に、流石の俺もイラッとして強い口調で言葉を返した。
快「うるせー!!オメーだけには絶対言わねーよアホ憐!!」
貴「何ですって?!バ快斗!!」
……とまぁ結局俺は素直になれず、コイツに想いを伝えることも出来ず、いつものように喧嘩していたら、玲於達が帰ってきて、玲於とおばさんに喧嘩を止められてこの日を終えてしまった。
工藤新一の変装時、思わぬ形でアイツが勘違いしていた理由を聞いてしまった。勘違いした理由、本当はそれだけじゃなかったのでは……?と考えた時もあったが、今はまだ怪盗キッドのこともある為、全力で追求することはやめた。ただ目的のひとつであった勘違いを訂正させることは出来ただろう……。
玲於にあきられてしまったが、俺には分かった……アイツの中で、俺は他とは違う位置に存在している。それが特別なのかはっきりはしないが、他とは違うことだけは分かる……今はまだ〝幼馴染〟という甘くも辛い関係だが、いつかは……
―――いつか親父の真相を知り、怪盗キッドという仮面を脱ぎ捨て、何のしがらみもない本来の黒羽快斗に戻れた時……その時には、この気持ちをちゃんと伝えるからな……憐
こうしてまたひとつ距離が縮まっていく快斗と憐だが、お互いその事に気づいていない。玲於と青子含め周りは落胆するが、そんな事は露知らない渦中の二人は、また何気ない日常を送っていくこととなる。
〜あとがき〜
銀翼の奇術師終わりましたー!!いやー長かった!!本当はもっと短く終えるはずだったのに、またいつものように書きたいこと詰めまくったら、こうなりました!!文書も似たような感じでしか書けず申し訳ございません。本当に自分の文才の無さに腹が立ちますが、一応完結です!!
今回はだいぶオリジナル寄りになりました。最初の予定としては黒羽快斗の正体は江戸川コナン改め工藤新一にはバレない予定でしたが、後々書きたいと思っている話によっては怪盗キッドではなく、黒羽快斗で夢主と絡んで欲しいため、このような展開とさせて頂きました。これ以降快斗とコナンくんは互いに正体を知っている前提で話が進みますので、ご理解頂けましたら幸いです。
この度もまた拙い小説をお読み頂きありがとうございました!次回もまた映画の話の予定です!今後もマイペースに更新していきますので、どうぞよろしくお願いいたします🙇♀️
